サブウェイ123 激突(アメリカ映画・2009年) |
<ソニー・ピクチャーズ試写室>
2009年7月21日鑑賞
2009年7月22日記
ニューヨークの地下を縦横無尽に走り回る地下鉄が乗っとられたら?そんな恐ろしい空想が現実に!1時23分発の地下鉄はヤバい?本作の見モノは、同世代のデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタによるマイクを通じた交渉戦だが、それ以外にもポイントが。その第1は、1000万ドルの意味。犯人の狙いは現金?それとも?第2は、なぜ地下鉄を?犯人たちは一体どこから脱出するの?さあ、あなたの推理は本作を超えられる?
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!
読まれる方はご注意ください!!
↓↓↓
監督:トニー・スコット
ウォルター・ガーバー(地下鉄公安局部長)/デンゼル・ワシントン
バーナード・ライダー(武装グループのリーダー)/ジョン・トラボルタ
カモネッティ警部補/ジョン・タトゥーロ
レイモス(元地下鉄運転士)/ルイス・ガスマン
ジョンソン(ガーバーの上司)/マイケル・リスポリ
ニューヨーク市長/ジェームズ・ガンドルフィーニ
2009年・アメリカ映画・105分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<タイトルの意味は?252VS123VS310>
ラッセル・クロウとクリスチャン・ベイルが共演した、最近珍しく面白い西部劇が先日観た『3時10分、決断のとき』(07年)。他方、私の採点は星2つと低かったが、近時大きな話題を呼んだ邦画が『252 生存者あり』(08年)。
やっと逮捕した凶悪犯をユマ行き午後3時10分発の列車に乗せるというのが『3時10分、決断のとき』のストーリーだから、その原題は『3:10 TO YUMA』だった。他方、2回、5回、2回という法則性をもって音を出し続けるのは、ハイパーレスキュー隊で使われる「生存者あり!」の信号。史上最大規模の巨大台風によって大被害を受けた東京の地下鉄新橋駅の地下深くから、果たして252の打音は届くのだろうか?そんなストーリーが『252 生存者あり』だった。
しかして本作の邦題は『サブウェイ123』だが、原題は『THE TAKING OF PELHAM 123』。つまり、ペラム駅1時23分発の地下鉄の乗っ取りだ。ニューヨークの地下鉄は市民の足として貴重な存在だが、昼間の時間帯なので1両目の車両に乗っていた乗客は19名と比較的少なかった。しかし、地下鉄の乗っ取りという思いもかけない犯罪によって、人質とされてしまった19名の運命は?
<『フェイス/オフ』に続いてジョン・トラボルタが悪役に!>
ジョン・トラボルタといえば『サタデー・ナイト・フィーバー』(77年)でのカッコいい青春スター役のイメージが強いが、体格も雰囲気も貫祿が出てくる中で悪役に挑戦し、圧倒的な存在感をみせたのが『フェイス/オフ』(97年)。本作ではそのジョン・トラボルタが12年ぶりに、ペラム駅午後1時23分発の地下鉄を乗っとる4人組の凶悪犯のリーダーとして再び悪役に挑戦!
本作は、①なぜ1000万ドルを要求?、②なぜニューヨーク市長に電話を?、③なぜ猶予期間が59分?、④なぜ1番目の車両だけを切り離し?、そして⑤究極的にはうまく金を受け取ったとしても、地下鉄の乗っとりでは地上への出入り口を固められたらどうやって脱出?などの疑問点がいっぱい。ジョン・トラボルタ扮するバーナード・ライダーという男は、一方で公言しているとおり人質を1人また1人と殺していく冷酷さの持ち主だが、他方で実によくしゃべる男。東洋の価値観では「沈黙は金、雄弁は銀」だが、多民族国家アメリカではやはり雄弁でなければ、タフな交渉はとてもムリ?そんなジョン・トラボルタの悪役ぶりに注目!
<お相手は、ニコラス・ケイジからデンゼル・ワシントンに>
『フェイス/オフ』でのジョン・トラボルタのお相手はニコラス・ケイジだったが、本作でライダーの交渉相手となるのは運行司令室で司令係として勤務中のデンゼル・ワシントン扮するウォルター・ガーバー。19名の人質の中に恋人とネット交信をしていた若者がいたため、その映像によって犯人グループの1人が元地下鉄運転士のレイモス(ルイス・ガスマン)だと判明。その結果、ライダーがガーバーを交渉役に指名したことに、ある疑惑が?
それは、車両調達に絡むある収賄疑惑にガーバーが深く関与しているのではないかという疑惑だ。ライダーが人質救出班のカモネッティ警部補(ジョン・タトゥーロ)を交渉相手とすることを強く拒否し、あくまでガーバーを指名したのはその証拠?ライダーは事件がテレビ中継されている中、無理矢理ガーバーにその容疑を認めさせたが、それは一体なぜ?さらに1000万ドルの身代金をライダーに届ける途中で現金を載せた車が交通事故でぶっ壊れてしまうと、ライダーは現金をガーバーに持たせろと要求。このようにすべての状況がテレビ中継されている中、ライダーとガーバーの距離は縮まるばかりだ。そして遂に、1000万ドルの金がライダーの元に届いた後、車両はガーバーの運転によって運行開始。こりゃひょっとして、ガーバーはライダーたちの共犯では?
こんな善良なニューヨーク市民(?)で、地下鉄の運行指令室に勤務するガーバー役をデンゼル・ワシントンが熱演するが、クライマックスに訪れる2人の対決とは?トニー・スコットは本作を監督するについて誰よりも先にガーバー役はデンゼル・ワシントンと決めていたらしいが、その相手役に同じ1954年生まれのジョン・トラボルタを起用したことによって、何とも重厚な味わいが・・・。
<市長の対応は?指導力は?>
日本では2009年7月21日遂に衆議院が解散され、8月30日の投票日に向けてセンセイ方が走り始めたが、選挙で議員や首長に選ばれるためには、いつも選挙民に好印象を与えることが大切だ。そんなわけで、ライダーからご指名を受けたニューヨーク市長(ジェームズ・ガンドルフィーニ)は急遽運行司令室に駆けつけたが、そこに向かう市長の関心事は?そしてその対応は?
他方、2001年9月11日に起きた同時多発テロの直後、任期9カ月目となっていた当時のブッシュ大統領が世界貿易センタービル跡地を見舞い、救助作業に当たる消防隊員や警察官らを激励する姿が全世界に映像として流された。このリーダーシップの発揮によって彼は歴代トップのケネディ大統領をも上回る驚異的な支持率を獲得したが、地下鉄乗っ取りという未曾有の危機の中ニューヨーク市長はいかなる指導力を?
<2つのポイント その1 犯人の真の狙いは?>
本作の見どころは、何よりもガーバーとライダーのマイクを通じた交渉戦にある。人質を取ったことで圧倒的に有利な立場に立ったライダーは矢継ぎ早にいろいろな要求をしてくるから、ご指名によってその対応役をさせられているガーバーは大変。ご指名からはずされたカモネッティ警部補の指導(?)を受けながらガーバーは何とか話を引き延ばしながら対応していたが、こりゃいつまでもつの?もっとも、ガーバーはもともと有能な職員で管理職にまで昇りつめていた人物だから、次第にその対応にも迫力が。いかにもヤンキー的でワイルドかつ饒舌なライダーと善良なサラリーマンタイプの(?)ガーバーによる、互いに顔の見えない相手との話術の攻防戦は見どころいっぱいだ。
しかし、本作にはその他のポイントが2つある。その1つは犯人の狙いは1000万ドルの現金?それとも他にあるの?ということ。2008年秋にアメリカ発の世界同時金融危機が起きたのは、「金融工学」にもとづいてデリバティブの効いた各種のワケのわからない金融商品を開発、発売していたためであることが明らかとなった。他方、資本主義がここまで複雑に発達すると、1つの事件が金融や経済に及ぼす影響は計り知れないものがある。ニューヨークで起きたこんな地下鉄乗っとり事件はたちまち株価にも影響を及ぼし始めたようだが、さてライダーたちの真の狙いは?
<2つのポイント その2 脱出方法は?>
もう1つのポイントは、1000万ドルの身代金を受け取った後、ライダーたち犯人グループはどうやって地上に脱出するの?ということ。だって地下鉄への出入り口は各駅に数カ所決まったところにあるが、そこをすべて封鎖されたら犯人たちは逃げ場がないはず。捜査陣たちはそんな前提ですべての出入り口を封鎖したから、これによって文字どおり犯人たちは袋のねずみ?しかし、交渉におけるライダーの言動は自信満々だ。ガーバーから1000万ドルの入ったカバンを受け取ったライダーたちは、さて次にいかなる要求を?そして、彼らはいかにして地上へ脱出するの?それが本作第2のポイントだ。
<そこまでやるか!やっぱりヒーローはあんた!>
ニューヨーク市長はライダーからの人質交換の提案をあっさり断ったが、ここで敢然と市長が自ら人質になることをOKしていればまちがいなく彼はヒーローになっていたはず。しかし、そんな千載一遇のチャンスを逃したから、事件が解決した後になって、通り一遍の挨拶をしても説得力がないのは当然。それに対して、一介の地下鉄職員にすぎないガーバーが、ライダーからのご指名とはいえ、危険極まりない現金の運搬係をやってのけたのは立派なもの。そこで面白いのは、ひと仕事終った後犯人グループから行動を共にさせられている時のガーバーの行動。普通は危険な任務が終わり、何とかそこから解放されたらそれ以上事件に首をつっこみたくないものだが、ガーバーの場合はさて?ライダーの地下鉄乗っとり構想はほぼ完璧で仕上がりも上々だったが、唯一の読みまちがいはライダーの想定を大きく越えたガーバーの勇気ある行動。ライダーがヤンキー魂の持ち主なら、ガーバーだって!とばかりに示されるガーバーのヤンキー魂とは?そして、それによって最後に実現する2人の対決とは?
そこまでやるか!やっぱりヒーローはあんた!
2009(平成21)年7月22日記