笑う大天使(ミカエル)(日本映画・2005年) |
<東映試写室>
2006年5月25日鑑賞
2006年5月25日記
小田一生監督が長編映画監督デビュー第1作に採用したのは、天才、川原泉の名作コミック。「猫かぶりお嬢様」と大阪弁丸出しの庶民派キャラを両立させた上野樹里のコミカルな演技には好感が持てるが、所詮は少女マンガ。したがって、私のようなオッサンにはお手上げ・・・?乙女チックな雰囲気と意外にハードなアクション(?)を楽しむことができればいいが、そうでなければ、ベッピン揃いのお嬢様方の観賞に専念するのも1つの手・・・?
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監督・VFX:小田一生
脚本:吉村元希、小田一生
原作:川原泉『笑う大天使』(白泉社刊)
司城史緒(ふみお)/上野樹里
斎木和音(かずね)/関めぐみ
更科柚子(ゆずこ)/平愛梨
司城一臣(かずおみ)(史緒の兄)/伊勢谷友介
桜井敦子(一臣の婚約者)/菊地凛子
若月俊介(和音の教育係)/松尾敏伸
史緒の母/手塚理美
シスター・マレーナ/デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ
ロレンス先生(クラス担任)/ブライアン・デイビス
アルバトロス・フィルム配給・2005年・日本映画・92分
<原作は?監督は?>
パンフレットによれば、この映画の原作は「その不思議なセリフまわしは哲学的ですらあり、作品に漂う教養の深さから、ファンの間で”カーラ教授”とも呼ばれている」川原泉の『笑う大天使(ミカエル)』とのこと。彼女の作品のほとんどが文庫化され、ロングセラーとなっているらしいが、当然の如く(?)、私は彼女の存在やその作品を全く知らない・・・。
他方、「VFX界最後の大物」と言われている小田一生監督は、大の川原泉マンガのファンであったこともあり、長編映画監督第1作の原作に『笑う大天使』を使うことを決意したとのこと。彼は、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年)の山崎貴監督、『ローレライ』(05年)の樋口真嗣監督らと同世代らしいが、失礼ながら、その作品の出来を比べてみると、かなり開きがあるのでは・・・?
<VFX技術の大盤振る舞いだが・・・>
この映画はVFX技術の大盤振る舞い。まず冒頭に、美しい湖の上に浮かぶ島に建てられている聖ミカエル学園の成り立ちが、壮大な(?)VFXで描かれる。巨大なドラゴンに襲われ、神の家に逃れてきた3人の少女を救ったのが、大天使ミカエル。そして、そんな大天使の白き翼のもとに創立されたのが聖ミカエル学園だから、校門に入るとすぐ大きな大天使の銅像が・・・。
さらに、長い橋を渡る列車に乗ってこの島に入っていく風景も、童話チックで乙女チックなVFX技術がふんだんに・・・。長崎のハウステンボスをロケ地として撮影したこの映画は、こんなVFXの大盤振る舞いだが、そんな映画のつくり方をあなたはどう思う・・・?
<もともと少女マンガは苦手・・・?>
私はマンガ自体は大好きだったが、男の子らしく(?)、スポーツモノや根性モノそして歴史モノその他、シリアスで劇画チックなものが好き。したがって、恋愛モノを中心とした少女マンガは苦手で、例外は『ベルサイユのばら』などごく一部だけ。
この映画はマンガを原作としているが、私の大好きな上野樹里が主演している映画だから当然アニメではなく、それなりのつくり方だろうと思っていたのだが、そんな予想に反して、映画はマンガそのものというイメージを強く打ち出したものに。したがって、私の好みにはどうも・・・?
<さすが聖ミカエル学園のお嬢サマは美女ばかり・・・>
この映画の出来は、お世辞にもいいとは言えないが、出演している女優陣=お嬢サマ方は美女ぞろい。主役は司城史緒を演ずる上野樹里だが、彼女は「猫かぶりお嬢サマ」と大阪弁丸出しの庶民派キャラをうまく両立させた熱演を・・・。そして、史緒の親友となる斎木和音(関めぐみ)と更科柚子(平愛梨)も、実はタネを明かせば、「猫かぶりお嬢サマ」。そして、ある時、ある出来事によって史緒、和音、柚子の3人が人間離れした超能力を備えることになると、この3人の「猫かぶりお嬢サマ」が、誘拐犯人のシスター・マレーナ(デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ)を追って大活躍。したがって、この際、ストーリーの出来ばえなどを云々せず、聖ミカエル学園の美女たちの活躍ぶりに絞って堪能するのも1つの手・・・?
<旧伯爵家の青年のキャラは・・・?>
華族制度の廃止によって、公爵や伯爵は日本に存在しないが、旧公爵家や旧伯爵家は今でも厳然と存在している。したがって、史緒の母(手塚理美)の突然の死亡に伴って、史緒が引き取られたのが17年間生き別れになっていた旧伯爵家の兄、一臣(伊勢谷友介)だったとしても、別に不思議ではない話。しかし問題はその実態で、果たして一臣に旧伯爵家の「お坊っちゃま」に値するだけの知性と教養があるのかどうかということ・・・。そんな視点で、彼が史緒に接する態度や、婚約者の桜井敦子(菊地凛子)とのデートで示す様子を見ていると、それはかなりハラハラドキドキもの・・・?もっとも、最後に明かされるアッと驚く彼の職業は・・・?
<子供の頃読んだ『ガリバー旅行記』を彷彿・・・>
子供の頃読んだ絵本や冒険マンガ(?)はたくさんあるが、『ガリバー旅行記』の中で展開される、巨人の国の物語と小人の国の物語は、現実にはありえない話ながら、子供心に強く印象に残っているもの。そんな小人の国で見たようなシーンがこの映画でも・・・。
パンフレットによれば、脚本づくりの決定稿になったのは「巨大化」と小田一生監督は語っているが、その程度の発見をしたことで脚本を練っていた相棒である吉村元希に深夜電話したというのは、少し大げさすぎるのでは・・・?さて、そんな『ガリバー旅行記』の絵本で見たようなシーンを彷彿させる「巨大化」とは・・・?
<アクションシーンは本格的・・・?>
また、パンフレットにある小田一生監督のインタビューには、「アクションシーンがかなり本格的で驚きました」というゴマスリ的な質問(?)があり、それに対して小田一生監督がいろいろと得意気に答え、最後には「想像以上のいいシーンになりました」とまとめているが、さて、ホントにこの映画のアクションシーンは本格的・・・?タランティーノ監督の『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』(03年)における、ゴーゴー夕張のキャラと彼女の闘いぶりはかなりユニークだったうえ、このゴーゴー夕張とザ・ブライドとの対決シーンのアクションはホントに本格的で、手に汗を握るものだった・・・?それに比べれば、史緒とシスター・マレーナとの対決アクションは、所詮マンガのレベル・・・?
2006(平成18)年5月25日記