第7鉱区(SECTOR 7)(韓国映画・2011年) |
<東映試写室>
2011年9月28日鑑賞
2011年10月1日記
1978年の日韓共同開発区域(JDZ)で設定された東シナ海の第7鉱区で、日韓の争いが勃発?そんな誤解をした人には「肩すかし」かもしれないが、本作は第7鉱区に登場した「グエムル」以上の未確認深海生物との戦いを描くもの。石油開発に絡んで生まれたこの怪物は一体ナニ?その特徴・弱点は?あまり難しく考えず、『チェオクの剣』(03年)から大成長した美人女優ハ・ジウォンの惚れ惚れするようなアクションを楽しもう。
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!
読まれる方はご注意ください!!
↓↓↓
監督:キム・ジフン
チャ・ヘジュン(海底装備マネージャー)/ハ・ジウォン
アン・ジョンマン(ベテランキャプテン)/アン・ソンギ
キム・ドンス(油質分析官、ヘジュンの恋人?)/オ・ジホ
ムンヒョン(医療担当官)/イ・ハンウィ
ト・サング(ボーリング装備マネージャー)/パク・チョルミン
コ・ジョンユン(鎔接工、サングの弟分)/ソン・セビョク
キム・ヒョンジョン(生態研究員)/チャ・イェリョン
ファン・インヒョク(石油ボーリング船エクリプス号キャプテン)/パク・ジョンハク
チャン・チスン(通信担当官、ヒョンジョンに片思い)/パク・ヨンス
2011年・韓国映画・101分
配給/CJ Entertainment Japan
<すわ!東シナ海の「第7鉱区」で日韓紛争が?>
「竹島」をめぐる日韓(領土)問題、尖閣諸島をめぐる日中(領土)問題は、2009年8月に民主党への政権交代が実現した頃から一層深刻化しているが、それと共に、いやそれ以上に重要な問題は東シナ海におけるガス田問題。近時注目されているのは中国側の調査で春暁(日本名は白樺)だが、実は本作のタイトルである「第7鉱区」は1978年に日韓共同開発区域(JDZ)として設定されたもの。東シナ海はサウジアラビアの10倍近い天然ガスと豊富な石油埋蔵の可能性が発表されており、JDZはアジアのペルシャ湾岸と命名されたらしい。
映画冒頭、第7鉱区に浮かぶ巨大なボーリング船のはるか下の深海に潜って、ある任務に就いている隊員の姿が映し出される。そんな彼の目の前に今、半透明で発光しながら泳ぐ小さなおたまじゃくしのような物体がうじゃうじゃと。その美しさにみとれた隊員が思わずその物体に手をかけると・・・。この事件が起きたのが1985年。この冒頭シーン以降、ストーリーは海底装備(美人)マネージャーのチャ・ヘジュン(ハ・ジウォン)を中心とする2011年の現在に戻るが、第7鉱区は日韓共同開発区域(JDZ)ではなかったの?
そう思ってネットでいろいろ調べてみると、1970年1月、パク・チョンヒ政府は第7鉱区を韓国領土と宣言し、(共同)開発の要求を続けたが、日本は1986年以後から今日まで日韓共同開発区域(JDZ)に対する一切の開発を中止し、一切のボーリングもなされていないらしい。もちろんそれは日韓の複雑な政治的思惑が絡まっているためだが、本作を観ると2011年の時点で韓国は(単独で)第7鉱区のボーリング作業にいそしんでいるようだが・・・。こんなことをされたのでは、すわ!「第7鉱区」で日韓紛争が?
<この怪物は?「グエムル」超えは?>
韓国は竹島問題では強硬だが、北朝鮮問題が複雑化する中、たとえ映画の世界であっても第7鉱区(の開発)をめぐって日本と「対決」するのは望ましくない。キム・ジフン監督がそんな「政治的判断」をしたのかどうかはともかく、本作は政治的視点を全く示さず(別の言い方をすれば、第7鉱区の開発権は韓国にあることを当然の前提として?)、『グエムル 漢江の怪物』(06年)で突如漢江に登場した怪物「グエムル」に勝るとも劣らない深海の怪物と第7鉱区に集う隊員たちとの対決に焦点をしぼった。
韓国の漢江が生んだ怪物が「グエムル」なら、アメリカの映画が生んだ怪物が「キングコング」。そして、原水爆実験の中で生まれ、日本を襲ったのが東宝映画が生んだ悲劇の怪獣「ゴジラ」で、円谷英二監督の特撮技術は一世を風靡したものだ。
グエムルのクリーチャーデザインは「水陸を自在に行き来する、魚類と爬虫類を兼ねたようなもの」(『シネマルーム11』220頁参照)だったが、さて100%国内CG技術で作り上げたという、深海に住む新たなクリーチャーである未確認深海生物とは?
<戦いを指揮するのは?隊員たちのスタンスは?>
巨大な未確認深海生物との戦いの指揮をとるのは、ボーリング作業の失敗が続く中ついに撤収命令が下されたことによって、本部からやって来たベテランキャプテンのアン・ジョンマン(アン・ソンギ)。ところが、父の遺志を継いで何としても第7鉱区で石油を掘り出してみせると意気込んでいる命知らず(?)のヘジュンはこの撤収方針に反対!早く撤収したがっているエクリプス号キャプテンのファン・インヒョク(パク・ジョンハク)は今回も明確にヘジュンへの反対論を述べたが、ヘジュンに心を寄せる油質分析官のキム・ドンス(オ・ジホ)や、ヘジュンと共に紅二点の存在である生態研究員キム・ヒョンジョン(チャ・イェリョン)たちも石油開発への思いは強い。隊員たちのそんな熱い思いを肌で感じとったジョンマンは自分の責任で撤収命令を退け、作業を続けると決定したが、なぜジョンマンはそんな決定を?その裏には何かがあるのでは?
もちろん映画のストーリーとしては、ジョンマンが撤収命令を退けた時点ではどんな怪物が登場するのかは全くわからず、深海を泳ぐのは1985年の冒頭のシーンで隊員が見た、かわいいあのおたまじゃくしのような小魚だけだった。そんな中へジュンと共に海底調査に出かけた後輩が死亡したが、これは単なる事故?それとも・・・?
<いくら国民的俳優でも、情報の1人占めは?>
深海での隊員の事故死に続く第2の犠牲者は、生態研究員のヒョンジョン。生前にヒョンジョンが何か言おうとしていた姿が忘れられないヘジュンはずっとそれが気になっていたが、ある日ついにボーリング船上に登場した深海の怪物と対決する中、ジョンマンが抱えていた重大な秘密が明らかにされていく。それは、怪物との対決の中でジョンマンが火を点けたライターを怪物に放り投げたこと。これによって怪物は一気に燃え上がったが、銃弾も貫通しないほど硬い肌を持った強暴な怪物の弱点が可燃性物体であることを、なぜジョンマンは知っていたの?
そんな指摘をしてジョンマンを追及したのはヘジュンの大嫌いなインヒョクだったが、誰の意見であっても正論は正論。死んだ父親の親友で、誰よりも信頼していたジョンマンがその追及に口ごもる姿を見て、誰よりも怒り心頭に発したのはヘジュンだった。そんなヘジュンからの糾弾に対してジョンマンは重い口を開いたが、いくらアン・ソンギが韓国の国民的俳優だといっても、情報の1人占めはいかがなもの?しかして、その重大な秘密とは?それはあなた自身の目でしっかりと。
<この美女のアクションは、アンジー以上!>
本作のヒロインを演ずるハ・ジウォンは、何と言っても『チェオクの剣』(03年)の可憐さが印象的だったし、『ボイス』(02年)(『シネマルーム2』234頁参照)、『恋する神父』(04年)(『シネマルーム8』16頁参照)、『デュエリスト』(05年)(『シネマルーム10』117頁参照)、『TSUNAMI-ツナミ-』(09年)、『私の愛、私のそばに』(09年)(『シネマルーム26』69頁参照)でも常にその「美人ぶり」は健在だった。そんなハ・ジウォンが本作では前半からかわいい顔をことさらきつくさせ、化粧っ気のない顔(?)で男たちに混じって(いや男たち以上に)そのたくましさを見せつけてくれる。この細腕のどこにそんな力があるの?前半のシーンには少し違和感があったが、後半からクライマックスに向けて、一人になってもなお敢然と怪物と戦うヘジュンの姿は圧巻!
ハリウッドではアンジョリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチなどアクションを得意とする美人女優も多いが、本作に見るハ・ジウォンのアクションはまさに韓国のアンジー!いや、これにてジ・エンド、と思ったのに、なお追っかけてくる怪獣との延々と続く死闘を見れば、それ以上だ。ネット上の「葦原多訳の韓国映画情報館」では、「本作は一言でいうと“劣化版エイリアン”。部隊が宇宙船から石油掘削船に、女戦士がシガニー・ウィーバーからハ・ジウォンに変わっているだけ。ストーリーも凡庸で何のヒネリもない。怪獣と人間がひたすら追いかけっこをするだけ。謎の深海生物も新鮮味ゼロ。オオトカゲを硫酸で溶かしたような姿に『あれっ、コレなの?』と落胆してしまった」と本作をこきおろしていたが、美人女優大好き人間の私には、ヘジュンを演じたハ・ジウォンの大活躍にただただ大拍手!
2011(平成23)年10月1日記