エクステ(日本映画・2006年) |
<東映試写室>
2007年1月12日鑑賞
2007年1月15日記
「エクステ」とは、ヘアーエクステンションの略。しかしその「つけ毛」の原材料は一体ナニ・・・?そんな発想から原案を書いた園子温監督が独自のヘアーホラー映画(?)を完成させたが、その気味悪さとバカバカしさにうんざり・・・。栗山千明目当てで行ったものの、ああ、ついに時間の無駄遣いをやってしまった・・・??
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監督・脚本・原案:園子温
優子(美容師の卵)/栗山千明
山崎(死体安置所の管理人)/大杉漣
由紀(優子の同居人)/佐藤めぐみ
清美(優子の姉)/つぐみ
サチ(優子の同僚)/町本絵里
マミ(清美の娘)/佐藤未来
佳代(美容室のオーナー)/山本未来
東映配給・2006年・日本映画・108分
<エクステとは・・・?>
そもそも私は、この映画のタイトルを見ても何の映画かサッパリわからなかったが、エクステとはヘアーエクステンションの略。つまり、世界的に流行している「つけ毛」ファッションのことだ。そして事前にネット情報で調べてみると、昔から「髪は女の命」と言われているように、女性にとって美しい髪への執着は強いものだが、それに着目してつくったホラー映画がコレ。
死んだ後も髪が生え続ける美しい髪の女性がいたら・・・。エクステ用の髪を売り歩く男にとって、そしてまた髪フェチ(?)の男にとってそれは夢みたいな話だが、この映画ではそんな夢が実現!いかにも変態男然とした(?)山崎(大杉漣)は、死後も美しい髪が生え続ける少女の死体から、今日も恍惚とした表情を浮かべながら髪の毛を切り取り、エクステをつくっていたが・・・。
<お目当ては栗山千明のみだったが・・・>
事前の情報収集によって、この映画はどうも気味悪そうだと理解したため、全然その鑑賞に乗り気ではなかったが、たまたま同じ試写室で続けて2本観ることができる日程になっていたため、ついでに観ることに・・・。ちなみに、私が「ついで」でも観ようと思った動機は、何といってもあのクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』(03年)、『キル・ビル~KILL BILL~Vol.2』(04年)での演技が印象に残る長い髪の女の子、栗山千明が主演していたため。このように、私のお目当ては栗山千明1人だったのだが、この映画はヘアーホラーの恐ろしさをいかに打ち出すかがメインであったようだから、残念ながら主演女優のキャラはあまり関係なし・・・?したがって、私の最大のお目当ても肩すかし・・・?
<はじめての園子温作品だが・・・>
この『エクステ』の監督・原案・脚本は園子温。彼は『自殺サークル』(01年)、『奇妙なサーカス』(05年)、『紀子の食卓』(06年)で、数々の海外の映画祭の賞を受賞しているらしい。しかし、私はこれらを1本も観ていないし、彼の名前の読み方すら知らなかった・・・。
この映画の冒頭は、横浜港に到着した巨大なコンテナの中から膨大な量の髪の毛が発見されるシーンだが、実はその中に少女の死体が・・・。そして、その少女の死体を処理するのが山崎。つまり、払い下げた(?)たくさんの女性の死体から髪の毛を切り取り、その毛をエクステにするのが山崎のお仕事というわけだ。
普通は髪の毛を切り取ってしまったら、その死体は用済みとなるのだが、その少女の死体だけは別。なぜなら、いくら切り取っても切り取っても、次々と新しい髪の毛が生えてくるから・・・。映画づくりにおいては撮影が大きなウエイトを持っているが、この映画では髪の毛が目や口から生えてきたり、腕から生えてきたり、しかも頭に生える髪の毛は何十メートルという長さになったり、人間を襲う凶器になったりとハチャメチャだから、それをいかにカメラで撮影するかが大きなポイント。ところが、恐がり屋の私はそんなシーンを観ると気持が悪くなるので、そんなシーンになるとほとんどは薄目状態・・・。したがって、残念ながら園子温監督の良さ(?)は私には全く理解できず、気持悪さのオンパレードにうんざり・・・。
<原案の発想は・・・?>
この映画を観ていると、要するに園子温監督の構想は、死んだ後も生え続ける女の命である髪を切り取りそれをエクステとして商売に使用している男に対する、死んだ少女の怨みが髪にこもっていくとしたらどうなるだろうかというもの・・・?そこで彼が書いた原案は、髪を切られれば切られるほど、死んだ少女の怒りや怨みが増大し、ますます髪が生えてくるとともに、エクステとして使われている髪にもその怨みが乗り移り、それをつけている女性に対しても怨みが爆発していくというもの。そこまでの原案が決まれば、後はいかにそれを恐ろしくスクリーン上に表現していくかという問題だけ・・・。
<筋違いの怨みは迷惑千万・・・>
しかしよく考えてみれば、そんな死んだ少女の怨みを生み、助長させているのはすべて山崎であって、その美しい髪を使ったエクステを気に入って使っている女性は何ら関係ないはず・・・?ところがこの映画では、最初にそのエクステの犠牲になるのは佳代(山本未来)が経営する美容院で真面目に働いているサチ(町本絵里)やその他の従業員たち。したがって、死んだ少女の怨みのとばっちりを受けて死んでいく従業員たちはかわいそうで、迷惑千万な話。そう考えると、この映画の脚本はどこか筋が違うのでは・・・?
<史上最悪の母親の姿にビックリ・・・>
年明け早々、①東京渋谷区での歯科医師方における予備校生の次兄による短大生の妹のバラバラ殺人事件、そして②同じく東京渋谷区でのセレブ妻による外資系金融会社社員の夫のバラバラ殺人事件と、日本列島には、近時増えてきた親殺し、子殺しの他、凶悪でおぞましい夫殺し、妹殺しの事件が次々と・・・。なぜこんな事件が起きるのかと考えると、その根本に親子や夫婦、兄弟間での心の交流が失われている現実にあることは明らか。
この映画における優子(栗山千明)の姉清美(つぐみ)が、その一人娘マミ(佐藤未来)に対して示す母親ぶりを見ていると、そんな悲しい母子関係の喪失ぶり(というよりも母親失格ぶり)が顕著!本来この映画は、エクステで生計を立てている山崎が、優子の長く美しい髪に目をつけたところからはじまるヘアーホラー(?)なのだが、その恐さを側面から増強しているのが、この史上最悪の母親、清美。
自分が産んだガキはどう扱っても母親の自由、というヘンな理屈で自由奔放な行動をとり続ける清美を見ていると、児童虐待の防止などとキレイ事をいくら並べても、全く無力なことがよくわかる。まあ、そんな鬼のような母親がどこかで報いを受けるのは当然かもしれないが、映画の中でそんな姿をいくら描いても、観客に感動を与えることは到底できないのでは・・・?
<ヒロインの運命やいかに・・・?>
女性にとって長く美しい髪を持っているのは幸せなことだが、そんな長所も、こんな山崎みたいな男に目をつけられると、大変な危機が迫ってくることに・・・。最初の危機は、美容師の卵である優子の先輩たちを襲ったが、当然その危機は本命であるヒロインの身にも及ぶことに・・・。優子は由紀(佐藤めぐみ)と仲良く部屋をシェアして暮していたが、そこに清美から手ひどい虐待を受けている娘マミを受け入れたから、さらにそれによる恐ろしい危機も・・・。そんなこんなのややこしい話を前提として、優子を襲ってくる死んだ少女の怨みとの闘いの結末は・・・?そして、清美や山崎の結末は・・・?
まあ、こんなホラー映画が大好きな人はそれを楽しみに、恐ろしいスクリーン上の姿をじっくりと楽しんでみては・・・?
2007(平成19)年1月15日記