パレードへようこそ(イギリス・2014年) |
<シネ・リーブル梅田>
2015年5月2日鑑賞
2015年5月13日記
本文ははネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!ご注意ください!!
↓↓↓
監督:マシュー・ウォーチャス
クリフ(炭坑組合書記)/ビル・ナイ
へフィーナ・ヒードン(炭坑組合委員長)/イメルダ・スタウントン
ジョナサン・ブレーク(ゲイの俳優)/ドミニク・ウェスト
ゲシン(書店主、ジョナサンの恋人)/アンドリュー・スコット
ダイ・ドノヴァン(ディライス炭坑の代表)/パディ・コンシダイン
マーク・アシュトン(ロンドンでLGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)を結成するゲイの青年)/ベン・シュネッツァー
マイク(マークの友人)/ジョセフ・ギルガン
ジョー(LGSMに参加する青年)/ジョージ・マッケイ
レジー/クリス・オーバートン
ステフ(LGSMに参加するレズビアンの女性)/フェイ・マーセイ
ジェフ/フレディ・フォックス
シャン/ジェシカ・ガニング
レイ/ヨシュア・ヒル
モーリーン/リサ・パルフリー
2014年・イギリス映画・121分
配給/セテラ・インターナショナル
◆石炭から石油へのエネルギーの大転換。それは歴史的必然性を持つものだったが、同時に、そんな産業構造の大転換の中で、従来の花形産業であった炭鉱業とそこで働いていた炭坑労働者たちは悲惨な立場に置かれることに・・・。それは、かつて支配階級であった日本の武士が士族制度の廃止によっていとも簡単に失業し、没落していったのと同じだ。そして、今は原発の是非をめぐって原発産業が存亡の危機に陥っているが、さて50年後、100年後の歴史の審判は?
それはともかく、1979年5月から1990年11月までイギリスで長期政権を誇った、鉄の女マーガレット・サッチャー首相は、炭坑労働者のストライキに対して一歩も譲らない姿勢を示したから、労働者たちは大変。学生運動をしていた当時の私はこんな労働組合のストライキに好意的だったが、弁護士としての社会経験を積む中、どちらかというと、今の私はサッチャー支持の立場に・・・。
◆1984~85年にサッチャー政権による炭鉱切り捨て政策に反対する全国炭坑労働組合(NUM)が指揮する大規模なストライキが発生したのは仕方ない。これは、日本で1950~60年に発生した三井三池炭鉱で発生した労働争議と同じようなものだ。
『キリマンジャロの雪』(11年)は、フランスの港町マルセイユを舞台として、労働組合の委員長がリストラの指揮を執る苦悩を描いた興味深い映画だった(『シネマルーム29』10頁参照)が、本作のポイントは、1980年代のイギリスで起きた炭坑労働者の大規模なストライキを、同性愛者の団体であるLGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)が支援したこと。なぜ、同性愛者の団体がストライキの支援を?
本作冒頭に見る、ゲイの若者マーク・アシュトン(ベン・シュネッツァー)の呼びかけの趣旨は「彼らの敵はサッチャーと警官。つまり僕たちと同じだ。いいアイデアだろ?」というものだったが、その正当性は・・・?私には、その論理はわかったような、わからないような・・・?
◆ネット情報を調べると、川西正彦の公共政策研究による「1984~85年イギリス炭坑ストライキ敗北の歴史的意義(1)」が詳しく解説しており、それを勉強する限り、全国炭坑労働組合のストライキは完全敗北に終わったはずだ。炭坑労働者のストライキのニュースを聞いて、LGSMの立ち上げをゲイの仲間たちに呼びかけたのは前述のとおりマーク。参加を表明したのは、友人のマイク(ジョセフ・ギルガン)の他、俳優のジョナサン・ブレーク(ドミニク・ウェスト)、ただ1人のレズビアンの女性ステフ(フェイ・マーセイ)、そして両親に秘密ではじめて参加したジョー(ジョージ・マッケイ)たちの9名だった。
しかし、募金活動を始めたLGSMからの募金の受領を、多くの労働組合は拒否。募金なら何でもいいわけではなく、ゲイやレズからの募金を受け入れれば、労働組合自体の資質が疑われるというわけだ。
◆そんな状況下、ウェールズの奥地にあるディライス炭坑の労働組合だけはこれを受け入れたが、それはなぜ?ディライス炭坑を代表してマークたちに会うべくロンドンにやってきたのは、ダイ・ドノヴァン(パディ・コンシダイン)。ダイが「皆さんがくれたのはお金ではなく友情です」と熱く語ったスピーチによって、炭坑労働者とゲイたちとの連帯が生まれる様子は興味深い。その結果、マークたちはウェールズを訪ねることに。マークたちを歓迎したのは、炭坑組合の委員長の女性へフィーナ・ヒードン(イメルダ・スタウントン)や書記のクリフ(ビル・ナイ)たちだ。
本作中盤ではその交流のサマが描かれるが、本作が2014年の第67回カンヌ国際映画祭で上映されてクィア・パルム賞を受賞し、第72回ゴールデン・グローブ賞作品賞(ミュージカル・コメディ部門)等にノミネートされたのは、その点が興味深かったためだ。私はそれほど共感できなかったが、さてあなたは・・・?
◆今でこそゲイもレズも世間の認知が進み、「同性婚」を認める風潮も強まっている。しかし、1980年代のイギリスでは、まだまだそれはムリ。そんな中、ディライス炭坑のヘフィーナやクリフたちは、なぜかマーク、マイク、ステフたちLGSMの募金を受け入れ、共闘体制を組んだわけだが、応援してもらったら、そのお返しもしなくては・・・。
てなわけで、本作ラストには、マーク、マイク、ステフたちが参加するゲイの大集会に、何とダイ、ヘフィーナ、クリフたちを中心とする炭坑労働者の大規模な応援団が参加することに。これにてゲイの大集会は大成功となるわけだが、これもホントの話・・・?チラシには「笑いと涙が溢れる、知られざる感動の実話」と書いてあるから、きっとそうなのだろう。ちなみに、視点によっては深刻な社会問題になってしまう炭坑労働者のストライキ問題と、日陰の身であるゲイの若者たちの「決起」を本作がユーモラスかつ人間味豊かに結びつけた点は評価できるが、私にはどこか薄っぺらな感じも・・・。
2015(平成27)年5月13日記