ダイバージェント(アメリカ映画・2013年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2014年7月21日鑑賞
2014年7月25日記
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監督:ニール・バーガー
ベアトリス(トリス)(「異端者」の診断を受けるが、「勇敢」に加入)/シャイリーン・ウッドリー
フォー(「勇敢」の教官、トリスの指導者)/テオ・ジェームズ
ナタリー(トリスの母親、「無欲」に所属)/アシュレイ・ジャッド
トーリ(「勇敢」のメンバー、トリスの適性検査で「異端者」であることを発見)/マギー・Q
ジェニーン(「博学」の最高幹部)/ケイト・ウィンスレット
エリック(「勇敢」の教官)/ジェイ・コートニー
クリスティーナ(「高潔」出身、「勇敢」に加入。トリスの友人)/ゾーイ・クラヴィッツ
ピーター(「高潔」出身、「勇敢」に加入。トリスの敵対者)/マイルズ・テラー
アンドリュー(トリスの父親、「無欲」に所属)/トニー・ゴールドウィン
ケイレブ(トリスの兄、「博学」に加入)/アンセル・エルゴート
マーカス(「無欲」の最高幹部)/レイ・スティーブンソン
KADOKAWA配給・2013年・アメリカ映画・139分
◆近未来。最終戦争で文明が破壊されてから100年後が本作の舞台だ。人類は新たなシステムとして人間を「勇敢」「博学」「平和」「無欲」「高潔」という5つの共同体(=ファクション)(派閥?)に振り分けることによって生きていた。その頂点に立っているのは当然ながら(?)「博学」だが、そもそも映画冒頭に語られるこの設定自体がイマイチ、ピンとこないのが本作の難点。そのことは、『キネマ旬報』2014年8月上旬号の「REVIEW鑑賞ガイド」における3氏の評論のみならず、ネット上の多くの評論で書かれている。
原作はヤング・アダルト小説らしいが、最近観て1作で飽きてしまった『トワイライト~初恋~』(08年)(『シネマルーム22』未掲載)や、ジェニファー・ローレンスの魅力で持たせるのも2作目が限度かなと思ってしまった『ハンガーゲーム』(12年)(『シネマルーム29』239頁参照)と同じような、ちょっとケッタイな世界での若者の恋愛劇がメインで、近時のハリウッド映画のレベルの低下を示す1作になっている。「博学」のリーダーで、後半では悪役になってしまうジェニーンに扮するケイト・ウィンスレットや、ヒロインが「異端者(ダイバージェント)」であることを最初に見抜く「勇敢」に属する女性トーリに扮するマギー・Qらも出演しているのに、ちょっともったいない・・・。
◆日本では現在、20歳ではなく、18歳以上の国民に投票権を与えるべきか否かが議論されている。しかして、本作では導入部では、16歳の時に受けるという厳格そうな「適性検査」の様子が描かれるが、5つのファクションのどれを選ぶかはあくまで本人の自由意思による選択とされている。それを決断するのは18歳の時だ。
本作のヒロイン、ベアトリス(シャイリーン・ウッドリー)と兄のケイレブ(アンセル・エルゴート)の父アンドリュー(トニー・ゴールドウィン)、母ナタリー(アシュレイ・ジャッド)は「無欲」に属しているが、トリスが「勇敢」を選んだのはなぜ?また、兄のケイレブが「博学」を選んだのはなぜ?
トリスを演ずるシャイリーン・ウッドリーは丸顔のかわいい顔立ちだが、ふっくら気味でスクリーン上でみる限り『ハンガーゲーム』のジェニファー・ローレンスほど運動神経が良いとは思えない。しかも、本作後半ではその美しい髪を強調したいためか、ロングヘアのままでアクションにチャレンジしているが、そのキレはイマイチ。というより、ハッキリ言えば学芸会レベル・・・?
◆仲代達矢、新珠三千代が共演した『人間の條件』全6部作(59~61年)(『シネマルーム8』313頁参照)や勝新太郎、田村高廣コンビの『兵隊やくざ』全9部作(65~72年)では、旧日本陸軍における「二等兵いじめ」の描写にかなりの時間が割かれていたが、それは本作も同じだ。トリスと同期で「勇敢」の「新入り」となったのは、女性のクリスティーナ(ゾーイ・クラヴィッツ)や男性のピーター(マイルズ・テラー)たち。そして、「勇敢」のリーダーとして新入りの教育にあたるのが、直属の教官フォー(テオ・ジェームズ)と、その上位の教官(?)エリック(ジェイ・コートニー)だ。
今ドキ(と言っても近未来だが)、こんな旧日本陸軍と同じようなスパルタ教育が行われていること自体が不思議だが、アメリカの海兵隊での訓練はデミ・ムーアが主演した『G.I.ジェーン』(97年)を観ても旧日本陸軍と同じように(いや、それ以上に)ハードだから、それと見比べるのも一興かも。もっとも、それがあまり長くダラダラ続くと、いい加減うんざり・・・。
◆中国共産党では、党主席、国家主席、国家中央軍事委員会主席を兼ねて、最高権力を握った習近平による党幹部と地方政府の要職者の「腐敗摘発」が進む中、さまざまな権力闘争の内幕が垣間見える。権力闘争自体は北朝鮮でも自民党内部でも同じだが、本作が描く近未来のそれは?
本作中盤以降は、「博学」のリーダーであるジェニーンと、「博学」の不正のうわさを流している「無欲」の最高幹部マーカス(レイ・スティーブンソン)との権力闘争が焦点になる。と言っても、「無欲」は行動力がないから、あらん限りの知恵を駆使して「勇敢」を味方に巻き込み、力尽くで「無欲」を抑え込もうとするジェニーンとの力量の差は明らかだ。トリスは「勇敢」に属していたため、このままいけば、ロボット状態でジェニーンの思うがままに動かされることになり、その挙げ句に父母を殺す役割を担わなければならないことになりそうだが、そんな中、さてトリスの決断は?
◆本作のテーマは、タイトルどおり「ダイバージェント(異端者)」。そして、本作のヒロインであるトリスが「ダイバージェント」であることは16歳の時のトーリが実施した「適性検査」でわかるのだが、それを「しゃべってはダメ」というトーリの助言に従ってトリスがそれをずっと隠していることがストーリー展開のミソになる。しかし、「ダイバージェント」だから何がどうなるのかがよくわからないから、観客はトリスが「ダイバージェント」であることを知りつつ、トリスが「勇敢」の中でしごかれていくシーンに延々と付き合わされることになる。
「ダイバージェント」は殺されることが宿命であれば、中国共産党以上の監視社会となっているスクリーン上の様子を見れば、トリスが「ダイバージェント」として摘発され、殺されても何ら不思議はない。しかし、そうなったのでは本作のストーリーは持たないから、アレコレと工夫がされている。したがって、本作の見どころは後半からクライマックスにかけての、「博学」が「勇敢」を道具として使い、「無欲」への、ナチスによるユダヤ人大虐殺を彷彿させる攻撃(虐殺)の中で、展開されるトリスの活躍ぶりになるから、それにしっかり注目したい。しかし、この程度のアイデアで2時間も観客の興味を引っ張るのは、所詮無理・・・。
2014(平成26)年7月25日記