虹蛇と眠る女(オーストラリア、アイルランド・2015年) |
<シネ・リーブル梅田>
2016年3月9日鑑賞
2016年3月11日記
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監督:キム・ファラント
キャサリン(マシューの妻)/ニコール・キッドマン
マシュー(キャサリンの夫)/ジョセフ・ファインズ
レイ(ベテラン刑事)/ヒューゴ・ウィーヴィング
リリー(キャサリンとマシューの長女)/マディソン・ブラウン
トミー(キャサリンとマシューの長男、リリーの弟)/ニコラス・ハミルトン
2015年・オーストラリア、アイルランド映画・111分
配給/コムストック・グループ
◆ニコール・キッドマンはハリウッドを代表する美人女優だが、同時にオーストラリア出身で、オーストラリア国籍を持っていることは有名。彼女は『ムーラン・ルージュ』(01年)(『シネマルーム1』17頁参照)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、『めぐりあう時間たち』(02年)(『シネマルーム3』88頁参照)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したことで大女優になったが、私はトム・クルーズと共演した『遥かなる大地へ』(92年)以来のファン。とりわけ、『コールドマウンテン』(03年)(『シネマルーム4』139頁参照)、『ペーパーボーイ 真夏の引力』(12年)(『シネマルーム31』10頁参照)、『イノセント・ガーデン』(12年)(『シネマルーム30』131頁参照)、『レイルウェイ 運命の旅路』(13年)(『シネマルーム33』55頁参照)等が大好きだ。
本作は、2006年にオーストラリア国民にとって最高の栄誉である勲章「Companion of Order of Australia(AC)」を受勲した彼女が、25年ぶりに母国オーストラリアで主演を果たした映画。しかも、オーストラリアに今なお生き続けている「虹蛇信仰」をテーマにした映画ということで、彼女はとりわけ力が入っていたそうだが、さて作品の出来は・・・?
◆狭い日本と違って、オーストラリアはバカでかい国土を持っている。したがって、オーストラリアにはシドニーやメルボルン等の大都会もあれば、今なお大自然そのままの風景を残す地方もあるらしい。
キャサリン(ニコール・キッドマン)が夫のマシュー(ジョセフ・ファインズ)、長女のリリー(マディソン・ブラウン)、長男のトミー(ニコラス・ハミルトン)と共に引っ越してきたナスガリはオーストラリアの砂漠地帯にある小さな町で、リリーに言わせると「クソみたいな土地」らしい。もっとも、一家がそんなナスガリに引っ越してきたのは、映画冒頭の下着姿で家の中を歩き回るシーンからも、「こいつはヘン!」と思ってしまう思春期のリリーが、以前の地で担任教師と「関係」をもってしまったためというから、悪いのはリリー自身だ。リリーがそんな問題を抱えていれば、弟のトミーも「認知症」でもないのに、夜中に外を徘徊する変なクセを持っているから、両親は大変。また、キャサリンが夫に対して夜のセックスをねだっても、マシューは「疲れているから勘弁してくれ」と拒否しているから、2人の夫婦仲もかなり怪しそう。本作導入部ではこの家族を被うそんな不安の色がいっぱいに。
◆本作を鑑賞するについては「虹蛇伝説」を理解する必要があるが、ハッキリ言って日本人にはそれは難しい。オーストラリア国籍をもつニコール・キッドマンは「虹蛇伝説」を十分理解したうえで、それをスクリーン上に体現させているようだが、私にはそれが全然ピンとこない。
ある満月の夜、2人の子供たちが神隠しにあったように忽然と町から姿を消してしまったから大変!マシューとキャサリンからの必死の訴えを聞いて、ベテラン刑事のレイ(ヒューゴ・ウィーヴィング)は大規模な捜索活動に取り組んだが、手がかりは全くなし。そんな中、先住民族アボリジニの子供たちはキャサリンに対して「虹の蛇が二人を飲みこんだ。歌えば帰ってくる。」と謎の言葉を告げたが、それって何のこと?他方、レイの捜索方法に疑問を抱いたマシューがレイと正反対の方向を調べていくと、ついに意識を失って倒れているトミーを発見!しかし、リリーの方は・・・。
◆『キネマ旬報』3月下旬号の「REVIEW 鑑賞ガイド」では、本作について3人の評論家が2点、3点、4点をつけている。そして、2人が「ニコール・キッドマンを全裸で歩かせれば済むわけではないのだ」「街中で全身裸体になって歩き出す場面は、興行上のハッタリに見えた」と書いている。
全体を通じて、本作はよく言えば神秘的、悪く言えば不可解な映画だが、それをすべて超越し、観客を納得させるのが、ニコール・キッドマンの演技力と圧倒的な存在感、そして美しさのはずだ。そのニコール・キッドマンがあえて全裸で登場しても星2つ、3つしかつけられないとすれば、やはり本作の日本での公開は失敗と言わざるをえないだろう。
2016(平成28)年3月11日記