バツイチは恋のはじまり(フランス・2012年) |
<シネ・リーブル梅田>
2014年9月27日鑑賞
2014年10月1日記
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監督:パスカル・ショメイユ
脚本:ローラン・ゼトゥンヌ
イザベル(イザベル家の長女)/ダイアン・クルーガー
ジャン=イヴ(旅行雑誌の編集者、イザベルの“バツイチ”の相手)/ダニー・ブーン
コリンヌ/アリス・ポル
ピエール(イザベルの恋人の歯科医師)/ロベール・プラニョル
パトリック/ジョナタン・コアン
ソランジュ/ベルナデット・ル・サシェ
エドモン/エチエンヌ・シコ
ヴァレリー/ロール・カラミー
ルイーズ/マロン・レバナ
2012年・フランス映画・104分
配給/ファントム・フィルム
◆イザベル家には、「最初の夫とは破局する」というジンクスがあった。それが、イザベル(ダイアン・クルーガー)がイケメンで仕事も愛も完ぺきな恋人ピエール(ロベール・プラニョル)との結婚に踏み切れない唯一の理由だった。すでにパリで10年間も同棲し、共に歯科医として働いているにもかかわらず、だ。そんなバカな。
誰もがそう思うが、『最強のふたり』(11年)(『シネマルーム29』213頁参照)を大ヒットさせた製作チームが作った、フランス最高のクールビューティ、ダイアン・クルーガーをヒロインとしたフランス流ラブコメたる本作の絶対的コンセプトがそれだ。まあ、映画は所詮作り物だし、ラブコメなんてその中でもとりわけ作り物色が強くてもOKなジャンル。そんな風に設定された物語は、最初から無理を承知で(?)展開していく。
そして、舞台はアフリカのケニアからロシアのモスクワまで。ピエールとの1ヶ月後の結婚が控える中、イザベルは某地で某男性と一度結婚し、離婚してからピエールとの結婚式に臨むというミッション(?)に旅立つことに。
◆何事も予定通り、思惑通り進めば問題ないが、ラブコメにはその逆パターン、つまり何事も予定外、思惑外れの展開がよく似合う。そう、ラブコメの生命線は、「意外性」にあるわけだ。
そもそも、オードリー・ヘプバーン似(?)かつニコール・キッドマン似(?)のフランスの美女ダイアン・クルーガーは正当派美女だから、ラブコメには不向き。今やすっかり影が薄くなったが、ラブコメのヒロインにはやはり、メグ・ライアンなど美人度ではイマイチの女優(?)の方が適任なのだ。したがって、『最強のふたり』の製作チームがダイアン・クルーガーをコメディ色満載のラブコメのヒロインに抜擢したのは意外性の面では十分だし、ダイアン・クルーガーの演技もびっくりするほどすばらしいが、所詮本作にはその設定に無理がある。
他方、「ある偶然」の中で、イザベルの結婚、離婚のターゲットにされてしまった三流旅行雑誌の編集ジャン=イヴを演じるダニー・ブーンは、コメディ色たっぷりの演技を見せてくれる。しかし、これも筋書きがわかっているだけに、かえって素直に笑えない感がある。ケニアでのライオンとの遭遇、車を盗まれる悲劇、そしてマサイ族の方式にのっとった結婚式等々、スケールの大きさ(?)、笑いの発想の大きさには感心させられるが、所詮それだけのもの・・・。
◆イザベルに扮するダイアン・クルーガーの、イザベルがジャン=イヴに気があることを多くの空振りを含めながら見せる演技の数々は十分楽しめる。さらに一転して、今度は離婚させるために、これも多くの空振りを含めながら見せる演技の数々も面白い。とりわけ、髪の毛の薄さを気にしているジャン=イヴがシャワーするときに脱毛クリームを差し出すシークエンスには笑い転げてしまうが、なぜかその次には空虚感が・・・。
本作前半から中盤にかけて展開されるザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』のようなドタバタ劇、また『どっきりカメラ』のような「ドッキリ劇」が本作の醍醐味だが、イザベルのたくらみがジャン=イヴにバレてしまうシーンは意外に単純。脚本上、ここにはもう少し何らかの意外性が不可欠だ。
しかし、何はともあれイザベルのたくらみがジャン=イヴにバレ、ジャン=イヴが退いてしまった以上、結果オーライ。もちろん、ジャン=イヴの心を傷つけたという痛みはイザベルの心に残るだろうが、それだってピエールとの幸せな結婚生活が始まればすぐに忘れてしまうはず。よって、それにて本作は無事ハッピーエンドに・・・?いやいや、それはないはずだ。
◆イザベルとピエールとの10年間の同棲生活は、極めて規則正しいものらしい。ロシア民謡に「日曜日に市場へでかけ、糸と麻を買ってきた。月曜日におふろをたいて、火曜日はおふろにはいり、水曜日に友達が来て、木曜日は送っていった。金曜日は糸まきもせず、土曜日はおしゃべりばかり。友達よこれが私の一週間の仕事です」という歌詞の「一週間」という曲があるが、それと同じで外食、ボーリング、セックス等々は一週間毎に規則正しくスケジュールされていたらしい。
それも悪くないが、イザベルがジャン=イヴと過ごした飛行機の中では?ケニアでは?モスクワでは?さらに、イザベルのたくらみがバレたあと、残されたわずかの時間をハチャメチャに過ごしたあの空の上では?人間は欲の深いもの。男も女もその欲望の対象こそ違っても、AがあればBを求め、BがあればAを求める動物だ。島倉千代子は『人生いろいろ』の中で、「男もいろいろ、女もいろいろ、女だっていろいろ咲き乱れるの」と歌ったが、最初から「道具」に過ぎないと思っていたジャン=イヴが遠くに去ってしまうと、さてイザベルの心の中は・・・?さらに、結婚式が迫ってきたピエールからいつものようにあれこれ指図(アドバイス?)されると・・・?
まあ、ラブコメの王道はきちんと守っているが、やはり根幹となる設定に少し無理があるから、本作は作品の出来としてはイマイチ。しかし、全編にわたってダイアン・クルーガーの美しさが際立っていることが取り柄だ。しかして、ダイアン・クルーガーが踊る最後のロシア式舞踊(?)のカッコよさには、きっと誰もがホレボレ・・・。
2014(平成26)年10月1日記