沈黙の傭兵(アメリカ映画・2005年) |
<ユウラク座>
2006年12月24日鑑賞
2006年12月26日記
『シネマルーム11』の出版と軌を一にしたスティーヴン・セガールの『沈黙』シリーズ第11作の舞台はアフリカ。軍事政権の打倒、CIAの謀略、フランス軍の介入など、キナ臭いにおいが充満する中、2つの作戦が実行されるが、さてどちらが本命でどちらが陽動・・・?久々の美女の登場によって、少しはマンネリ化を払拭できたが、「傭兵」という職業の是非は・・・?この映画を楽しんだ後は、セガール「オヤジ」の「第12弾」とSHOW-HEY弁護士の『パート12』の双方に期待を・・・。
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監督:ドン・E・ファンルロイ
ジョン・シーガー(傭兵)/スティーヴン・セガール
マキシーン・バーナル(シーガーの元恋人、傭兵)/ジャクリーン・ロード
アンソニー・チャペル(傭兵の手配師)/ロジャー・グーンヴァー・スミス
ジョン・ドレシャム(CIA)/ルーク・ゴス
サミュエル・ケイ/マイケル・ケネス・ウィリアムス
ブルドッグ/エイドリアン・ギャレイ
クルーガー/ラングレイ・ジャック・キルクウッド
デカーク/ヴィヴィアン・ビールド
マリク/ブルース・ヤング
アフメット・ダサン/ペーター・バトラー
アートポート配給・2005年・アメリカ映画・96分
<『沈黙』シリーズの第11作と『シネマルーム』の「パート11」>
スティーヴン・セガール主演の『沈黙』シリーズは1992年の『沈黙の戦艦』から始まり、本作『沈黙の傭兵』で11作目となったが、その間12年。これに対して、私の映画評論本である『SHOW-HEYシネマルーム』は2002年6月の「パート1」から始まったが、2006年12月25日に出版社から私の事務所に到着したのが、『沈黙』シリーズと同じ「パート11」。奇しくも2006年のクリスマスの時期において、同じ11で並んだわけだが、『沈黙』シリーズ12作目の『沈黙の奪還』は2007年1月13日に公開とのこと。これに対して、私のシネマルーム『パート12』は既に目次づくりに着手しているが、その出版は2007年5月頃の予定。そんなわけで、これからも『沈黙』シリーズは『シネマルーム』のよき競争相手(?)として、注目していかなければ・・・。
<職業あれこれ・・・>
『沈黙』シリーズがそれなりの人気をキープしている最大の原因は、武術と知能を兼ね備えたスティーヴン・セガールの男の魅力そのものにある。しかし、それだけではやはり飽きがくるはず。そこで『沈黙』シリーズは、『007』シリーズのように主人公の役柄を固定せず、作品ごとに手を変え品を変えて工夫を凝らしている。
その結果、セガールの職業も、元CIA捜査官(『沈黙の聖戦』)、環境保護調査官(『沈黙の断崖』)、石油炎上事故消火の専門家(『沈黙の要塞』)から中国古美術を研究する考古学教授(『沈黙の標的』)等多彩だが、これらはそれぞれ人に誇ることができる一流の職業。ところが第10作の『沈黙の脱獄』では、「泥棒稼業を引退した男」とちょっと異質で、裏稼業的臭いのするものに・・・。そして、今回の第11作『沈黙の傭兵』の職業は傭兵・・・。
<「傭兵」はマイナスイメージ・・・?>
パンフレットには、武器に関する豊富な知識を武器に(?)楽しそうに解説する石井健夫氏の「オフザケなど一切なし。“セガール銃撃”は、時代劇スターの立ち回り!」と題する解説がある。それによるとマーセナリー=傭兵とは、「国家レベルの、それも表では処理できない問題解決のため、戦争という「究極の汚れ仕事」を金で請け負う民間人」とのこと。もっとも、私に言わせればこれが傭兵の一般的定義ではないはずで、例えば黒澤明監督の名作『七人の侍』(54年)の主人公たちも、農民に金で雇われた傭兵の一種。『七人の侍』は、傭兵であっても世のため社会のため、そして正義のため農民のために闘うという理念があったが、傭兵という言葉からは、金のためにのみ働くというイメージが強く、私にはかなりマイナスイメージが強い。もっとも、傭兵=用心棒と考えれば、弁護士だって一種の傭兵だからあまり偉そうなことは言えないのだが・・・。
そうだとすると、傭兵は正義感あふれる男セガールが選ぶ男の職業としては、マイナスイメージでは・・・?
<舞台はアフリカ>
『沈黙』シリーズの舞台はやはりアメリカが多いが、最近は①中国国境付近(『沈黙の標的』)、②タイ(『沈黙の聖戦』)、③南米ウルグアイ(『沈黙の追撃』)など少しずつ国際化(?)している。そして、今回の『沈黙の傭兵』の舞台はアフリカ。ガルモラル島にある独裁国家(架空の島と架空の国・・・?)。これが、湾岸戦争の英雄ジョン・シーガー(スティーヴン・セガール)率いる傭兵たちが今立ち向かっているターゲットだ。
映画の冒頭、戦車を交えた激しい銃撃戦が展開されるが、軍事政権から島民を解放するというCIAの大義名分の下に軍事政権と戦っていたシーガーたちは、フランス軍の突然の介入によって撤退を余儀なくされたうえ、親友のラジオが死亡。CIAによる軍事独裁政権打倒のシナリオやフランス軍介入の真相には、さまざまな謀略があり、結局シーガーたちはそれにまんまと騙されていたというわけだ。
<謀略の仕切り人は・・・?>
かつて、大東亜共栄圏を唱え、満州国の建設に向けた関東軍の軍事行動の謀略に大きな役割を果たしたのが石原莞爾。この映画におけるそれが、CIAの幹部であるドレシャム(ルーク・ゴス)だ。
他方、現実に傭兵たちに接してこれを手配するのは、自らは絶対に銃を握らないという信念を持った手配師のチャペル(ロジャー・グーンヴァー・スミス)。謀略を練る人間やその謀略を前提として現実的な事務処理をする人間は、頭はいいがちょっとズルい奴が多いもの・・・?さて、彼らはガルモラル島の軍事政権をめぐってどんな謀略を練ってきたのだろうか・・・?そして次にはどんな謀略を練り、優秀な傭兵のリーダーであるシーガーに対して、何をやらせようとするのだろうか・・・?
<親友の未亡人と息子がキーパーソン・・・>
正規の軍人でない傭兵であっても、戦場で死亡した場合、その遺族は「名誉の戦死」か否かが気になるもの。そこで律儀なシーガーは、親友ラジオの立派な死にざまを未亡人と一人息子に伝え、今後の生活の面倒を見ることを約束するとともに、ラジオの復讐を誓ったが、そうスンナリと進まないのが『沈黙』シリーズの常・・・?チャペルが、その未亡人と息子を人質にとったうえでシーガーに命じたミッションは、南アフリカのランベルド刑務所に投獄されているギリシャの大物武器商人の息子を、4日以内に脱出させること。渋々この命令に従ったシーガーは、さてどんな対抗策を・・・?
<謎のベッピンの役割は・・・?>
フランス軍の介入を阻止するため、フランス大使を人質に!映画の冒頭、ガルモラル島での激しい戦闘と平行してそんなシーンが登場するが、そこで活躍するグループの中の1人が、シーガーの傭兵仲間である紅一点のマキシーン(ジャクリーン・ロード)。しかし、シーガー自身がラジオを救助できなかったうえ、撤退を余儀なくされた状況の中、マキシーンも銃弾を浴びて生死不明の状態に・・・。したがって、何とかその危機を切り抜けたマキシーンだったが、シーガーが自分を裏切ったのではないかという疑惑を捨て去ることができず、今やドレシャムの指示を受ける立場に・・・。
<銃や武術よりもIT技術が優位・・・?>
今回のセガール扮するシーガーの復讐劇はかなり手が込んでおり、どれが本線でどれが伏線か、なかなかわからないところがミソ・・・?すなわち、ランベルド刑務所に収容されているギリシャの大物武器商人の息子を脱出させることが本命・・・?それとも、南アフリカの首都ケープタウンにある鉄壁の防御システムを誇る銀行からの現金強奪が本命・・・?
それは映画を観てのお楽しみだが、面白いのは、最近の映画ではこんな大作戦にはIT技術が不可欠で、コンピューターのプロがいなければ何もできないということ。この映画で、天才的なIT技術を駆使しシーガーの片腕となるのがサミュエル(マイケル・ケネス・ウィリアムス)だが、これを観ていると、近時は銃や武術よりもIT技術の方が優位に、と思わざるをえない・・・。となると、作戦の成否に大きな影響力を持つIT技術のプロに出演料をはずまなければ・・・?
<美人の登場に大満足・・・?>
『沈黙』シリーズには特に傑作はないものの(?)、おおむね単純に楽しめる出来になっているのが売り(?)だが、シリーズ第10作『沈黙の脱獄』(05年)はさすがに少しマンネリ性が目についたため、私はそれを5点にわたって指摘した(『シネマルーム10』406頁参照)。「マンネリ性その5」は女性の美しさに関するもので、『沈黙の脱獄』に登場した女性レイチェル刑事(サラ・バクストン)があまりキュートでなかったことが私の不満・・・?そこで、「やはり、シリーズごとに1人ぐらいはベッピンを起用してもらわなければ・・・」と書いたのだが、その声が届いたのか(?)、この『沈黙の傭兵』ではモデルとして活躍していたという美女ジャクリーン・ロードをマキシーン役として起用した。
マキシーンはジョン・シーガーの元恋人であると同時に有能な傭兵だから、華麗な格闘アクションや銃の乱射というワイルドなシーンから、真っ赤なドレスに身を包んだ女の魅力タップリのシーンまで、さまざまなファッションと演技を披露。そのうえ、彼女はシーガーに裏切られたのではないかという疑惑を持っているという状況設定とされたため、ストーリー全編を通じて、彼女がシーガーを裏切るのか、それとも今なおシーガーの味方なのかというミステリアスな雰囲気を漂わせているから、よけいにステキ・・・。『沈黙』シリーズ第11作は、こんな美人の登場に大満足・・・。
2006(平成18)年12月26日記