リミット(スペイン映画・2009年) |
<GAGA試写室>
2010年10月27日鑑賞
2010年10月29日記
95分間の舞台は、棺桶のような閉ざされた箱の中のみ。そんな本作を観れば、「映画はアイデア勝負!」だと実感!箱の中になぜケータイが?それは人質から身代金を取るためだが、主人公は生き延びるためにいかなる奮闘努力を?閉所恐怖症の人は避けた方がいいが、人間心理の深奥に迫りたい人は必見!希望と絶望は、まさに紙一重。それがわかれば、明日からの生き方が変わるかも・・・。
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監督:ロドリゴ・コルテス
ポール・コンロイ(アメリカ人トラック運転手)/ライアン・レイノルズ
2009年・スペイン映画・95分
配給/ギャガ
<映画はアイデア勝負!>
映画はアイデア勝負!そんな視点からみて、スペインのロドリゴ・コルテス監督はすごい映画を完成させた。そのアイデアとは、舞台を人間が1人しか入れない棺桶のような箱の中に限定すること。私はかねがね「潜水艦モノ」が面白いのは、密閉された狭い空間内だからこそ、濃密な人間関係が浮かびあがるためと言ってきたが、本作は舞台が箱の中であるうえ、登場人物もその中に閉じ込められている男ポール・コンロイ(ライアン・レイノルズ)1人だけ。したがって、そこではポールの恐怖・パニック・絶望・拒絶・苦しみ・悲しみ・希望など、ありとあらゆる人間の心理が描かれる。
たった1人で95分間も熱演する俳優は大変だが、アメリカからイラクへ、トラックの運転手としてやってきた男ポール・コンロイを演じるのは、08年にスカーレット・ヨハンソンと結婚したというラッキーな男ライアン・レイノルズ。さあ、期待はふくらむばかりだ。
<緊迫感あふれるストーリー構成の小道具は?>
今やケータイは、老若男女を問わず、小学生に至るまでの必需品。しかし、土の重さがのしかかっている棺桶のような閉ざされた箱の中に、なぜケータイがあるの?本作ではこのケータイが緊迫感あふれるストーリー構成のための最大の小道具だが、それ意外にライターと懐中電灯も大切な小道具。映画は、さるぐつわをされたまま箱の中に押し込められているポールの絶望的なうめき声とわめき声からスタートする。
さるぐつわをはずし、ライターをつけ、周りを見渡し、脱出しようと箱を押し上げるが、とても人間の力では動かない。ここはどこ?なぜ、ここに?ああ、そうだ。軍人たちと共に荷物を積んだトラックを運転していた俺は、イラク人武装勢力の襲撃に遭い、人質にされたのだ。まずは、そんな状況把握が出来るまでのポールの心の動きをしっかりと理解したい。しかし、なぜ箱の中にはケータイが?それは、自分が人質にされたことをビデオで本国に送信し、身代金を払わせるため。それがわかるまでには、まだしばらく時間がかかることになるが、なるほどなるほど、アイデア1つでいくらでもストーリーは広がるものだ。
<あなたならどこに電話を?優先順位は?>
状況が把握できれば、次はそのケータイを使って誰に援助を要請するの?それが最優先のテーマになるのは当然だが、さて彼はどこに電話を?他方、人間は自分の置かれた状況を誰かに理解してもらい、そのしんどさを共有したいと願う動物。すると、あなたならそのためにどこに電話を?
ここで面白いのは、アメリカという国はイラクにおける人質の救出には熱心だが、会社は必ずしもそうではないということ。ポールが運転手として雇われている会社はCRT社で、彼はイラクに来て9カ月。しかし、やっと連絡がついた人事部長とポールとの会話を聞いているとアメリカ流人事管理のやり方がよくわかるから、弁護士としては非常に興味深い。
他方、ケータイではめったにメールを使わない私は、ケータイの機能は単純なほどいいと考えている。しかし、ポールの姿を見ていると、やはりビデオ撮影機能を含め、ケータイのさまざまな機能を使いこなさなければ、いざという時に生きていけないことがよくわかる。あらためて、その勉強をしなければ。
<声の出演者は多いが、共演者は?>
本作はケータイを使った会話がストーリー構成の軸となるから、声の出演者はイラクの武装勢力で人質担当者(?)の声を含めてたくさんいる。やっと救助隊との連絡がとれた時のポールのうれしそうな声は見モノだが、途中で思いもかけない砲撃があったり、土が箱の中に入り込んできたりと絶望的な状況が続くと、次第にポールの声は・・・?
冒頭に本作の出演者はポール1人と書いたが、それは半分正しく、半分は誤り。なぜなら、本作には動物(?)の共演者が一匹いるからだ。それは、ラストに流れる字幕に「Snake Trainer」という表示があることでも確認される、不気味なへび(コブラ?)の登場。なぜ箱の中にこんなへびが?ポールはどうやってそれを撃退?それはあなた自身の目でしっかりと。
<閉所恐怖症の人は避けた方が・・・>
私は高所恐怖症だが、閉所恐怖症の人も結構多いらしい。したがって、MRI検査のためのカプセルに入る時、「閉所恐怖症ではないですね?」と確認することは病院側の大切な注意事項だ。私は一度、何かのタイミングでドアのカギが外から閉まってしまったため大変な目にあった経験があるが、仮にトイレのカギが外から閉まってしまったら?家族がいれば大声を出して助けを求めることができるが、一人暮らしの場合その中で体力を消耗し、そのまま・・・。そんなことを考えると、やはり閉所は恐い?
そんな視点で見ると、本作が設定した状況は最悪。したがって、閉所恐怖症の人が本作を観れば、きっとその症状が悪化するから、そんな人は避けた方が・・・。
2010(平成22)年10月29日記