その男ヴァン・ダム(ベルギー、ルクセンブルグ、フランス映画・2008年) |
<角川映画試写室>
2008年11月26日鑑賞
2008年12月1日記
これは映画?ドキュメンタリー?それとも・・・?そんなワケのわからない、ヴァン・ダム主演映画が登場!公私共にドン底でも、故郷ブリュッセルに戻ればヴァン・ダムは超人気スター。ところがそれがアダとなり、郵便局の強盗にまちがえられることに。トホホ・・・。さあ、そんな苦境に対して大スターはいかに立ち向かうの・・・?日本国は自虐史観でいっぱいだが、ヴァン・ダムはなぜここまで自虐趣味に?こんな映画を製作した後の、彼の俳優生命がマジで心配・・・?
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監督・脚本:マブルク・エル・メクリ
ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ジャン=クロード・ヴァン・ダム
ブルージュ警視/フランソワ・ダミアン
気の短い男/ジネディーヌ・スアレム
ガードマン/カリム・ベルカドラ
30代の男/ジャン=フランソワ・ウォルフ
窓口係/アンヌ・パウリスヴィック
2008年・ベルギー、ルクセンブルグ、フランス映画・96分
配給/アスミック・エース
<これって映画?ドキュメンタリー?それとも・・・?>
私は『沈黙』シリーズのスティーヴン・セガールの映画はよく観ているが、1960年にベルギーで生まれた空手アクション俳優(?)ヴァン・ダムの映画はほとんど観たことがない。したがって、①彼の空手家としての活躍、②モデルとしての活躍、③ハリウッドでの下積み時代、④本格的アクションスターとしてのハリウッドでの成功、を知らないし、⑤私生活における4度の離婚も知らない。さらに、そんな彼が、⑥『レッドクリフ』(08年)が目下大人気の呉宇森(ジョン・ウー)監督をハリウッドに招いた功績があったことも知らないし、⑦復活を期した作品の主役をスティーヴン・セガールに奪われたことも知らない。
そんな彼の、俳優としての実生活を生々しく描いたドキュメンタリー映画がこれ。いやいや、そうではない。この映画は47~48歳となり、そろそろアクションがきつくなってきたヴァン・ダムが、自らドン底のヴァン・ダム(自分)を演じたもの。しかし、それって一体ナニ?
<舞台は故郷のブリュッセル>
ヴァン・ダムの自叙伝的ストーリー(?)の開始は、プライベート面から。2008年11月28日に渡辺二郎被告人と共に大阪地裁で無罪の判決の言渡しを受けた羽賀研二被告人は、喜びの涙に暮れていたが、彼が起訴されたのは金銭トラブルによる詐欺事件。しかして、ヴァン・ダムがロサンゼルスで消耗し切っているのは、金銭トラブルと離婚に伴う娘の親権争い。
そんな喧騒から逃れるべくヴァン・ダムは故郷のブリュッセルに戻ったのだが、そこで担当弁護士から費用を払わなければ代理人をおりるとの連絡が。エージェントと交渉し、やっと出演料のギャラの前払いを受けたのだが、その引き出しのために郵便局に入ると、そこで大事件が。つまり、たまたまこの時、気の短い男(ジネディーヌ・スアレム)らの強盗団が郵便局に侵入し、銃弾をぶっ放したのだ。
ちょうどその時、ブルージュ警視(フランソワ・ダミアン)が郵便局の窓から見たのがヴァン・ダムの顔。直前にヴァン・ダムをタクシーから降ろしたおばさんも、大スターであるヴァン・ダムと記念写真を撮った2人の若者も、ヴァン・ダムが今郵便局に入ったところだと証言したから、たちまちヴァン・ダムが郵便局強盗の犯人とされてしまうことに。
こりゃ大ニュース。故郷のブリュッセルにはヴァン・ダムのファンがたくさんいるから、多くの住民たちが固唾を呑みながら、以降展開されるブルージュ警視による強盗犯人の逮捕劇を見守ったが・・・。
<格闘家には知恵はないの?>
有名人にはメリットとデメリットがある。最大のデメリットは、常に誰かに見られているから自由が束縛されること。ヴァン・ダムにとってデメリットだったのは、故郷ブリュッセルでは超有名人で誰にでもその顔が知られているため、ヴァン・ダムが強盗だと思われていると知ったホンモノの強盗が、それを最大限利用したこと。したがって、それ以降ブルージュ警視との交渉役をヴァン・ダムが引き受けざるをえなくなったわけだ。
しかし、ちょっと待ってくれ。私の目にはこの強盗団のチームワークは良くないし、人質とされている郵便局員たちに対する威嚇も下手クソ。したがって格闘家であるヴァン・ダムが少し頭を使って強盗たちのスキをついて反撃すれば、十分反撃は可能なのでは?私の目にはそうみえるのだが、現金を引き出すために郵便局にやってきたのに、郵便局に現金がないと聞かされてイライラしているとしても、ヴァン・ダムが自慢の格闘技とともに知恵を一向に働かせようとしないことに私はイライラ。
<日本の自虐史観とヴァン・ダムの自虐思想比較>
やしきたかじんが司会する2008年11月30日の『たかじんのそこまで言って委員会』は前航空幕僚長田母神俊雄氏をはじめてテレビ出演させたうえ、元陸上自衛隊中部方面総監の松島悠佐氏と元海上自衛隊海将補の川村純彦氏をゲストに迎えて「国防スペシャル」を実現した。レギュラー陣の他に出演したのが、新社会党の原和美氏たちだったこともあり、議論は全然噛み合わなかったが、そこでテーマとなったのが日本の「自虐史観」。私はなぜそんなことをここに書いているかというと、この映画はヴァン・ダムの自分自身に対する自虐思想のオンパレードだから。
映画冒頭に登場する連続アクションシーンを観ていると、47~48歳のヴァン・ダムの肉体能力はなお健在と思えるのだが、本人としてはかなりきついらしい。この映画には、ラスト近くになってヴァン・ダムがカメラに向かってモノローグする長尺のシーンが登場するが、これを中心として映画全体がヴァン・ダムの自虐思想のオンパレード。しかし、いくらギャラが下がり、新作の主役をスティーヴン・セガールに奪われたとしても、さらに親権の裁判で弁護士から三下り半をつきつけられたとしても、そんなに自虐的にならず、自分の生き方を見つけていかなくちゃ。
2008(平成20)年12月1日記