ピンクパンサー2(アメリカ映画・2009年) |
<ソニー・ピクチャーズ試写室>
2009年2月20日鑑賞
2009年2月23日記
「フランス警察の恥」クルーゾー警部が3年ぶりにスクリーンに登場!前作の殺人事件から本作は窃盗事件に変更。しかし、そのターゲットは国宝級ばかり。フランスの宝、ピンクパンサーは大丈夫?クルーゾー警部の「迷走」ぶりは良質な笑いを誘うが、その理由は彼の真面目さ。前作同様彼は真犯人逮捕という大手柄だが、私の採点はなぜか1つ低下。その理由は・・・?それを差し引いても、興味深い恋模様の展開など本作は見どころいっぱい、楽しさいっぱい!
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監督:ハラルド・ズワルト
脚本:スティーヴ・マーティン
ジャック・クルーゾー警部/スティーヴ・マーティン
ジルベール・ポントン(クルーゾー警部の同僚)/ジャン・レノ
ドレフュス(フランス警察の主任警部)/ジョン・クリース
ニコル(クルーゾー警部の秘書)/エミリー・モーティマー
ソニア・ソランドレス(美人捜査官)/アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン
ランダル・ペパリッチ(イギリス警察の捜査官)/アルフレッド・モリーナ
ビチェンゾ・ブランカレオーネ(イタリア警察の捜査官)/アンディ・ガルシア
ケンジ・マツド(日本警察の捜査官)/ユキ・マツザキ
ベレンジャー(教育係の中年女性)/リリー・トムリン
2009年・アメリカ映画・91分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<今回の事件は?>
クルーゾー警部はピーター・セラーズの専売特許だったが、ピーター・セラーズ亡き後『ピンクパンサー』シリーズは変貌を遂げていき、スティーヴ・マーティン主演の前作『ピンクパンサー』が登場したのは2006年。「やっぱり映画はオモロイのが1番。こんな映画サイコー!」「ストレス解消にはもってこい!」と書いた前作で、クルーゾー警部は殺人事件の解決に大活躍だった(『シネマルーム11』14頁参照)が、今回の任務は世界を股にかけた盗人トルネードの逮捕。
映画冒頭、大英図書館、イタリアのトリノの教会、日本の京都が登場し、貴重な所蔵品が次々と盗まれ、現場には「トルネード参上」と書かれたカードが残される様子が映し出される。10年間で2億5000万ドル相当の財宝を盗んだトルネードは突然盗みを止めていたのだが、今回再び盗みを始めたのは一体ナゼ?
その詮索はともかく、トルネード逮捕のためには、09年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けて結成された「サムライジャパン」のようなドリームチームの結成が必要。イタリアではビチェンゾ・ブランカレオーネ(アンディ・ガルシア)、イギリスではランダル・ペパリッチ(アルフレッド・モリーナ)、日本ではケンジ・マツド(ユキ・マツザキ)と、既に派遣される捜査官が決まったらしいが、さてフランス警察からは誰が?
<同じキャラは?交代したキャラは?新顔は?>
『ピンクパンサー』の顔であるクルーゾー警部は前作と同じスティーヴ・マーティン。そしてコミカルな味をみせる美人秘書役のニコルも同じくエミリー・モーティマーで、クルーゾー警部の良き理解者である同僚のポントンも同じジャン・レノ。しかし、主要キャラの1人でクルーゾー警部の上司であるドレフュス警視は、前作のケヴィン・クラインからジョン・クリースに交代した。もっとも、ドレフュス警視のクルーゾー活用法は、前回はクルーゾー警部がトンチンカンな捜査を進めている間に自分が真犯人を逮捕して手柄を独占しようとしたものだったのと同じように、クルーゾー警部の「失態」を狙ったもの。しかし、前回もその目論見が見事に外れたように、今回も・・・?
他方、今回はイギリス、イタリア、日本から前述した3人の新顔がドリームチームに加わった他、エスニック系の彫りの深い謎のセクシー美女ソニア・ソランドレス(アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン)が参加する。刑事でもない彼女がドリームチームに入ることになったのはナゼ?きっとそれは、彼女の魅力に一目でハマってしまったドリームチームの責任者(?)たるクルーゾー警部の曇った目によるものだろう。もう1人の新顔は、クルーゾー警部の礼儀や言葉づかいの教育係としてドレフュス警視が任命した中年女性ベレンジャー(リリー・トムリン)。クルーゾー警部はすべてに真面目に取り組んでいるし、まともな言語を操っているつもりだが、ベレンジャーの目にはそれがセクハラまがいに見えることがたくさんあるようだ。
さあ、そんな新旧入り交じった布陣による『ピンクパンサー2』の見どころは?
<現場百回が鉄則だが・・・>
刑事の鉄則は現場百回。つまり、何度でも現場を見直し、検討を加え直す中でそれまで見落としていた何かが発見できるということ。犯罪捜査とはそんな地味な作業の積み重ねだが、果たしてクルーゾー警部にそんな鉄則がわかっているの?
ドレフュス警視の部屋に呼び出されてフランスの宝とも言うべきピンクパンサーをトルネードの手から守ることを命じられたクルーゾー警部がその部屋の特殊監視システムを妙にいじったため、特殊部隊の突入という大騒動を引き起こすシーンは笑いを誘う。そんなシーンをはじめ、次々と引き起こすクルーゾー警部の珍騒動が面白いのは、クルーゾー警部が常に真面目だから。彼が真面目にやればやるほど、次々とそんな結果を引き起こしていくことに。つまり、クルーゾー警部は笑いを呼ぼうと思ったり、ギャグを演じているつもりは毛頭なく、常に真剣そのものなのだ。
厳重な警戒にもかかわらず、ピンクパンサーが盗まれたと聞いたドリームチームは直ちに現場に急行したが、そこで捜査の指揮をとろうとしたクルーゾー警部が演じた失態とは?また、就寝中に指輪を盗まれたローマ教皇のもとに赴いたクルーゾー警部が、教皇から事情聴取したのはいいものの、それを再現してみるとして教皇の服を着てベランダに出たから、広場に集まっていた人たちはこれに注目。その挙げ句クルーゾー警部はベランダから転がり落ちたから、翌朝の新聞は「ドリームチームの恥」と書き立てられることに。
そんなこんなの珍騒動が観客の笑いを誘うのだが、それはすべてクルーゾー警部が現場百回の鉄則を真面目に実践しようとしているため。したがって、結果的に笑いを誘うクルーゾー警部の珍騒動をあまりバカにしていると、きっとそのしっぺ返しが・・・。
<本作では、2人の恋模様にも注目!>
あんな美人秘書のニコルが、なぜあんなドジ刑事に「ホの字」なのかよくわからないが、観客の目にはそれは明らかで、気がついていないのは当の本人のクルーゾー警部だけ。ドリームチーム結成に伴って、クルーゾー警部の目の前には謎の美女ソニアが登場し、ニコルの目の前にはイタリアのプレイボーイであるブランカレオーネ刑事が登場したから、2人の恋模様には暗雲が。
本作ではそんな2人の恋模様のすれ違いぶりにも注目だが、ご安心あれ。本作ではクルーゾー警部がトルネードの逮捕という大手柄を立てる他、恋の闘いにおいても彼はブランカレオーネ刑事に大勝利。クルーゾー警部がブランカレオーネ刑事に対してニコルのことをボロクソに言ったのは、ブランカレオーネ刑事がニコルにチョッカイを出させたいためのクルーゾー警部なりの戦略だったことがわかり、またいかにも手の早そうなブランカレオーネ刑事がニコルに対して手を出してすらおらず、軽いチューさえしていないことを告白した結果、2人には何ともハッピーな結末が。本作ではそんなクルーゾー警部とニコルの恋模様にも注目!
<星が5つから4つに下がった理由は?>
私の採点では前作は星が5つだったが、本作は4つに低下。それはなぜ?クルーゾー警部をはじめお馴染みの個性的な登場人物たちがくり広げる『ピンクパンサー』特有の面白さは前作と同じだが、星が1つ減ったのは、私の直感で犯人が早い段階でビビビときたため。それが誰かはここには書けないが、DNA鑑定を頂点とした科学捜査よりも、刑事のカンの方が鋭く、それが真犯人逮捕に結びつくケースもあるわけだ。そして、本件がその典型。つまり、ドリームチームの捜査が難航しているうちに、トルネードの正体ではないかと疑われていた宝石専門家のミリケンという男が自殺。そして10年前、トルネードが残した血痕から採取していたDNAとミリケンのDNAが100%一致したため、ドリームチームはミリケンがトルネードの正体であったと断定したわけだ。これにて一件落着!そう確信したブランカレオーネ刑事、ペパリッチ刑事、マツド刑事の3人は互いに自分の成果を競い合いながらマスコミ発表を行い、マスコミはそんな3人の名捜査ぶりを絶賛したが・・・。
今日は、クルーゾー警部を除いたドレフュス警視主催のドリームチームの祝賀会。今なお「ドリームチームの恥」の汚名を着せられたままのクルーゾー警部は、元の駐車違反キップ切りの職務に戻されていたが、前作と同じように最後の最後にクルーゾー警部の見せ場が登場する。つまり、DNAが100%一致していることは、必ずしもミリケンが犯人だと断定する根拠とはならないということだ。「真犯人は〇〇だ!」と名指しするクルーゾー警部の顔は自信満々。祝賀会の席にしゃしゃり出てきて、あの恥さらしが今さら一体何を言ってるの!誰もがそう思ったはずだが、さあそこから始まるクルーゾー警部の冴え渡る怒濤の推理と衝撃のクライマックスとは?
2009(平成21)年2月23日記