ブラッドレイン(アメリカ、ドイツ映画・2005年) |
<ユウラク座>
2006年5月5日鑑賞
2006年5月8日記
ヴァンパイア(吸血鬼)映画に今回はじめて登場したのは、人間とヴァンパイアとの間に生まれた「ダムフィア」の美しき女戦士「レイン」。彼女が復讐を誓う相手は、母親を殺し、今や最強のヴァンパイアとして君臨している父親。その復讐劇に絡むヴァンパイア退治を使命とする「業火の会」を含めて、いろいろと複雑なストーリーが・・・。しかし、この映画最大のポイントは、女戦士の美しさと強さ。さて、あなたの採点は・・・?
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監督、エグゼクティブ・プロデューサー:ウーヴェ・ボル
レイン(半分人間で半分ヴァンパイアの<ダムフィア>)/クリスタナ・ローケン
ケイガン(レインの父親)/サー・ベン・キングズレー
ウラジミール(業火の会の男性剣士)/マイケル・マドセン
セバスチャン(業火の会の男性剣士)/マシュー・デイヴィス
キャタリン(業火の会の女性剣士)/ミシェル・ロドリゲス
日活配給・2006年・アメリカ、ドイツ映画・94分
<新たな「ゲームのヒロイン」誕生だが・・・>
この映画の原作は、例によって(?)私は全然知らない人気ビデオ・ゲームとのこと。もっとも、原作ゲームは第2次世界大戦が舞台で、レインはナチスドイツの部隊と闘うらしいから、この映画での18世紀の吸血鬼の聖地・ルーマニアのトランシルヴァニアでヴァンパイアと闘う「ブラッドレイン」(クリスタナ・ローケン)という設定は原作ゲームとは全く異なったもの・・・?
その映画の謳い文句はいかにもハリウッド的で、「『ブレイド』のブレイドより強く、『アンダーワールド』のセリーンよりグラマラスな新たなダーク・ヒロインが誕生・・・。その名は<ブラッドレイン>」というもの。ここに新たな「ゲームのヒロイン」が誕生したが・・・?
<ドイツが生んだハリウッドの反逆児に注目!>
どこの世界でも大勢に従わない反逆児はいるものだが、どうもこの映画を監督したウーヴェ・ボルがそうらしく、パンフレットには「ドイツが生んだハリウッドの反逆児」と紹介されている。それは、人気ビデオ・ゲームを原作とした『ハウス・オブ・ザ・デッド』(03年)を監督したことによって「頼れる奴」になったウーヴェ・ボルが、「プロデューサーや出資者の多くは配給会社に搾取されている」と主張して、澱んだハリウッドのシステム改革のため、自ら製作からセールスまでを行う会社「ボルKG」を設立して、効率のよい映画製作・配給・DVD・海外セールス網を世界中に構築しはじめたため、とのこと。
そもそも、映画の製作から配給・公開までのシステムは複雑でわかりにくいものがある。つい先日は、韓国特有の制度である「スクリーン・クォーター」を40%から20%に引き下げるという改悪(?)をめぐって、韓流人気スターが抗議行動を行っている様子が報道された。その主張内容は十分理解できるものだが、このウーヴェ・ボルによる改革は、その主張自体が具体的にどのようなものかよくわからない・・・?しかし、反逆児が出ることは基本的にいいこと。「第2のジョージ・ルーカス」とまで言われている、ウーヴェ・ボル監督の今後の行動に注目だ!
<今回はじめて知った「ダムフィア」とは?>
映画評論を書きはじめて以降、吸血鬼=ヴァンパイア映画もたくさん観てきたが、今回はじめて知ったのは人間とヴァンパイアとの間に生まれた、「ダムフィア」=ハーフヴァンパイアという存在。しかし、この映画を観る限り、どうもこの種の混血種は肩身の狭い立場のよう・・・?
『アンダーワールド:エボリューション』(06年)は、ヴァンパイアとライカン(狼男族)との種族間闘争がテーマで、ヴァンパイアの闇の処刑人である「美しき戦士」セリーンが主人公だったが、そこにも史上初のヴァンパイアとライカンとの混血種の男性マイケルが登場していた。誰でも考えることは同じだということかも・・・?
ところがこの『ブラッドレイン』は、人間とヴァンパイアとの混血種であるダムフィアのレインが、ある日、ある時、あるきっかけによって自分の力に目覚めて、「美しき戦士」に変身し、自分自身の父親への復讐という目的に向かって突っ走っていくという物語。
<なぜケイガンへの復讐を・・・?>
難攻不落の砦で生活しているケイガン(サー・ベン・キングズレー)は、今や最強のヴァンパイアとして君臨しているが、実はこのケイガンはレインの父親。ケイガンは一部の人間も支配下に治めていたが、ダムフィアのレインが生きているとの報告を聞いたケイガンは、直ちにレインの抹殺を部下たちに命じた。それは、レインがケイガンに対する復讐を狙っていると知ったため。
レインがケイガンへの復讐を決意したのは、占い師から聞いた驚愕の事実のため。それはつまり、レインはヴァンパイアのケイガンと人間の母親との間に生まれた娘だが、母親はケイガンの手によって殺され、ハーフヴァンパイアであるダムフィアも抹殺されるべき運命にあるということ。サーカスで見せ物にされていたレインが、そのサーカスから脱出する際に友人の女性からもらった剣を武器に、レインはその後どのように強く美しい戦士に成長していくのだろうか・・・?
<伝説の「ベリアーの3つの遺物」とは?>
楊紫瓊(ミシェル・ヨー)主演の面白い映画が『レジェンド 三蔵法師の秘宝』(02年)だった(『シネマルーム7』336頁参照)が、そのテーマは「三蔵法師の秘宝探し」というもの。このように○○探しをテーマとした物語の組み立てはよくあるパターンだが、この映画のそれは「ベリアーの3つの遺物」。
これはヴァンパイア映画らしく(?)、①肋骨、②目、③心臓というちょっと気味の悪いものだが、この3つを手中にした時、世界を征服できるパーフェクト・ヴァンパイアが誕生してしまうらしい・・・?そして、ケイガンは既に「肋骨」を手に入れ、残りの2つを探索中・・・。
ところが、レインは何かに導かれるかのように入った修道院の中で、不思議なめぐり合わせに引き寄せられるかのように「目」を手中に収めることに。そこで、それを知ったケイガンは、直ちにこの修道院を急襲。さて、「目」の行方は・・・?
<「業火の会」とは?>
ヴァンパイアの進出を阻止し、人間界を守るために組織されたのが「業火の会」。その主要メンバーが、ウラジミール(マイケル・マドセン)とセバスチャン(マシュー・デイヴィス)の2人の剣士と女性剣士のキャタリン(ミシェル・ロドリゲス)。「業火の会」の任務は、ヴァンパイアを探し出してこれを殺し、ヴァンパイアを絶滅させること。しかし、情勢は逆に、大きな力をつけたケイガン有利に動き、「業火の会」の支部は次々とケイガンの軍勢によって滅ぼされ、今やウラジミールたちの砦も風前の灯。その砦を守るのはキャタリンの父親だが、今後「業火の会」とヴァンパイアとの闘いはどのように展開していくのだろうか・・・?
<問題がこじれるのは女の嫉妬心から・・・?>
「業火の会」のウラジミール、セバスチャンとキャタリンの3人は、固い絆で結ばれているように見えたが、修道院でハーフヴァンパイアのレインを救出し、彼女を監禁したところから、何となく微妙な雰囲気に・・・。それは、ウラジミールとセバスチャンの2人の男性が、レインの「ケイガンへの復讐のために行動している」という言葉を信用してレインを解放したうえ、共に闘う仲間としてレインを位置づけたため・・・?
つまり、それまでキャタリンは、2人からチヤホヤされていたのに、同性(?)のレインの出現により、2人の男の関心がレインに移ってしまったわけだ・・・。そんな風にキャタリンが嫉妬したのかどうかは知らないが、何となくそんな雰囲気に・・・?その結果、キャタリンとキャタリンの父親が守る砦がケイガンの軍勢によって襲われる中、キャタリンがとった行動は・・・?
<「ブラッドレイン」の魅力のほどは・・・?>
この映画最大の見どころは、娘による父への復讐劇のストーリーや「3つの遺物」の争奪戦、さらには「業火の会」の活動などではなく(?)、新たなヒロイン「ブラッドレイン」のカッコ良さ・・・?そして、そのカッコ良さとは「ブラッドレイン」の美しい顔とスタイルによるところ大だが、それにプラスして服装のユニークさと剣さばきの妙が必要。
その競争相手(?)は、『ブレイド』(99年)のブレイドや『アンダーワールド』(03年)のセリーンのみならず、『トゥームレイダー』シリーズでのアンジェリーナ・ジョリー演ずるララ、『バイオハザード』シリーズでのミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリス、そして『エレクトラ』(05年)でのジェニファー・ガーナー演ずるエレクトラなど数多い。さて、それらと比べて、クリスタナ・ローケン演ずるレインの魅力のほどは・・・?
映画のストーリー上は、見事にケイガンへの復讐を遂げて1人生き残ることになるブラッドレインだが、今後の映画製作においても、「美しきヒロイン」として生き残ることができるかどうかは、さて・・・?
2006(平成18)年5月8日記