世界は今日から君のもの(日本映画・2017年) |
<テアトル梅田>
2017(平成29)年7月29日鑑賞
2017(平成29)年8月1日記
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監督・脚本:尾崎将也
小沼真実(引きこもり、フリーター)/門脇麦
矢部遼太郎(ゲーム会社制作部のディレクター)/三浦貴大
安藤恵利香(矢部の昔の恋人)/比留川游
小沼英輔(真実の父親)/マキタスポーツ
小沼美佳(真実の母親)/YOU
矢部の会社の専属イラストレーター/安井順平
真実の同級生のニート男/岡本拓朗
ニート克服の講座を開く男/駒木根隆介
2017年・日本映画・106分
配給/アークエンタテインメント
■□■ショートコメント■□■
◆引きこもり、ニート、フリーター。本来これらの言葉には「良くないもの」「不十分なもの」というイメージが含まれていたはずだが、すべてに「優しく」なった今では、そういうイメージは完全になくなっている。もしくは、含めてはダメらしい。それは、昔は否定的だった「同性愛」についても、今やLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)という立派な言葉が生まれ、「市民権」はもちろん、法的権利までしっかり確保されているのと同じた。
アルバイトの仕事に精を出す真実(門脇麦)。1人で昼食のパンを食べる真実。海の中を泳ぐくらげを追っているうち、誤って海の中に落ちてしまう真実。本作冒頭のそんなシーンを見ているだけでは真実が、引きこもりとニートを卒業して、今はフリーターとして働けるまでに成長していることを読み解くことはできないが、その後の展開を見ていると、真実が普通のOLとは全然違う「人種」であることがよくわかる。
本作はそんな主人公=ヒロインの世界観を描き、ラストには「世界は今日から君のもの」になる映画!なるほど、なるほど・・・。
◆門脇麦は、『愛の渦』(14年)での大胆なセックスシーンととてつもないあえぎ声で注目された女優(『シネマルーム32』未掲載)だが、その後、『太陽』(16年)(『シネマルーム38』184頁参照)、『二重生活』(15年)(『シネマルーム38』99頁参照)等の主演で、私も注目する女優に成長した。そんな門脇麦が、本作ではラスト1分間を除き徹頭徹尾、高校時代から引きこもり生活5年、現在も社会への対応能力ほとんどゼロという真実役を持ち前の演技力で演じている。何故真実が引きこもりになったのかについて、本作では何も描かれていないが、父親英輔(マキタスポーツ)と母親美佳(YOU)の離婚や、娘の個性を全然認めない母親の育て方がその一因かも・・・?
本作は、監督2作目となる尾崎将也が門脇麦の個性的なオーラに一目惚れして、当て書きをする形でオリジナル脚本を書いたそうだが、本作のストーリー構成ははっきり言ってかなりいい加減・・・?
◆本作のストーリーは、ゲーム会社の制作部でディレクターをしている矢部遼太郎(三浦貴大)が、新作ゲームのキャラクター修正で苦労しているところから展開していく。その修正を専属のイラストレーター(安井順平)に断られた矢部は首つり自殺まで考えたそうだが、誰かのメールから届いた修正イラストによって大助かり。これこそ、昼食のパンを食べてる最中に、矢部の電話を偶然聞いた真実の手によるものだった。
しかし、真実は何故そんなことができたの?引きこもり、ニートの真実に何故イラストレーターとしての才能、能力が備わっていたの?それが本作のポイントになるので、そのストーリー展開に注目!
◆美佳との離婚後、真実と2人暮らしをしている父親の英輔や、真実のイラストレーターとしての才能を見抜く矢部のキャラは比較的まともで説得力がある。しかし、真実の同級生のニート男(岡本拓朗)や、矢部の元恋人でひょんなきっかけから真実を同居させることになるハデ目の(?)女性・安藤恵利香(比留川游)のキャラはかなり不自然だ。さらに、酒に酔った恵利香を家まで送り、そこで「いい目」をしようと狙ったところ、恵利香が真実と同居していたことがわかると今度は獲物を真実に切り替えようとする男(駒木根隆介)もかなり不自然だ。さらに、次のシーンではこの男が引きこもり克服の市民講座を開催していたり、そこに真実を招いたりするから、本作のストーリーはかなりだっせん混線気味と言わざるをえない。
もっとも、それでも本作が言いたいことは十分伝わってくるが・・・。
◆真実のイラストレーターとしての才能、能力は本物?それとも、ちょっとした真似ごとに過ぎないの?本来そこらあたりに本作のストーリーの核心があるはずだが、本作ではなかなかそれがわからない。矢部から、仕事だ、締め切りだとプレッシャーをかけられるとなかなか描けなくなるというのもわからないではないが、それでは矢部が困るのは当然。また、自由に描いていいと言われて描けないのでは、どうしようもない。ところが、いつの間にか恵利香の部屋に居候を決め決め込んだ真実が、ある日何のプレッシャーもない状態で描いてみると・・・。
ここらあたりの展開が私にはさっぱりわからないから、私には本作の展開はイマイチ。さらに本作では、最後の1分間だけ、突如真実がそれまでとは全然違う明るい顔になって、パソコンに向かいイラストを描くシーンが登場する。さらにそこでは、矢部と恵利香がよりを戻しているシーンも・・・。しかし、こりゃ一体何故?もちろん、こうなれば「世界は今日から君のもの」というタイトルがぴったりだが、何故そうなったのかが私にはさっぱりわからないから、結局本作の出来はイマイチ!
2017(平成29)年8月1日記