ステイ・フレンズ(アメリカ映画・2011年) |
<GAGA試写室>
2011年8月22日鑑賞
2011年8月23日記
愛とか恋とかは、うっとうしい。でもセックスしたい時はある。すると、恋愛感情抜きのセックスフレンドがベスト!そんな共通のテーマで、『ブラック・スワン』(10年)で対決したナタリー・ポートマンとミラ・クニスが『抱きたいカンケイ』(11年)と本作で再び対決!さて、彼女たちはいかに強烈なセリフを発し、いかに美しい肢体を魅せてくれるの?そう期待したが、やっぱり映画は中味が大切!そんなミエミエの予定調和では、いくらハリウッドお得意のロマンチックコメディでも・・・・。
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監督:ウィル・グラック
ディラン(敏腕アート・ディレクター)/ジャスティン・ティンバーレイク
ジェイミー(ヘッドハンターの女性)/ミラ・クニス
ローナ(ジェイミーの母)/パトリシア・クラークソン
アニー(ディランの姉)/ジェナ・エルフマン
パーカー/ブライアン・グリーンバーグ
ハーパー氏(ディランの父)/リチャード・ジェンキンス
トミー(ディランの同僚のゲイ)/ウディ・ハレルソン
ショーン・ホワイト/ショーン・ホワイト
2011年・アメリカ映画・109分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<あのライバルが、なぜ同じテーマで再び対決を?>
ナタリー・ポートマンに第83回アカデミー賞主演女優賞をもたらした『ブラック・スワン』(10年)の第1の見モノは白鳥に扮したナタリー・ポートマンの熱演だったが、同時に強烈な存在感を発揮したのが「黒鳥」がよく似合うライバルを演じた若手女優ミラ・クニスだった(『シネマルーム26』22頁参照)。このミラ・クニスは、デンゼル・ワシントンが主演した面白い映画『ザ・ウォーカー』(10年)でも美しさが際立っていた(『シネマルーム24』76頁参照)が、本作ではガラリと趣きを変え、いかにもハリウッドらしいロマンチックコメディで再びナタリー・ポートマンと対決!と言われても、ナタリー・ポートマン主演の『抱きたいカンケイ』(11年)を観ていない人には何のことかサッパリわからないと思うが、本作と『抱きたいカンケイ』は両者とも、恋とか愛は面倒、必要な時だけのセックスフレンドがベスト!そんないかにも現代的な(?)男女関係をテーマとする映画なのだ。ちなみに、『抱きたいカンケイ』と『ステイ・フレンズ』という邦題は、両作がテーマとする理想的な男女関係のあり方を表から表現したものと裏から表現したもので、全く同じ。
『抱きたいカンケイ』では清純派のナタリー・ポートマンがきわどいセリフと開けっ広げなセックスシーンに挑戦していたが、「ならば私だって負けじ!」とばかりに本作では、ミラ・クニスがニューヨーカーらしく(?)ポンポンときわどいセリフを連発しながらあの手この手、あの体位この体位のセックスシーンに挑戦!しかし、それにしてもなぜ『ブラック・スワン』のライバルが、同じような時期に、同じようなテーマの映画で対決を?
<沈黙は金!雄弁は銀!>
現在公開されているイエジー・スコリモフスキ監督の『エッセンシャル・キリング』(11年)は「セリフを一切排除し、83分間逃げまくる男を描いた怒涛のノンストップ・アクション!」と宣伝されている。同監督の『アンナと過ごした4日間』(08年)(『シネマルーム23』80頁参照)を観れば、同監督の狙いもなるほどとわかるし、5月12日に観たセミフ・カプランオール監督の『蜂蜜』(10年)もセリフがほとんどない映画だった。これに対して「世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス、フェイスブック」を描いた『ソーシャル・ネットワーク』(10年)は第83回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、音響賞、撮影賞等にノミネートされながら、結果は脚色賞、編集賞、作曲賞だけと惨敗した。若者たちを主人公とした映画だけに、『ソーシャル・ネットワーク』ではとにかく、次から次へとポンポンと飛び出してくるセリフの早さと多さが特徴だった。
本作冒頭は、ロサンゼルスで彼女から別れを告げられる敏腕アート・ディレクターのディラン(ジャスティン・ティンバーレイク)と、ニューヨークで彼氏から別れを告げられるセクシーで有能なヘッドハンターのジェイミー(ミラ・クニス)の姿を対比しながら映し出すが、まず最初に疲れるのがそのセリフの多さだ。そりゃ、何ゴトも言葉にしなければ、気持が伝わらないのが原則だが、次から次へと矢継ぎ早に飛び出してくるセリフを聞いていると、お前たちは別れるのにそこまで言い合わなければダメなのか!とつい文句を言いたくなってしまう。この「セリフ過多傾向」は、ジェイミーがディランをヘッドハンティングしてロサンゼルスに招き、セックスつきの2人の友情が育まれる中でもずっと続くが、それを見て、聞いていると、やっぱり沈黙は金!そして、雄弁は銀!
<あっちが「予定調和」なら、こっちも・・・?>
ナタリー・ポートマン主演の『抱きたいカンケイ』は、週80時間も病院で働く超忙しい女医さんの方から、「愛とか恋とか抜きのセックスフレンドで・・・」と提案したところから「抱きたいカンケイ」がスタートした。ところがなぜか途中から互いに嫉妬の感情が入り込んだために、その関係に変調を来たし、その後ミエミエの予定調和に至るというストーリーだったが、さて本作は・・・?本作では、ディランが父親(リチャード・ジェンキンス)、姉アニー(ジェナ・エルフマン)らが住むロサンゼルスの家にジェイミーを招待し、アニーらがジェイミーを気に入ったところから、少し変調を来たすようになる。その原因は、恋人同士ではなくあくまでセックスフレンドだということをいくら説明してもわかってくれないだろうと考えたディランが、アニーに対してジェイミーの欠点を並べ立てている会話をジェイミーが密かに聞いてしまったこと。それはあくまで「ウソも方便」なのだが、それを真に受けてしまったジェイミーは・・・?
本作は、ジェイミーが住む、人口が集中し何ゴトにもスピーディーそして言葉の荒っぽいニューヨークと、ディランが住む、広大で何ゴトにもゆったりし穏和なロサンゼルスとの対比が面白いが、ある事情によってセックスフレンドの友好関係にヒビが入った後の復調の姿はこちらもミエミエ?ケンカ別れ状態を解消して再び友好なセックスフレンドの関係に戻ったとしても、まさかそのまま「めでたく結婚にゴールイン!」ということはないだろうが、『抱きたいカンケイ』の予定調和に対して、本作が見せる予定調和は・・・?
2011(平成23)年8月23日記