ミュージアム(日本映画・2016年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2016年12月4日鑑賞
2016年12月7日記
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監督:大友啓史
脚本:高橋泉、藤井清美
原作:巴亮介『ミュージアム』(講談社『ヤングマガジン』刊)
沢村久志(警視庁捜査一課一係巡査部長)/小栗旬
沢村遥(沢村の妻)/尾野真千子
西野純一(警視庁捜査一課一係警部補、新米刑事)/野村周平
菅原剛(警視庁捜査一課一係警部補)/丸山智己
秋山佳代(介護施設で働く沢村遥の親友)/田畑智子
橘幹絵(慈光大学医療研究センターの女医)/市川実日子
岡部利夫(警視庁捜査一課課長、警視正)/伊武雅刀
関端浩三(警視庁捜査一課一係警部)/松重豊
沢村久志の父(元刑事)/大森南朋
沢村将太(沢村の息子)/五十嵐陽向
カエル男(霧島早苗)(殺人鬼)/妻夫木聡
2016年・日本映画・132分
配給/ワーナー・ブラザース映画
◆予告編やチラシで「カエル男」の気味悪い姿を見て「この映画はパス」と思っていたが、『シークレット・オブ・モンスター』(15年)を鑑賞する時間の関係で、付録的に本作も鑑賞することに。
本作は、沢村久志刑事(小栗旬)と、その相棒ながら猟奇殺人事件の現場では吐き気が収まらない新米刑事の西野純一(野村周平)が、①「ドッグフードの刑」の現場に急行するシーンから始まる。それだけでも十分気持ちが悪いが、本作はそれに続いて②「母の痛みを知りましょうの刑」③「均等の愛の刑」④「ずっと美しくの刑」⑤「針千本飲ますの刑」を次々と見せていく。私も昔はこの手の猟奇殺人モノは結構好きだったが、最近はどうも・・・。
◆同様の手口による連続殺人事件の捜査では、何よりも被害者の共通点を見つけることが大切。しかして第1、第2の殺人事件の捜査で明らかになった共通点は、被害者は2人とも「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判員をつとめていたこと。それがわかれば、まだ被害に遭っていない裁判官を含む幼女樹脂詰め殺人事件の裁判員の保護が不可欠だが、既に第3、第4、第5の事件が発生。これらの被害者もすべて幼女樹脂詰め殺人事件の裁判員だったから、残りの裁判員の保護が緊急のテーマとなった。
そこで俄然本作のテーマとして浮上してくるのが、沢村刑事の妻・遥(尾野真千子)も幼女樹脂詰め殺人事件の裁判員として死刑判決を下していたことだ。これはきっとあの幼女樹脂詰め殺人事件で死刑判決を下した裁判員に対する死刑囚の関係者(身内)による復讐劇。警視庁捜査一課一係警部の関端浩三(松重豊)をはじめとする捜査陣は、誰もがそう判断したが・・・。
◆本作のタイトルは『ミュージアム』だが、これは本作冒頭から次々と続いていく猟奇殺人事件と全然結びつかないタイトルだ。本作後半からは、沢村刑事が必死になって妻・遥と一人息子・将太(五十嵐陽向)の行方を追う展開になっていく。しかし、カエル男が挑発するかのように沢村と西野の前に姿を見せて「おめでとう西野くん、二階級特進だ」とほざきつつ西野を殺してしまう際に、「幼女樹脂詰め殺人事件は自分がやった犯行なのに、えん罪で別の人間が死刑になった。これは樹脂詰め殺人という芸術作品を他人に奪われたということ。だからその時の裁判員と裁判官を殺す。僕は表現者だ!」とシャーシャーと今回の猟奇殺人事件の動機をしゃべることによって、本作が『ミュージアム』と題されていることの意味がわかってくる。なるほど、そういうことか・・・。
そしてそれがわかると同時に、本作の原作が2013年ヤングマガジン第35号から連載されていたサスペンスホラー『ミュージアム』だということにも納得。なるほど最近の若者はこういうストーリー、こういう劇場型の犯罪が大好きなのか・・・。
◆カエル男の犯罪は、いつも雨の日。それは犯行を目立たせないための工夫と考えられていたが、実はそうではなく、カエル男は太陽が苦手!それは、沢村がカエル男と対峙した時、太陽が出始めると日差しを気にし始め、さかんに首のあたりを掻きむしっていたことを思い出せば明らかだ。そんな太陽アレルギーは、ひょっとして何らかの病気?ちなみにニコール・キッドマンが主演した『アザーズ』(01年)もその3人の子供たちが太陽光アレルギーという設定だった(『シネマルーム2』230頁参照)が・・・。
既に沢村は私情を挟んだ勝手な行動を上層部からとがめられて捜査陣から外されていたが、それでもなお妻子を必死で捜す沢村は日光アレルギーについて調べ始め、いくつかの病院を回った後、ついに慈光大学医療研究センターの女医・橘幹絵(市川実日子)に行きつくことに。
◆本作はカエル男と沢村、西野との追跡劇やカーチェイスにおける沢村の格闘能力や運転レベルの低さが目立つ(?)が、ここで「正式な令状がないと捜査には協力できない」と突っぱねる幹絵に対して、「これが令状だ!」と沢村が拳銃を突きつける姿もあまりに低レベル。『ダーティーハリー』(71年)のクリント・イーストウッド扮するハリー・キャラハン刑事でもこんなバカな捜査はしないはずだ。もっとも、それでも沢村は幹絵から光線過敏症の患者・霧島早苗のカルテを入手することに成功するからアレレ・・・。
マンガの原作ならまだしも、映画でこんなバカげた捜査ぶりを堂々と描くのはNGだと私は思うのだが・・・。
◆それはともかく、本作ラストの舞台はカエル男こと霧島早苗が住む広大なお屋敷になる。国土の広いアメリカならいざ知らず、東京近郊で今時こんな不気味な広いお屋敷が存在するはずがないことは横に置いても、一人でそこに潜入したもののあっさり捕まってしまう沢村の姿を見ていると、その捜査能力の低さにうんざり。
監禁された部屋の中には1000ピースのパズルがあり、それをカエル男からの挑戦と理解した沢村は、毎日差し入れられるハンバーガーを食べながらその作業に没頭。そしてパズルが完成すると、そこには「EAT」の3文字が浮かび上がり、それをパスワード入力するとドアが開いてキッチンに出たが、何とそこにあった冷蔵庫の中には遥と将太の生首が!
本作のこんな展開を見ているとミンチ肉を食べるのが恐くなり、それを主成分としたハンバーガーが気持ち悪くなってくるが、さてこんなストーリー展開の結末は・・・?
◆沢村の猪突猛進ぶりと彼の捜査能力、格闘能力、運動能力等の低さが本作の特徴の1つ。それに対して、上司たる関端はさすがに冷静に事態を分析しており、沢村の跡をつければ犯人にたどりつくと考え、今やっとカエル男のお屋敷に捜査陣を集結させていた。
本作ではカエル男が沢村を殺す機会は何度もあるし、いつも圧倒的にカエル男が沢村より優位に立っている。お屋敷内でも一方的にカエル男が沢村を監禁しているのだから、カエル男には何の危険もないはずだ。ところが本作のクライマックスでは、なぜか沢村が拳銃を持ってカエル男を追いかける展開になるからアレレ・・・。
その挙句に、いかにも『ミュージアム』というタイトルに合わせるかのように、カエル男が「奥さんを撃てば子供は助ける」と迫り、無事に生きていた遥も「私を撃って、将太を助けて」と迫るシークエンスが登場するが、これも劇場型の受けを狙ったストーリー展開と言わざるをえない。そんなところに大量の捜査陣が突入してきたから、こうなればカエル男の逮捕は時間の問題となり、意外にあっさりカエル男は逮捕されてしまうことに・・・。しかし、このあっけなさは一体ナニ?
◆そんな大捕物のクライマックスと平行して、関端の捜査では橘幹絵と霧島早苗が姉弟の関係であったことが判明。幹絵は医師としてだけではなく姉としてもカエル男こと霧島の光線過敏症の治療を続けていたわけだ。すると、なおさらあの時沢村の違法捜査に応じて幹絵がカルテを提出したのはいかがなもの・・・。それはともかく、本作ラストでは幹絵が顔中に包帯を巻かれ病院のベッドで絶対安静にしている霧島に対してちょっと考えられない「ある行為」を仕掛けるのでそれにも注目!
また、前半では全くその顔を見せないカエル男も後半からはその姿を見せてくれるが、このカエル男を演じている俳優は一体ダレ・・・?
さらに、仕事中毒で遥から「あなたは刑事としては優秀でも父親としては失格だ」と宣言されていた沢村が、カエル男の逮捕後は見事に良きパパに変身。その象徴が運動会でのビデオ撮影だが、そこでは「あいつ足速いんだな」と感心するハッピーなシークエンスの他、将太が太陽の日差しを気にしながら、首のあたりを掻きむしるシーンが・・・。こりゃ一体ナニ?今時のマンガ好きの若者は、こんなハチャメチャな展開が好きなの・・・?
2016(平成28)年12月7日記