モネ・ゲーム(アメリカ映画・2012年) |
<GAGA試写室>
2013年3月28日鑑賞
2013年3月29日記
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監督:マイケル・ホフマン
脚本:ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
製作:マイク・ロベル、ロブ・パリス、アダム・リップ
ハリー・ディーン(イギリスの美術鑑定士)/コリン・ファース
PJ・プズナウスキー(テキサスのカウガール)/キャメロン・ディアス
ライオネル・シャバンダー(ハリーの雇い主の大富豪)/アラン・リックマン
ネルソン少佐(ハリーの親友、贋作作りの名人)/トム・コートネイ
マーティン・ザイデンベイバー(美術鑑定士)/スタンリー・トゥッチ
2012年・アメリカ映画・90分
配給/ギャガ
◆ キャメロン・ディアスは「ラブコメ」だけではなく、この手の「コメディ」にもうってつけ。しかも、カウボーイハットを粋にかぶった、テキサスに住む自由で恐いもの知らずの「カウガール」というキャラは、まさに彼女にピッタリだ。テキサスに住むそんな女性PJ・プズナウスキーがなぜ、ロンドンに住む美術鑑定士ハリー・ディーン(コリン・ファース)がハリーの心の友にして贋作作りの名人ネルソン少佐(トム・コートネイ)と共に企む一世一代の詐欺事件の協力者(共犯者)に?
ハリーとネルソン少佐がわざわざテキサスまでPJを捜しにやってきたのは、印象派の巨匠モネの名作をめぐるナチスとパットン将軍との死闘にPJのおじいちゃんが絡んでいたためらしいが、そんな「わかったような、わからないような脚本」を書き上げたのは、さすがジョエル・コーエン、イーサン・コーエン兄弟!
◆ 『英国王のスピーチ』(10年)でジョージ6世を演じて第83回アカデミー賞主演男優賞を受賞したイギリス生まれの名優コリン・ファース(『シネマルーム26』10頁参照)が、本作ではハリーの雇い主である傲慢な大富豪ライオネル・シャバンダー(アラン・リックマン)に対して一世一代の詐欺を試みる美術鑑定士役に挑戦!いかにも英国紳士らしい上品なスーツながら、ホテル・サボイの中で上はスーツ、下はパンツ一枚という姿で熱演を見せるなど、ジョージ6世とは180度異なる役を、ユーモラスに演じている。完璧だったはずの詐欺事件の企みはあちこちでほころびを見せたが、彼はいかにしてその挽回を?
◆ ハリーが目の敵にする雇い主ライオネルが「ヌーディスト」だという設定や、ライオネルのライバルとして登場するアジアのメディア王アキラ・タカガワとの奇妙な「対決」という設定はいかにもコーエン兄弟の脚本らしいが、ハリーはそんな「情報」をいかに活用して「作戦」の展開を?ハリーがライオネルへの「反乱」を決断したのは、ハリーが美術鑑定士として無能だと判断され、ハリーの代わりにマーティン・ザイデンベイバー(スタンリー・トゥッチ)が起用されたためだが、さてハリーの美術鑑定士としてのホントの能力は?
◆ 絵画の贋作をテーマにした映画はたくさんあり、本作も『泥棒貴族』(66年)をイメージして製作された映画だ。ミケランジェロの絵の真贋がストーリーの軸となった『ミケランジェロの暗号』(10年)にも当然「鑑定人」が登場していたが、同作は本作のようなコメディではなく、緊迫感一杯の名作だった(『シネマルーム27』123頁参照)。
しかして、本作でコーエン兄弟がテーマの軸にしたのはモネの名作だが、あなたはそんな絵を知ってる?実は、モネが1891年に描いた2枚の油絵、「積みわら」の「夜明け」と「夕暮れ」はそれ自体が架空のもの。つまりコーエン兄弟はライオネルを欺す前にまず観客を欺しているわけだが、映画作りとはこのように本来どこまでも自由なもの!
2013(平成25)年3月29日記