テンペスト(アメリカ映画・2010年) |
<東映試写室>
2011年4月8日鑑賞
2011年4月9日記
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監督・脚本:ジュリー・テイモア
プロスペラ(かつての女大公)/ヘレン・ミレン
トリンキュロー(ナポリ王の道化師)/ラッセル・ブランド
ファーディナンド(アロンゾーの息子)/リーヴ・カーニー
ゴンザーロー(忠実な老顧問官)/トム・コンティ
アントーニオ(ミラノ大公、プロスペラの弟)/クリス・クーパー
セバスチャン(ナポリ王の弟)/アラン・カミング
キャリバン(魔女から生まれた邪悪な怪物)/ジャイモン・フンスー
ミランダ(プロスペラの娘)/フェリシティ・ジョーンズ
ステファノー(酒蔵係)/アルフレッド・モリナ
アロンゾー(ナポリ王)/デヴィッド・ストラザーン
エアリエル(空気の妖精)/ベン・ウィショー
2010年・アメリカ映画・110分
配給/東北新社
◆ ベートヴェンのピアノ・ソナタ17番を「テンペスト」と呼ぶことは知っていたが、シェイクスピア最後の作品と言われる『テンペスト』がこんな物語だったことを、私は本作ではじめて理解。もっとも、弟のアントーニオ(クリス・クーパー)やナポリ王アロンゾー(デヴィッド・ストラザーン)らの策謀によってミラノ大公の地位を追われたプロスペラ(ヘレン・ミレン)を、男性から女性に変更したところが女性監督ジュリー・テイモアの面白いアイデア。それによってプロスペラとその娘ミランダ(フェリシティ・ジョーンズ)との母娘の絆が大きなテーマになるとともに、プロスペラの衣装とりわけそのドレス姿が注目点に!
◆ 日本でも「道化」がしばしば登場するが、本作では魔法を駆使するプロスペラに従う空気の妖精エアリエル(ベン・ウィショー)と魔女から生まれた邪悪な怪物キャリバン(ジャイモン・フンスー)が、ストーリー展開のキーマンになる。エアリエルは一度だけプロスペラに不満を漏らすがすぐに反省し、プロスペラの命ずるまま八面六臂の活躍を。他方、キャリバンは酒を飲ませてくれた酒蔵係のステファノー(アルフレッド・モリナ)やナポリ王の道化師トリンキュロー(ラッセル・ブランド)を新しい主人と仰ぐが、その判断の正否とその行く末は?
◆ 私はシェイクスピアものでは何といっても『ロミオとジュリエット』が大好きだが、本作ではプロスペラの娘ミランダとアロンゾーの息子ファーディナンド(リーヴ・カーニー)との間にロミオとジュリエットばりの恋愛劇が展開される。しかし、プロスペラはそれをスンナリ認めるの?
プロスペラはミラノ大公時代から魔法を研究していたうえ追放されて流れついた孤島でその術を磨いたから、魔法で嵐を起こしナポリ王らが乗る船を遭難させるくらいは朝飯前。本作はそんなプロスペラの復讐心に燃えた行動からストーリーが展開していくが、シェイクスピア最後の作品らしくそんなプロスペラの復讐心は持続せず、最後には許しの心境に達するからえらい。私はこんな大団円が待っていることは全く知らなかったが、なるほどこれならめでたし、めでたし。もっとも、小説の世界はともかく、現実の世界は?
◆ 言葉を書きしゃべることを本業としている弁護士の私は、近時の日本語の乱れが心配。事情を聴いたり、メモをつくらせても、サッパリ要領をえない話に終始する依頼者に接するとホントに嫌になってくる。言葉の劣化が進むのは政治の世界も同じだ。「未曾有」を「ミゾユウ」と読んだ麻生太郎元総理は論外としても、現在東日本大震災にトップとして立ち向かっている菅直人総理をはじめとする政治家たちの情けない言葉づかいには、ほとほと幻滅。それに比べて、16~17世紀を生きたシェイクスピアが書いた言葉(セリフ)の何とすばらしいことか。今の時代からみれば多少重々しすぎる感じもあるが、一流の俳優の口から語られるシェイクスピア劇特有の美しい言葉の連続に感激。日本語学習の立て直しのため、是非シェイクスピアものを教科書として採用してみては・・・。
2011(平成23)年4月9日記