パプリカ(日本映画・2006年) |
<ソニー・ピクチャーズ試写室>
2006年11月17日鑑賞
2006年11月18日記
他人の夢の中に入り込んで治療をするセラピストのコードネームがパプリカ。そこで、必然的にスクリーン上にはワケのわからないややこしい夢の世界が登場するが、それにはアニメが最適とばかり、美しい色彩感と特徴的な絵がいっぱい。しかし、どうも私には物語自体がイマイチ・・・?ベネチア国際映画祭へ出品されたが、金獅子賞は中国の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『三峡好人』が受賞し、日本は敗北・・・。日本アニメも、再度ふんどしを締め直さなければ・・・。
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監督・脚本:今敏
原作:筒井康隆『パプリカ』(新潮文庫刊)
声の出演
パプリカ、千葉敦子(精神医療総合研究所のセラピスト)/林原めぐみ
乾精次郎(精神医療総合研究所の理事長)/江守徹
島寅太朗(精神医療総合研究所の所長)/堀勝之祐
時田浩作(敦子の同僚)/古谷徹
粉川利美(島の親友、敦子の患者、刑事)/大塚明夫
小山内守雄(精神医療総合研究所の所員)/山寺宏一
氷室啓(時田の助手)/阪口大助
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給・2006年・日本映画・90分
<パプリカとは・・・?>
原作『パプリカ』は、筒井康隆が1991年から女性誌マリ・クレールに発表した連載小説。乾精次郎(江守徹)を理事長、島寅太朗(堀勝之祐)を所長とする精神医療総合研究所で働くサイコ・セラピストが千葉敦子(林原めぐみ)。彼女は、同僚の時田浩作(古谷徹)と共に最先端のテクノロジーを使ってサイコセラピー機器の開発・研究に取り組んでいる、美しくかつ知性豊かな女性。そんな敦子が極秘に開発されたサイコセラピー機器を使って行う治療が、他人の夢の中に入り込んで心の秘密を探り出すという手法。そして、そこに入り込むについて敦子が変身する全く別人のような少女のコードネームがパプリカ。つまり、夢の中であどけない少女パプリカに出会った患者は不安を忘れ、パプリカにすべてを委ねようという気持になるということだ。
プレスシートからの孫引きが多くなったが、これくらいの前提知識を持っていないとこの映画はサッパリわからないから、私の復習をかねてまずはこの程度のお勉強を・・・。
<もう1つのポイントはDCミニ・・・>
デブでだらしない男だが天才的頭脳を持っている時田が、今開発しているのがDCミニ。これは頭部に装着して眠るだけで、機器を使用している者同士が同じ夢を共有できるという画期的なものだが、悪用されると他人の人格を破壊することもできるという危険な面を持っていた。しかもそれはまだ開発途上だから、開発者の時田が予測しないことが起こる可能性も・・・。
他人の夢の中の世界に入り込むパプリカと、頭にセットするだけで他人の夢を共有できるDCミニという2つの精神治療の手法がこの映画のポイント。したがって、映画は冒頭から、「ヒットパレード!」と銘打って、美しい色彩によるサーカス小屋の中での風景が描かれ、敦子の治療を受けている粉川利美刑事(大塚明夫)の姿も登場するが、さてこれは誰が見ている夢・・・?
<ややこしい物語の発端は、DCミニの窃盗事件から・・・>
そんなDCミニのサンプル3機が、ある日研究所内から盗まれるという事件が発生した。DCミニの秘密を知っている敦子、時田、島所長の3人は善後策を協議したが、その最中に島所長の身体に異変が・・・。これは明らかに盗まれたDCミニによって、島所長の精神に何者かが侵入してきたためだ。そこから、この物語は急にややこしくなっていくが、それは明らかに盗まれたDCミニを誰かが悪用しているため・・・。
ここで新たに登場する人物が、時田の助手の氷室啓(阪口大助)や所員の小山内守雄(山寺宏一)だが、氷室の顔をしたケッタイな日本人形が登場したり、理事長がどうも悪者らしいというメッセージが伝えられたり・・・。また、氷室が飛び降り自殺を図った後は、粉川刑事が捜査に乗り出してくるが、この粉川の夢の中に氷室の狂った夢のイメージが混入してきたり、さらに粉川の分身のような映画好きの人物が登場してきたりと、もう私の頭の中はグチャグチャ・・・?
スクリーン上に描かれる夢の世界は美しい色彩に彩られているが、登場してくるのはケッタイなシーンばかり。これでは、一体どこまでが現実でどこからが夢なのか、またそれは誰が見ている夢なのか、サッパリ訳がわからなくなるのも当然。原作がどんなになっているのか全然知らないが、私はどうもこういうややこしい物語は苦手・・・?
<パプリカ登場!>
どちらかというと私には、サイコセラピー機器の開発に反対していた中止論者の乾理事長の方が正論で、人の夢の中に入り込んで治療するという手法を開発している敦子や時田の方に問題があると思うのだが、物語の流れを見ていると、どうも悪者は乾理事長の方らしい・・・?
時田は自らDCミニを装着して、氷室の夢の中にアクセスしたがうまくいかず、逆にその中に取り込まれてしまった様子。そこでやっとわれらのパプリカ登場だが、事態は今までのようにパプリカが自由に他人の夢の中に入り込んで活躍できるという状況ではなく、DCミニの活用(悪用)によって、邪悪な者たちが他人の夢をいかようにも自由に支配している状況。さてそんな中、パプリカは本来の能力を発揮することができるのだろうか・・・?
映画後半はそんなパプリカの活躍が描かれていくが、旗色はかなり悪そう。すなわち、昆虫採集のように羽根をピンで刺されたり、パプリカと分離された敦子がヌード姿で転がされたりと大きく苦戦・・・。しかし、結果はきっと・・・?
色彩感の豊かさはピカイチだから、映像製作に興味を持つ方や夢を見るのが大好きな人には、こんな奇想天外な夢の世界の展開はこたえられないのでは・・・?しかし私は、はっきり言ってかなり苦手・・・。
<ベネチア国際映画祭に出品されたが・・・>
この『パプリカ』はオダギリジョー主演の『蟲師』と共に、今年8月30日に開催されたイタリアのベネチア国際映画祭に出品された。1000人の観客席は満席となり、上映終了後の拍手とスタンディングオベーションは5分以上鳴りやまなかったと報道されていたが、結果は両者とも受賞を逸することに・・・。
金獅子賞を受賞したのは、三峡ダム建設による社会や心のひずみを描いた、中国の第6世代監督賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『三峡好人』。アニメに強い日本勢は、宮崎吾朗の初監督作品『ゲド戦記』(06年)が特別招待作品として新人監督賞の候補にされていたが、これもダメ。日本のアニメ映画の好調ぶりに浮かれすぎていると、才能豊かな監督が次々と登場している中国映画に追い越されていくのでは・・・?
2006(平成18)年11月18日記