ハンガー・ゲーム2(アメリカ映画・2013年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2014年1月4日鑑賞
2014年1月9日記
ハリウッドでは『トワイライト』シリーズと『ハンガー・ゲーム』シリーズが大人気だが、「シリーズもの」の弊害が少しずつ顕著に・・・。
ジェニファー・ローレンス扮するヒロインが革命のシンボルになっていくストーリーは本来面白いはずだが、ストーリーの深みがイマイチ。また、恋のさやあて(?)がイマイチなら、肝心のサバイバルゲームの迫力もイマイチだ。これなら、大みそかにTVで見た井岡一翔や内山高志のボクシングのタイトルマッチの方がよほど手に汗を握る熱戦だったと思うのは、私だけ・・・。
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監督:フランシス・ローレンス
脚本:サイモン・ボーフォイ、マイケル・アーント
原作:スーザン・コリンズ
カットニス・エバディーン(第12地区の勝者)/ジェニファー・ローレンス
ピータ・メラーク(第12地区の勝者)/ジョシュ・ハッチャーソン
ゲイル・ホーソーン(カットニスの相棒)/リアム・ヘムズワース
ヘイミッチ・アバナシー(カットニスとピータの教育係)/ウディ・ハレルソン
エフィー・トリンケット(キャピトルの住人、カットニスの付添人兼PR担当)/エリザベス・バンクス
シナ(カットニスのスタイリスト)/レニー・クラヴィッツ
プリムローズ・エバディーン(カットニスの妹)/ウィロー・シールズ
プルターク(第75回ハンガー・ゲームのゲーム・オーガナイザー)/フィリップ・シーモア・ホフマン
ビーティー(第3地区の勝者)/ジェフリー・ライト
シーザー・フリッカーマン(ハンガー・ゲームの公式テレビ・インタビュアー)/スタンリー・トゥッチ
スノー大統領(独裁国家パネムの最高権力者)/ドナルド・サザーランド
フィニック・オデイル(第4地区の勝者の美青年)/サム・クラフリン
マグス(第4地区の勝者の老女)/リン・コーエン
ジョアンナ・メイソン(第7地区)/ジェナ・マローン
ワイレス(第3地区の勝者)/アマンダ・プラマー
エノバリア(第2地区の勝者)/メタ・ゴールディング
ブルータス(第2地区の勝者)/ブルーノ・ガン
グロス(第1地区の勝者)/アラン・リッチソン
カシミア(第1地区の勝者)/ステファニー・リー・シュルント
KADOKAWA配給・2013年・アメリカ映画・147分
<あのシリーズがイマイチなら、このシリーズもイマイチ>
アメリカでは『トワイライト~初恋~』(08年)に始まった『トワイライト』シリーズが大人気。しかし、私にはこの映画はイマイチ(『シネマルーム22』未掲載分)で、2作目以降は観る意欲も失くしている。他方、『ハンガー・ゲーム』(12年)は、アメリカ国内で4億ドル、全世界で7億ドルという爆発的な興収成績を記録したが、私の評価はイマイチだった(『シネマルーム29』234頁参照)。
もっとも、『スノーホワイト』(12年)でブレイクした『トワイライト』シリーズの主演女優クリステン・スチュワートはイマイチだが、『世界にひとつのプレイブック』(12年)(『シネマルーム30』30頁参照)でブレイクしたジェニファー・ローレンスの方は断然グッド。『ハンガー・ゲーム』で私は、①「ハンガー・ゲーム」の基本ルールに、異議あり!②サバイバルとチームプレーは、矛盾するのでは?③ゲーム中の根本ルールの変更はなぜ・・・?という小見出しで問題提起をし、さらに、「予想どおり、更なるルール変更だが・・・」とその設定自体に異議を唱えた。しかして、第1作以上の製作費で作られた本作では、それらのルール設定(の変更)は如何に・・・?
<なぜ革命のシンボルに?その深みもイマイチ>
前作では、第12地区から選出されて「ハンガー・ゲーム」に出場したカットニス(ジェニファー・ローレンス)とピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)の2人が、「勝者」として生き延びる結果になった。それは、ゲーム終盤まで生き残ったカットニスがピータと共に毒の実を飲もうという、ロミオとジュリエットばりの覚悟と行動力を示したためだ。しかし、ハンガー・ゲームは12の隷属地区から男女ひとりずつを選出し、全国にテレビ中継しながら、最後のひとりになるまで戦わせるものだから、そんなカットニスの行動は、明らかにルール違反。ところが、スノー大統領(ドナルド・サザーランド)が支配する独裁国家パネムに抑圧されている12の隷属地区の人々は、そんなルール違反を犯してまでピータとの愛を貫き、スノー大統領に「抵抗」したカットニスに拍手喝采を送ったため、今やカットニスは革命のシンボルになっていた。
昨年12月29日にTBSが『報道の日2013』と題して放映した「激動の平成四半世紀を振り返る」では、「ペレストロイカ」を提唱し実践したソ連のゴルバチョフ書記長が1989年5月に訪中した際、中国共産党内部で複数政党制、三権分立、表現の自由などの基本的人権の承認等を内容とする「民主化案」が極秘に検討されていたことが紹介されていた。もしそれが実現していたら、1989年6月4日の天安門事件の悲劇は生まれなかったのでは・・・?
本作の導入部では、スノー大統領が自らカットニスの家にまで足を運び、カットニスに「警告」を与えるシークエンスが登場するが、その警告とは?カットニスが革命のシンボルになっていくというストーリーは面白いが、その深みはイマイチ・・・。
<ホントの恋人はどっち?そこもイマイチ>
女1人に男2人という「三角関係」はよくあるモメ事。しかして本作冒頭では、カットニスの狩猟仲間で昔の恋人だったゲイル(リアム・ヘムズワース)と第74回ハンガー・ゲームで共に生死を賭け恋人として戦ったピータのどちらがホントの恋人か、という問題が提起される。スノー大統領が第75回という記念すべきハンガーゲームを、それまでの歴代勝者たちを戦わせる、いわばチャンピオン大会にしたのは、体よくそこで革命のシンボルとなりそうなカットニスを抹殺するためだった。
しかし、今回もピータと2人で出場することになったカットニスは、スノー大統領からの「警告」によって、ピータと恋人同士であることを演じなければならないことに。それは、前回共に毒の木の実を飲んだのは、反逆の意思ではなく、純粋にピータへの愛によるものであることを国民に信じさせるためだ。しかし、そんなことはカットニスの本来の恋人であるゲイルにとっては大きなお世話。その結果、恋のさやあて的紛争も発生するが、私の目にはそんなドラマの展開もイマイチ・・・。
<本番開始前が長いのは、大みそかの格闘技と同じ>
第74回ハンガー・ゲームもそうだったが、歴代勝者の対抗戦となる第75回ハンガー・ゲームも本番開始前の選手紹介がやたら長い。近年の大みそかは、NHKの紅白歌合戦に対抗して各種格闘技戦やボクシングのタイトルマッチが開催されている。2013年の大みそかでは、WBA世界ライトフライ級タイトルマッチでチャンピオン井岡一翔が、過去1度もノックアウト負けをしたことがないという最強の挑戦者であるニカラグアのフェリックス・アルバラードから鮮やかな勝利をおさめたし、内山高志VS金子大樹の日本人対決も迫力があり、面白かった。しかし、これも本番開始前がやたら長いのが欠点だ。
さらに、今回のハンガーゲームに出場する12組24人の男女の顔ぶれをみると、80歳の最高齢プレーヤーの女性マグス(リン・コーエン)まで登場する。彼女の武器は「千枚通し」とのことだが、ここまでくると「個性的」を超えて、漫画的に・・・。
<「サバイバルゲーム」の看板に偽りあり!?>
前作の評論でも私は「サバイバルとチームプレーは、矛盾するのでは?」と書いたが、『ハンガー・ゲーム2』でも、ゲームが始まる前から誰と誰が同盟を組むか、が大きなテーマとなっている。そして、ゲームが開始するや、たちまち数人は「ジ・エンド」となるが、カットニスとピーターが同盟を組んだのは第65回ハンガー・ゲームに出場し、14歳で勝者となった第4地区のフィニック・オデイル(サム・クラフリン)やマグス、ジョアンナ(ジェナ・マーロン)、ビーティー(ジェフリー・ライト)、ワイレス(アマンダ・プラマー)など数人。もちろん、この同盟軍(チーム)も他の同盟軍をやっつけた途端に同盟軍同士で殺し合わなければならない運命だが、これではホントのサバイバルゲームとはいえないのでは?
同じような設定の邦画『バトル・ロワイヤルⅡ/鎮魂歌(レクイエム)』(03年)の方がその点はよほどシリアスだった(『シネマルーム3』313頁参照)。しかも、人間同士の殺し合いがいかなるシリアスさで展開されるのかと期待していると、スクリーン上にみる戦いの相手は①殺人電磁波②猛毒を含んで追ってくる濃霧③巨大な津波④狂暴な猿軍団等だから、これも大きく期待外れ。これでは、昨年の阪急・阪神ホテルズの食品偽装問題と同じように、12の地区から選出された24人の男女たちの「サバイバルゲーム」という看板に偽りあり、と言われても仕方がないのでは・・・。
<この中途半端な終わり方は、一体ナニ?>
ハンガー・ゲームの原作は、スーザン・コリンズの3部作の小説。したがって、第1作が映画化され大ヒットした時から、そのシリーズ化が決定されていたらしい。現に『ハンガー・ゲーム2』後の「パート3」は前後編の2部構成として、2014年~15年に全米公開される予定とされているから、いわば本作はそれへの「つなぎ」となる作品だ。
第1作はルールについてさまざまな疑義がありながらも、あっと驚くルール違反を決行することによって、あっと驚く結末を迎えることができたから、それなりのインパクトがあった。しかし、その点「パート2」となる本作の結末は?それは、私の目にはあまりにも中途半端だ。「この後は来年以降に公開される「パート3」を観て下さいね」と言わんばかりの、この中途半端な終わり方は一体ナニ?これでは、大ヒットシリーズの第2作という売り込みは、ムリなのでは・・・。
2014(平成26)年1月9日記