だれも知らない建築のはなし(日本・2015年) |
<テアトル梅田>
2015年8月8日鑑賞
2015年月11日記
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監督:石山友美
安藤忠雄(建築家。東日本大震災復興構想会議議長代理)
磯崎新(国際的建築家として活躍する他、思想、美術、デザイン、文化論などで活躍)
伊東豊雄(建築家。2013年プリツカー賞を受賞)
レム・コールハース(オランダの建築家。2014年にヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合コミッショナーを務めた)
ピーター・アイゼンマン(アメリカの建築家。1980年代に「デコンストラクティビズム」を提唱)
チャールズ・ジェンクス(アメリカの建築家。「ポスト・モダン」という術語を建築の分野で初めて定義づけた)
中村敏男(1991年~99年までプリツカー賞の審査員を務めた編集者)
二川由夫(建築に関わる書籍、雑誌の編集者、写真家、評論家)
2015年・日本映画・73分
配給/P(h)ony Pictures
◆弁護士として1984年以降30年以上にわたって都市問題にライフワークとして取り組んでいる私としては、本作は必見!個人的にも建築には興味があり、『日経アーキテクチュア』という雑誌を定期購読していた時期もあったほどだ。また、①現在の事務所用の土地、建物の購入、②自宅用の土地、建物の購入、③収益物件としての土地、建物(マンション)の購入等を続けてきた私としても、本作は必見だ。
◆本作冒頭に登場する、建築家・安藤忠雄の名前は多くの日本人が知っているし、とりわけ関西人はよく知っている。しかし、彼と同世代の建築家である伊東豊雄や、安藤と伊東の師ともいうべき立場の建築家・磯崎新の名前とその活動を知っている人はあまりいないのでは?
また、私は全く知らなかったが、1982年にアメリカのシャーロッツビルで「P3会議」が開催された。これは当時、世界を代表する超一流建築家が一同に会し、建築の未来を議論する伝説的な国際会議となったが、そこに磯崎が安藤と伊東の若手建築家2人を連れて行ったらしい。この「P3会議」での出来事を中心として語られる、磯崎と安藤、伊東の3人の語りは、それぞれの特徴があって面白い。
◆他方、そもそも日本人の建築家という存在すらほとんど知らなかったのがヨーロッパの建築家たち。本作には①オランダの建築家で、2014年にヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合コミッショナーを務めたレム・コールハース、②アメリカの建築家で、1980年代に「デコンストラクティビズム」を提唱したピーター・アイゼンマン、そして③アメリカの建築家で、「ポスト・モダン」という術語を建築の分野ではじめて定義づけたチャールズ・ジェンクスが登場し、日本人建築家について、それぞれある意味で客観的に、ある意味で辛辣なコメントをしているので、それに注目。なるほど、なるほど・・・。
◆安藤忠雄が狭小住宅から建築家としてのキャリアをスタートさせたことはよく知られているし、彼の活動が個人プレイ的であることもよく知られている。それに対して、伊東豊雄の方は協調的(?)らしいが、そこらあたりの2人の対比も、なるほど、なるほど・・・。
そんな2人の対比や、建築に関する雑誌、書籍を通じて建築や建築家を分析していくのがプリツカー賞の審査員を務めた中村敏男と、建築に関わる書籍、雑誌の編集者、写真家、評論家である二川由夫の2人だ。この2人の話も、なるほど、なるほど・・・。
◆私は来る8月18日に、豊中市の豊中まちづくりフォーラムで「まちづくりの法と政策」と題する講演を行うが、そこでは都市問題についての「時代区分」を重視している。それと同じように、本作でも「第1章 70年代」、「第2章 日本のポストモダン建築」、「第4章 バブルが弾けて」等の「時代区分」を設けて、近代建築と建築家の姿を分析している。
2015年8月の今、来るべき2020年の東京五輪における、新国立競技場の建設費の問題がクローズアップされ、かつ大きく修正されたが、さてその行方は?オリンピックのための新競技場の建設費は、北京五輪(08年)で約540億円、ロンドン五輪(12年)で約610億円、リオデジャネイロ五輪(16年)では約550億円であるのに対し、2020年の東京五輪では3000億円近い大金を注ぎ込むことのバカバカしさは誰の目にも明らかだ。しかして、5年後の日本の建築と建築家の姿は・・・?
2015(平成27)年8月11日記