ジュリエッタ(スペイン映画・2016年) |
<シネ・リーブル梅田>
2016年11月19日鑑賞
2016年11月24日記
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監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
現在のジュリエッタ/エマ・スアレス
若い頃のジュリエッタ(古典の臨時教師)/アドリアーナ・ウガルテ
ショアン(ジュリエッタの恋人、ガリシアの漁師)/ダニエル・グラオ
アバ(芸術家、ショアンの女友達)/インマ・クエスタ
ロレンソ(現在のジュリエッタの恋人)/ダリオ・グランディネッティ
ベア(アンティアの親友、現在モード雑誌の編集者)/ミシェル・ジェネール
若い頃のベア/サラ・ヒメネス
サラ(ジュリエッタの母)/スシ・サンチェス
マリアン(家政婦)/ロッシ・デ・パルマ
ジュリエッタの父/ホアキン・ノタリオ
アンティア(ジュリエッタとショアンのあいだの娘)/プリスシリャ・デルガド
成人したアンティア/ブランカ・パレス
2016年・スペイン映画・99分
配給/ブロードメディア・スタジオ
◆スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督は、「女性賛歌3部作」と呼ばれる『オール・アバウト・マイ・マザー』(99年)、『トーク・トゥ・ハー』(02年)、『ボルベール<帰郷>』(06年)でわかるように、「母と娘のドラマ」を描くのを得意としている。私はそのうち『トーク・トゥ・ハー』と『ボルベール<帰郷>』を観たが、『トーク・トゥ・ハー』はハッキリ言って難しかった(『シネマルーム3』208頁参照)し、『ボルベール<帰郷>』ではペネロペ・クルスに注目したが、「母と娘の再会」に至るストーリーも難解だった(『シネマルーム13』198頁参照)。しかして、ペドロ・アルモドバル監督の本作のテーマは、「母と娘の確執」だ。
本作冒頭、現在のジュリエッタ(エマ・スアレス)は偶然街で再会した娘の親友のベア(ミシェル・ジェネール)から、「イタリアのコモ湖であなたの娘を見かけたわ」と告げられたことによって、母と娘の数奇な物語が進んでいくことに・・・。
◆今や日本でもシングルマザーは特異なことではなくなったが、ヨーロッパでは右を見ても左を見ても、そんな女性がいっぱい・・・?もっとも、ジュリエッタが今から30年前、古典の臨時教師をしていた頃、夜行列車で出会った男ショアン(ダニエル・グラオ)との行きずりの恋(?)による情熱的な一夜によって生まれた娘アンティア(プリスシリャ・デルガド)は、18歳になった12年前に失踪してしまったから、ジュリエッタは今はマドリードで一人暮らしをしていた。そんなジュリエッタは、身近に存在する恋人ロレンソ(ダリオ・グランディネッティ)から一緒にポルトガルで住もうとの提案を受け入れて引っ越しの準備をしていたが、ベアの話しを聞くと急に態度を変え、かつてアンティアと一緒に暮らしていたマドリードの別の地区にあるアパートに入居することに。そんな態度の急変にロレンソはビックリだが、ペドロ・アルモドバル監督が描く女性はみんな意思が強い。ロレンソに対して「私の意思を尊重して」と言い残して新しいアパートに入ったジュリエッタは、そこで一人娘アンティアに宛てた手紙を書き始めたが・・・。
◆本作で現在のジュリエッタを演じたエマ・スアレスも若き日のジュリエッタを演じたアドリアーナ・ウガルテも私は全く知らない女優だが、ペドロ・アルモドバル監督が起用する女優は押しなべて魅力的で奥行が深い。本作には、若き日のジュリエッタの恋人である漁師のショアンと現在のジュリエッタの恋人であるロレンソが登場するが、ペドロ・アルモドバル監督作品では男は存在感が薄いのが特徴だ。
それに対し、本作では2人のジュリエッタだけではなく、ショアンの女友達で芸術家のアバ(インマ・クエスタ)やショアンの家の頑固な家政婦マリアン(ロッシ・デ・パルマ)はもちろん、嵐にもかかわらず漁に出て父親のショアンが死亡したことについて母親に疑惑の目を向ける少女時代のアンティアや、18歳になって瞑想をするためピレーネに旅立ったまま失踪してしまうアンティア等、とにかく女性陣の「活躍」が目立つ。彼女たちが対峙する各シーンではメラメラと火花が散っているが、それは女性特有のもので男にはわかりにくいものが多いので、男性客はご用心を。そういう意味では、本作の鑑賞は男にはちょっと苦痛かも・・・?
◆本作は現在、過去、現在の「3部構成」にされているが、せっかく失踪した娘の存在を忘れようと努め、恋人ロレンソとの新生活に切り替えようとしていたのに、ベアからもたらされた情報によってジュリエッタにはまざまざとアンティアの記憶が蘇ってくることに・・・。そんな娘アンティアに対して今ジュリエッタが長い長い手紙を書くことに何の意味があるのかわからないが、とにかく本作はそんな構成で展開していく。しかし、ある日ジュリエッタの下に1通の封書が届くと・・・。
本作のパンフレットにはクソ難しい(?)コラムが4本収録されているうえ、ペドロ・アルモドバル監督のインタビューとプロダクションノートでもクソ難しい背景事情(?)が詳しく書かれているから、興味のある人は是非それを参照されたい。
2016(平成28)年11月24日記