劇場版 神戸在住(日本・2014年) |
<ホテル エルセラーン大阪>
2015年3月1日鑑賞
2015年3月6日記
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監督:白羽弥仁
原作:木村紺『神戸在住』(講談社刊)
辰木桂(東京から神戸に引っ越し、神戸の大学の美術科に通う大学生)/藤本泉
日和(ひなた)洋次(車椅子で左目が義眼のイラストレーター)/菅原永二
泉海洋子(桂の美術科の友人、姫路出身でモデル志望)/浦浜アリサ
鈴木タカ美(桂の美術科の友人、尼崎出身)/松永渚
金城和歌子(桂の美術科の友人、神戸市中央区出身)/柳田小百合
小西健(喫茶店「キネマ」のマスター、同性愛者)/松尾貴史
合田和名(日和の店のオーナー)/田中美里
早坂兵衛(聴覚障害をもつ日和の店のスタッフ)/仁科貴
辰木さなえ(桂の母)/愛華みれ
武内真弓(被災者)/竹下景子
2014年・日本映画・96分
配給/アイエス・フィールド
◆第10回おおさかシネマフェスティバル-映画ファンのための映画まつり-が、3月1日、ホテル エルセラーン大阪で開催された。私はここ数年、それに「ベストテン投票メンバー」として参加しているうえ、今年はホテル エルセラーン大阪らと共に「協賛」者として名前を連ねることになった。そのおおさかシネマフェスティバルで、「阪神・淡路大震災20年特別上映」作品に選ばれたのが本作。
本作は、兵庫県全域を放送対象地域とするサンテレビジョンが2014年に開局45周年を迎え、その記念行事として、また2015年1月17日が阪神・淡路大震災から20年目を迎えるにあたり同局が制作したテレビ放送版(2015年1月17日、単発の特別ドラマとして放送)の劇場版だ。
原作は日本漫画家協会賞新人賞を受賞した木村紺の同名コミックだそうだが、もちろん私はそれを全然知らなかった。本作が劇場で公開されていたのは知っていたが、観ていなかったので、これはいい機会と考えて鑑賞することに・・・。
◆「阪神・淡路大震災20年記念」という触れ込みだったため、本作はてっきりあの大震災と向き合う深刻な映画かと思っていたら、そうではなかった。本作は、父親の仕事の都合で東京から神戸に引っ越し、神戸の大学の美術科に入学したヒロイン、辰木桂(藤本泉)とその同級生3人の女の子を中心とする青春劇であり、桂の成長物語だ。
そういう場合、普通は恋愛が絡んでくるものだが、本作は20年前の大震災を体験したことのない18~19歳の世代の女の子が、美術を通じて(?)神戸のまちを巡る中で、否応なく大震災と向き合いながらそれぞれ成長していく姿を描いている。
◆とはいっても、内気で引っ込み思案の桂には、自分の人生の道しるべとなった、神戸在住のイラストレーター、日和(ひなた)洋次(菅原永二)と会えるのが最大の楽しみだったらしい。日和は車椅子で左目が義眼の男だが、彼の描いた絵に桂はゾッコン。そんな桂の話を聞いて日和の方も感動し、「長生きはできない」身体であることを知りながら、桂のためにもと考え、さらにボランティア活動に邁進していくことに。
そんな中盤の展開をみると、2人の恋が進展していくかなと思ってしまったが、現実は全く逆の展開に。なるほど、それもありだが、さてそんな状況にショックを受けた桂の立ち直りは・・・?
◆本作に登場する桂の美術学部の友人は、姫路出身でモデル志望の泉海洋子(浦浜アリサ)、ベレー帽がよく似合うが時々ヘマをしでかす、尼崎出身の鈴木タカ美(松永渚)、神戸市中央区出身で最初に桂の友人となる金城和歌子(柳田小百合)の3人。本作では、そのそれぞれのキャラにも注目したいが、一際目立っている背の高い美人が洋子。モデルになるため「ちょっとフランスへ・・・」と語っている姿を見ると、今ドキのカッコいいだけの軽薄なミーハー姐ちゃんのように思えたが、帰国後、彼女が3人に語る言葉やフランスでの行動力を見ていると、かなり、かなりのもの。桂は彼氏はできなかったものの、ホントにいい女の子の友人に恵まれたものだ。
◆上映終了後の白羽弥仁監督と主演女優・藤本泉との「対談」のインタビュアーとして登場したのが、おおさかシネマフェスティバルの特別顧問であり、その名司会ぶりが同フェスティバルの1つの売りとなっている浜村淳さん。藤本泉はその浜村さんから本作での演技を絶賛されたから、大いに自信になったはずだ。
『歓待』(10年)(『シネマルーム27』160頁参照)で第7回おおさかシネマフェスティバル(2012年)の新人女優賞を受賞した杉野希妃ほどのインパクトはないが、授賞式やその後のパーティの席で身近にその姿を見ると、たしかにすごい美人。『アオハライド』(14年)や『小川町セレナーデ』(14年)等の映画は全然観る気がしないが、今後の彼女の女優としての成長を見守りたい。
◆本作冒頭には、かつて「お嫁さんにしたい女優No.1」と呼ばれた美人女優・竹下景子が、大阪のおばちゃんよろしく被災者の武内真弓に扮して、ベンチに座る桂に対してたこ焼きやお茶を勧めるシーンが登場する。1人寂しそうに座っている桂を元気づけようと思って声をかけたのだが、このおばちゃんこそ20年間ずっとあの大震災の被害と向き合いながら生きてきたのだから、逆に声をかけて励ましてもらわなければならないのは、このおばちゃんの方だ。神戸に引っ越してきたばかりの桂にはそのことがわからなかったようだが、学校に通い、友達と交流し、日和との出会いと別れの中で少しは「人生の何たるか」を会得した(?)桂にとって、ラストシーンでのこのおばちゃんとの再会は大きく違ったものになっていたはずだ。
「神戸在住」の人たちにとっては少し懐かしく、少し悲しく、そして少し勇気の出る本作の上映終了後、会場には大きな拍手が・・・。
2015(平成27)年3月6日記