復讐するは我にあり(日本映画・1979年) |
<シネ・ヌーヴォ>
2017(平成29)年9月18日鑑賞
2017(平成29)年9月22日記
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監督:今村昌平
原作:佐木隆三『復讐するは我にあり』(講談社刊)
榎津巌(殺人鬼)/緒形拳
榎津鎮雄(巌の父)/三國連太郎
榎津かよ(巌の母)/ミヤコ蝶々
榎津加津子(巌の妻)/倍賞美津子
浅野ハル(貸席「あさの」の女将)/小川真由美
浅野ひさ乃(ハルの母)/清川虹子
柴田種次郎/殿山泰司
馬場大八/垂水悟郎
畑千代子/絵沢萌子
吉里幸子/白川和子
河井警部/フランキー堺
吉野調査官/浜田寅彦
桑田警部補/園田裕久
市川刑事/浜田晃
口石刑事/辻萬長
ハルの旦那/北村和夫
ハルの麻雀友達/火野正平
ステッキガール/根岸とし江
「あさの」の客/佐木隆三
質屋の主人/河原崎長一郎
駅の助役/金内喜久夫
海軍主計中尉/小野進也
巌の少年時代/佐野大輔
被告の母/菅井きん
保護司/阿部寿美子
裁判長/石堂淑郎
河島弁護士/加藤嘉
警官/梅津栄
農婦/中村美代子、牧よし子
タクシー運転手/法月一生
1979年・日本映画・140分
配給/松竹
■□■ショートコメント■□■
◆今村昌平監督の1979年の名作をシネ・ヌーヴォで鑑賞。緒形拳が極悪非道の殺人鬼・榎津巌役を演じた本作は、リアルタイムでは観ていなかったもののテレビ放映で何度か観た記憶がある。そんな名作を9月18日の祝日にわざわざ500円の特別料金を払って劇場へ!
しかし、その甲斐あって非常に充実した時間を過ごすことができた。やはり、名作は名作。途中まったくダレルことなく、2時間20分の長尺を集中して鑑賞することに。
◆冒頭から殺人鬼の榎津巌役になりきっている緒形拳の演技に拍手!こんな男を取り調べる河井警部(フランキー堺)も大変だ。
榎津巌の幼少期、九州の天草に住んでいるクリスチャンの父親鎮雄(三國連太郎)は、船を海軍に供出しないことを責められていたが、その様子を見ていると海軍の要求は理不尽そのもの。ところが、それに反抗することができない父親の姿に、その息子・巌は大失望!以降、巌はかなり性格のひねくれた青年に成長していくことに・・・。
◆そんな息子の見合いの日に、加津子(倍賞美津子)が巌の家を訪れてきたから、両親はビックリ。加津子はすでに妊娠していると聞いた両親は仕方なく2人の結婚を認めたが、加津子は意外にいい嫁だった。そのため、犯罪者になってしまった巌に愛想をつかして出ていった加津子に対して、鎮雄は両手をついて、「息子のため、榎津家のため、天草に帰ってくれ!」と頼み込むことに。そんなやりとりの中、2人の間には義理の父親と息子の嫁という関係を超えた、微妙な信頼関係が醸成されていくことに・・・。
加津子を四国まで迎えに行った温泉宿の温泉に2人で入るシーンの色っぽさといったら・・・。
◆弁護士や大学教授を名乗って、赤の他人を騙していく巌の鮮やかな手口を観ていると、巌は人を殺さずとも詐欺行為だけで金を巻き上げる能力を有していることがよく分かる。それなのに、なぜ巌はわずかな金を奪うために、あんな残忍な殺人行為を繰り返したの?私にはそれがよくわからない。そして、多分それは原作者の佐木隆三もよくわからないのだろう。そのため小説家の彼は、巌という人物の人間性に興味を持って、丹念な取材をしたわけだ。
弁護士を装って10万円の保釈保証金を詐取する手口が鮮やかなら、裁判所から逃走するタクシーに同乗した老弁護士(加藤嘉)と仲良しになり、自宅ですき焼きパーティーをやると称して殺してしまう巌の人間性には唖然!
◆本作中盤から後半にかけては、京大教授と偽って浜松の「貸席あさの」に滞在する巌の姿が描かれる。この頃は既に巌の指名手配書が全国的に出回っていたから、巌もかなりヤバイ橋を渡っていたわけだが、その貸席(旅館)の女将をしている小川真由美演じる浅野ハルと、人を殺して刑務所から出てきたばかりというその母親・浅野ひさ之(清川虹子)、そしてハルの亭主(北村和夫)とのなんともドロドロした関係は興味深い。
更にそこに、連続殺人犯であることが判明した巌が加わった人間模様は、まさに今村昌平監督ならではの視点で分析されているので、本作後半ではとりわけそこに注目!また、その中では、大胆にその裸身を見せてくれる若き日の倍賞美津子と同様、緒形拳との間で大胆な愛欲シーンをこなす小川真由美のさすがと思える演技に感服!
◆巌のような連続強盗殺人事件の犯人は逮捕され起訴されれば、判決は当然死刑。本作後半ではそんなわかりきったシーンは一切省略され、いきなり巌の遺骨を故郷の天草の空に放り投げるシーンで終わる。それを実行するのは鎮雄と加津子だが、巌からずっと「不義密通」を疑われ、自らもその責任を取ってクリスチャンの責任者の地位を辞任した鎮雄は今どんな表情でその行為を・・・?
他方、内心では半分早く死刑になってほしいと願っていたはずの加津子も、今は鎮雄と2人でどんな表情でそんな、行為を・・・?まさか、今さら鎮雄と加津子が再婚することはないだろうが、ある意味で「似た者同士」のこの2人は、巌が死刑の執行によって死んでしまった後どのように生きていくのだろうか・・・?三國連太郎の懐の深い演技とそれを引き出した今村昌平監督の演出に感心しながら、何ともドロドロした名作をしっかり鑑賞できたことに感謝!
2017(平成29)年9月22日記