幸せのポートレート(アメリカ映画・2005年) |
<東宝試写室>
2006年6月8日鑑賞
2006年6月9日記
キャリアウーマンだって、いやそうだからこそ「理想の結婚」を夢見るもの・・・?しかし、理想の恋人の実家に招かれながら、彼女はそこでは居心地が悪く、彼のファミリーたちとの間には大きな違和感が。これは一体何・・・?「頑張った生き方」VS「自然な生き方」の対比が、家族との対話やさまざまなハプニングの中で抽出されていく。そして彼や彼女たちが最後に選んだ結論は全く意外なもの・・・?世間体や既成観念にとらわれない生き方の実践は、やはりアメリカ人が一番手・・・?
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監督・脚本:トーマス・ベズーチャ
エヴェレット・ストーン(メレディスの恋人、ストーン家の長男)/ダーモット・マローニー
メレディス・モートン(エヴェレットの恋人)/サラ・ジェシカ・パーカー
ジュリー・モートン(メレディスの妹)/クレア・デインズ
スザンナ・ストーン・トルースデール(ストーン家の長女)/エリザベス・リーサー
エリザベス・トルースデール(スザンナの娘)/サバンナ・ステリン
ベン・ストーン(ストーン家の次男)/ルーク・ウィルソン
エイミー・ストーン(ストーン家の次女)/レイチェル・マクアダムス
サッド・ストーン(ストーン家の三男)/タイ・ジョルダーノ
パトリック・トーマス(サッドの恋人)/ブライアン・ホワイト
ケリー・ストーン(エヴェレットの父)/クレイグ・T・ネルソン
シビル・ストーン(エヴェレットの母)/ダイアン・キートン
20世紀フォックス映画配給・2005年・アメリカ映画・103分
<キャリア・ウーマンの理想の結婚とは・・・?>
「幸せのポートレート(肖像)」の中心人物は、ニューヨーク・マンハッタンで働くキャリア・ウーマンのメレディス・モートン(サラ・ジェシカ・パーカー)。今日はデパートにクリスマスプレゼントの買い物に来ているが、メレディスはそんな時でもケイタイを手放すことができず、歩きながら商談・・・?そんなメレディスを暖かく見守っているのが、理想的な恋人のエヴェレット・ストーン(ダーモット・マローニー)。両親やクリスマス休暇で実家に帰ってくるストーン家の人たちに、メレディスを紹介することになったため、今日はメレディスと一緒にお買い物というわけだ。
メレディスがどんな仕事をしているのか具体的にはわからないし、年齢も不詳のままだが、その推定年齢は30代後半・・・?と思いながらパンフレットを読むと、メレディスを演ずるサラ・ジェシカ・パーカーは、1965年生まれだから40歳を超えており、少しビックリ。やはりアメリカでは、第一線のキャリア・ウーマンの結婚適齢期はかなり遅めになるということか・・・?
ちなみに、恋人のエヴェレットを演ずるダーモット・マローニーも、1963年生まれだからバランスはとれているが、もはや中年といってもいいような年。この年まで独身でいたのは、一体ナゼ・・・?いずれにしても、キャリア・ウーマンだって、いやキャリア・ウーマンだからこそ、理想の結婚を望むのだろうが、理想の結婚はかなり難しいということ・・・?
<ストーン家の面々は・・・?>
大学教授の父ケリー(クレイグ・T・ネルソン)と、家族のまとめ役として大きな存在感のある母シビル(ダイアン・キートン)との間には5人の子供があり、エヴェレットはその長男。便宜上、ここでその家族を紹介しておこう。まず、長女スザンナ(エリザベス・リーサー)は既に嫁ぎ、一人娘のエリザベス(サバンナ・ステリン)がいる。次男のベン(ルーク・ウィルソン)は映画関係の仕事をしているが、そんな仕事にふさわしい「自由人」で、生真面目な長男のエヴェレットとは大違い・・・?そして、メレディスとソリが合わないのが、次女のエイミー(レイチェル・マクアダムス)。実家を訪れたメレディスが、結婚前だからと言って、エヴェレットの部屋で寝ることを拒否したため、自分の部屋を明け渡さなければならない羽目になり、それだけでプンプン・・・。風変わりなのが三男のサッド(タイ・ジョルダーノ)で、彼は聾者そしてゲイ。そのため、恋人で黒人のパトリック・トーマス(ブライアン・ホワイト)といつも一緒。こんな一風変わったストーン家の面々に、お堅いキャリア・ウーマンのメレディスはうまく溶け込むことができるのだろうか・・・?
<メレディスのピンチと妹の登場、だが・・・?>
ストーン家を訪れたメレディスに対して、露骨に反感を示すのがエイミーなら、母親のシビルも「メレディスは息子にふさわしい嫁ではない」と直感した様子。そのため、シビルが祖母から受け継いでいた指輪を、エヴェレットがメレディスに贈ることを拒否。これによって、エヴェレットとシビルの間も少し険悪になってくるが、シビルにはそんな中、少し悲しげな表情が・・・。
他方、自分がストーン家の家族から嫌われていると感じ、いたたまれなくなったメレディスは、翌朝ホテルの部屋を取るとともに、妹のジュリー(クレア・デインズ)を応援のため(?)呼び寄せることに・・・。ジュリーは財団でアーティストへの助成金審査の仕事をしているが、迎えにきたエヴェレットとベンの前で、バスを降りる時に転んだのが良かったよう・・・?姉がA型で何事もキッチリしなければ納得しない性格であるのに対し、妹は融通がきく性格・・・。ストーン家に到着するなり、「あなたが意地悪なエイミーね」と話しかけて、うまく家族の中に溶け込んでいった。しかし、それによって話はドンドンややこしい方向に・・・?
<ゲイは「障害」?それとも「利き手」のようなもの・・・?>
圧巻は、メレディスとジュリーを含めたストーン家の食事風景。これだけの大家族が1つのテーブルに集まり、和気あいあいと会話しながら食事をするためには、話題の選定やしゃべり方について一定のルールが必要。すなわち、1つの意見を強く主張したり、議論のための議論になったりしてはダメ。あくまで食事を楽しむことがメインで、会話はそれを助けるための道具。
ところが、何ゴトも生真面目に考え、正論を真正面から展開しようとするメレディスは、「マリファナ論」や「ゲイ論」になると、ムキになって持論を展開。すなわち、右利きと左利きがあるように、ゲイは利き手と同じようなものと軽く話題にする父親のケリーに対して、メレディスは猛然と反論し、「ゲイは明らかに障害だ」と論じ立てた。そのテーブルには、ゲイの自由を立派に認められたサッドがいるにもかかわらず・・・。
もちろん、エヴェレットはメレディスのこの猪突猛進を制止しようとしたが、いったん論じ始めたら止まらないのがメレディス・・・?その結果、一家そろっての楽しい食事は台無しに・・・。政治的・社会的なテーマや宗教的なテーマ、そして価値観の相違がはっきりと浮かび上がる話題を取りあげるについては、一定の配慮が必要なことは当然。自分の無神経さに気づき、落ち込んでしまったメレディスは、1人車に乗って家を飛び出そうとしたが・・・。
<「頑張った生き方」VS「自然な生き方」>
そんなメレディスの後を追い、車を運転してやったのが弟のベン。気分転換のためにバーに入ったのだが、そこでメレディスはビールをラッパ飲みしながら、相当暴れ回った。ここでの面白い会話は、メレディスが「私だって必死で頑張っているのに・・・」と主張するのに対して、ベンが「頑張る必要はない。自然に振る舞い、自然に生きればいいんだ」と説得するシーン。メレディスはバリバリのキャリア・ウーマンの1つの典型的なタイプだが、多分生まれてこの方、他人からこのような指摘をされたことがないはず。なぜなら、この手の女は表面上は自信タップリで、他人には全然弱みを見せないから、そんな親身になったアドバイスを受けることもないのがふつう・・・。
この言葉を、相当酔っぱらったメレディスがどこまで受け入れたのかは知らないが、泥酔状態となったメレディスが翌朝目を覚ますと、そこは何とベンの部屋のベッドの上・・・?隣にはベンは寝ていないものの、「これはヤバイ」と思ったところへ、間の悪いことに、父親のケリーがベンを呼びに来てドアを開けたから、さあ大変・・・。
<「自分に正直に」とは・・・?>
他方、飛び出していったメレディスを探しに出ようとするエヴェレットに、「私もついていく」と言ったのは妹のジュリー。2人はホテルを中心に散々メレディスを探したが見つからず、やむなく家に戻ったが、2人で共同作業(?)を進めていく中、エヴェレットは次第にジュリーに魅かれていく自分に気づきはじめていた・・・。そして、男女の呼吸は微妙なもので、そんなエヴェレットの思いは、自然にジュリーの心にも・・・?
そして翌朝、心を入れ替えて(?)、息子に祖母から受け継いだ指輪を渡したシビルの目の前で、何とエヴェレットはその指輪をジュリーの指にはめてみようと提案。一体これは何を意味するの・・・?「自分に正直に」「他人の期待や認識によって自分を決めないように」という価値観はいいことだが、ひょっとして・・・?
<いかにもアメリカ的な『THE FAMILY STONE』>
この映画はメレディスとエヴェレットとの結婚の行方をネタとして、ストーン一家の温かみや絆の強さを描くものだが、ストーン一家のスタイルはいかにもアメリカ的・・・?父親のケリーは一家の長たることをよく自覚しているうえ、家族を心から愛していることがよくわかる。また、母親のシビルは重い病気を抱えているが、それを吹き飛ばすだけの元気さを備え、常に大家族のまとめ役を果たしている肝っ玉母さん。大きな家には、家族団欒用のリビングルームと、プライバシーを尊重した各自の部屋があり、その団欒とプライベートの仕分けも、さすがアメリカと感心させられるもの。
そんな中に、1人異質のメレディスが乗り込んでいったのだから、大きな混乱が生じたのはやむをえないが、さまざまなドタバタ劇をくり返しながら、結局は最も理想的な結末へ。その結末とは、多分皆さんも予想されていると思われるので、ここでは書かないが、アメリカ版の愛と家族についての物語は、ちょっとした笑いと涙、そして感動の中、大団円へ・・・。いかにもアメリカ的な大家族に拍手・・・。
2006(平成18)年6月9日記