スガラムルディの魔女(スペイン・2014年) |
<シネ・リーブル梅田>
2014年12月16日鑑賞
2014年12月18日記
本文ははネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!ご注意ください!!
↓↓↓
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
ホセ(キリストに変装した強盗犯)/ウーゴ・シルバ
アントニオ(兵士に扮した強盗犯)/マリオ・カサス
グラシー(人食い魔女リーダー、バーの女主人の娘)/カルメン・マウラ
マリチェ(グラシーの母)/テレレ・パベス
エバ(グラシーの娘)/カロリーナ・バング
マヌエル(タクシー運転手)/ジェイミー・オルドネス
セルジオ(ホセの幼い息子)/カブリエル・デルガルド
シルビア(ホセの離婚した妻)/マカレナ・ゴメ
ルイス/ハビエル・ボテ
アルフォンソ・カルボ(刑事)/ペポン・ニエト
ハイメ・パチェコ(刑事)/セクン・デ・ラ・ロサ
コンチ(魔女)/カルロス・アレセス
ミレン(魔女)/サンティアゴ・セグーラ
2014年・スペイン映画・114分
配給/松竹メディア事業部
◆「孤高の天才か、それとも狂気の破壊者か!?スペインが世界に誇る型破りな才能、監督:アレックス・デ・ラ・イグレシアの世界」。チラシのそんな文句を読み、しかも「ゴヤ賞8部門を独占した」と聞き、「こりゃ必見!」と考え劇場へ。しかし、「天才と狂気は紙一重」と言われるとおり、本作の評価は難しい。
イエス・キリストに扮したホセ(ウーゴ・シルバ)、兵士に扮したアントニオ(マリオ・カサス)らが、ホセの幼い息子セルジオ(カブリアル・デルガルド)を含めて、白昼堂々と大量の指輪の強盗計画を実行する冒頭のシークエンスは面白い。また、警察に追われる中、ホセ、アントニオ、セルジオの3人がマヌエル(ジェイミー・オルドネス)のタクシーに無理やり乗り込み、フランス方面に逃走するシークエンスも、ハチャメチャ風で面白い。とりわけ、頭部に棘の冠を被ったイエス・キリストの姿は、去る12月4日に『サン・オブ・ゴッド』(14年)で涙を流しながら観たイエス・キリストの姿と実によく似ていたから(?)、そのやっていることの落差に唖然・・・。
◆韓国人もフランス人もよくしゃべるが、スペイン人もホントによくしゃべる。したがって、マドリードの宝石店からの逃走劇においては、ホセとアントニオたちに運転手のマヌエルを含めた男たちのおしゃべりに注目!一方的に迷惑を受けているだけの運転手マヌエルも、「女の権利が強すぎる。女はけしからん。」という話題になると、ホセたちに同調。その結果、パトカーの追及を振り切る無謀運転では持ち前の技量を精一杯披露したから、このまま無事フランスの国境まで・・・?
本作冒頭のタイトルバックでは、何とも奇妙な姿をした女、女、女の姿が映し出される。それが『スガラムルディの魔女』というタイトルにピッタリだから、観客は否が応でも魔女たちの想像を膨らませていく。しかして、マヌエルの車が入り込んだのが、食欲旺盛な魔女たちが巣食う村スガラムルディだ。さあ、そこにはどんな魔女たちが・・・?
◆本作では、男はホセ、アントニオ、マヌエルの3人に加えてホセの息子セルジオの4人がメインだが、魔女はバーの女主人で祖母のマリチェ(テレレ・パベス)、その娘のグラシー(カルメン・マウラ)、そしてその娘で今がピチピチの花盛りのエバ(カロリーナ・バング)という3世代の女たちがメイン。このエバもホセの別れた妻シルビア(マカレナ・ゴメス)もスペイン系の美女なのかもしれないが、私たち日本人の男にはこの手の顔とこの手の化粧は苦手・・・。しかし、女には目のないスペインの男ホセとアントニオが色気タップリのエバに対して興味を持ったため、グラシーが案内する魔女の屋敷内に入り込み、さまざまな歓待を受けることに・・・。
しかし、ホセたちがそこで見たのは、セルジオが丸焼きにされそうになっているあっと驚くシーン。何とか逃げ出したものの、あまりの衝撃のため、大量の指輪が入った袋を置き忘れてきたから、さあ大変だ。これを取り戻すためには再びあの魔女の屋敷に戻らなければならないが、そんなことをしたらホセたちの命は・・・。
◆スペインでも離婚した妻には、元夫に対して手厚い権利が保証されていることが、ホセの別れた妻シルビアの姿を見ているとよくわかる。子供との面接交渉権を行使している最中に、父親が息子と共に強盗を働いたことをアルフォンソ・カルボ刑事(ペポン・ニエト)とハイメ・パチェコ刑事(セクン・デ・ラ・ロサ)から聞かされたシルビアがブチ切れたのは当然。直ちに、ある「武器」を使ってホセたちの後を追ったから、刑事たちがそれに続いたのも当然だ。
その結果、本作のハイライトはスガラムルディの魔女屋敷で先に捕まってしまったホセ、アントニオ、マヌエル、セルジオに、後から捕まってしまったカルボ刑事、パチェコ刑事、シルビアたちの処刑シーンとなる。さて、スガラムルディの魔女たちが次々と集まってくる集会所(?)では、どんな処刑の儀式が・・・?
◆クライマックスに向けてのストーリー展開で面白いのは、エバとホセの「恋模様」が何となくホンモノになってきつつあること。2人が交わしたキスによって、大きな動揺を受けたエバのその後の行動は・・・?
もう一つのクライマックスの見どころは、地中深くに眠る「偉大なる母」の登場だ。今年はハリウッド版と日本版両方の『ゴジラ』が大人気となった。そこに見るゴジラはそれなりに魅力的な造形だったが、本作に見る「偉大なる母」は醜悪そのもの。スペインの芸術は美しいものが多いはずなのに、この造形は一体ナニ?天才と狂気は紙一重。それをしっかり考えながら、「これぞ、B級映画!」と実感できる、この壮大なクライマックスを味わいたい。
2014(平成26)年12月18日記