素晴らしき休日(日本映画・2007年) |
<テアトル梅田>
2007年6月7日鑑賞
2007年6月8日記
2007年5月の第60回カンヌ国際映画祭で、北野武監督が大活躍!35人の世界の監督の1人として、「映画館」をテーマとした3分間の短編に挑んだのがコレ!わずか3分間で描かれる北野ワールドは、さて・・・?
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監督:北野武
出演
北野武
モロ師岡
2007年・日本映画・3分
<第60回カンヌ国際映画祭では・・・?>
今年5月16日から27日まで南フランスのカンヌで開催された第60回カンヌ国際映画祭では、60周年記念イベントとして、『Chacut Son Cinema』(英題:To Each His Own Cinema)が上映されたとのこと。これは世界を代表する35名の監督が持ち寄った3分間の短編映画をまとめたもので、そのテーマは「映画館」。その名誉ある35人の監督の中に日本から選ばれたのが、「世界のキタノ」こと北野武監督で、そのタイトルは『素晴らしき休日』。
今年のカンヌ国際映画祭への出品は、コンペティション部門に出品された河瀬直美監督の『殯の森』と、監督週間に出品された松本人志監督の『大日本人』だけだったが、見事『殯の森』がグランプリを受賞したのは喜ばしい限り。また、北野武監督の『素晴らしき休日』もカンヌの人たちからは好意的に迎えられたらしい。他方、松本人志監督の『大日本人』は賛否両論があったようで、上映の途中で席を立つ観客も目立ったらしい・・・。当然松本人志監督は北野武監督を意識した発言をしているようだが、天才たけしと天才ひとしの世代を超えた対決がこれからの見モノ・・・?
そんな結果で終わった今年のカンヌ国際映画祭だったが、日本では松本人志監督の『大日本人』が公開されたのと同じ6月2日に北野武監督の『監督・ばんざい!』が公開されたため、急遽『素晴らしき休日』が同時上映されることに決まり、本日『監督・ばんざい!』の上映に先立って『素晴らしき休日』を鑑賞することに・・・。
<舞台は古びた映画館・・・>
35人の監督に課せられた宿題は、「映画館」をテーマとした3分間の短編をつくれということ。同じ宿題で35人の監督たちがそれぞれどんな短編をつくるのかを競い合うことが面白いわけだ。そこで北野監督が設定した舞台は、片田舎に1軒だけポツンと建つ古びた映画館。戦後の日本において映画は大衆娯楽の王様として君臨していたのだから、映画館は当然市街地の中心部のにぎわいのあるゾーンに建てられていたはず。したがって、こんな片田舎にポツンと建つ映画館はないはずだし、仮に建てられても客が来ないことは明らか・・・。
スクリーンに映るこの片田舎の風景とそこにポツンと建つ映画館という構図は非常に美しく、見ごたえがあるからインパクトは十分。
<映画館にやってきたのは・・・?>
そんな古びた映画館に自転車に乗ってやってきた観客(モロ師岡)は、自転車を停めて館内へ・・・。ここではじめてスクリーンに映る館内は外見以上に古びて(老朽化?)いるが、大阪の某映画館(?)のようにかえってそれがいい味に・・・?
500円の農家チケット(farmer’s ticket)を購入したから、彼は近くで田んぼを耕している農夫かも・・・?この映画館では観客が入れば直ちに上映を開始するシステムのようで、男がタバコをふかしている間に上映の準備が整った映写技師(北野武)は、「それでは上映します」と叫んで、映画『キッズ・リターン』の上映が開始されたが・・・。
<2度あることは3度ある・・・?>
この短編はカンヌ国際映画祭で上映されることを前提としてつくったものだから、目立ちたがり屋の北野武監督(?)は当然自分自身を出演させている。また、映画祭でも例によってケッタイなチョンマゲ姿で注目を集めていたよう・・・?
そして、俳優北野武が3分間の短編に登場する以上、ギャング役でなければ、コント役に決まっている・・・?しかして、映写技師の役を演ずる彼のギャグは・・・?
ギャグには1回こっきりで決めるものもあれば、2回、3回とくり返すことによって効果のあるギャグもあるが、この映画は後者のパターン・・・。さて、そんな映写技師の俳優北野武が演ずる一世一代のコントの出来は・・・?
<思わず思い出した『ニュー・シネマ・パラダイス』・・・>
古い映画館と映写技師という設定は、あのイタリア、フランス合作映画の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89年)を思い出させるもの。すなわちイタリアのシチリア島の小さな村にある唯一の映画館パラダイス座を舞台とし、映写技師アルフレードと映画の大好きな少年トトとの交流を、歴史の激動の中で描いたのがこの名作だが、『素晴らしき休日』がその雰囲気をしっかりと継承しているのはさすが・・・。
<短いほど難しい・・・?>
私は観た映画をすべてホームページとブログにのせるべく、鑑賞直後にその評論を書いている。また、産経新聞の『That’sなにわのエンタメ』に5人の執筆者の1人として長年映画評論を書いている。ホームページ用の評論は自由に書いており、その長短を全然気にしないから気楽だが、新聞連載の評論は当然字数が決まっている。したがってその範囲内でいかにシンプルに思いを伝えるかが勝負の分かれ目に・・・。字数がはっきり特定されたコラムは、さらにそれを徹底しなければならないもの。したがって映画評論家坂和章平としても、映画評論を書くのは字数が少なければ少ないほど難しいことを常に実感している。
映像におけるその典型がテレビCM製作。15秒間でいかにインパクトのある映像をつくりあげるかはホントにシビアな世界のはず・・・。そしてそれは映画監督も同じ・・・?「3分間で、映画館をテーマとした短編をつくれ」とは何とも酷な注文だが・・・?
<他の監督たちは・・・?>
日本からは今回北野監督だけだったが、中国からは張芸謀(チャン・イーモウ)と陳凱歌(チェン・カイコー)の2大巨匠が、そして台湾からは侯孝賢(ホウ・シャオシェン)が、香港からはウォン・カーウァイが参加しているとのこと。また、私が知っている著名監督としては、『ローズマリーの赤ちゃん』(68年)、『戦場のピアニスト』(02年)、『オリバーツイスト』(05年)のロマン・ポランスキー監督や、『21グラム』(03年)、『バベル』(06年)のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、そして『パリ、ジュテーム』(06年)のコーエン兄弟などがズラリ。彼らの才能が映画館をテーマとしてどんな短編を生み出しているのか是非観てみたいものだ。
2007(平成19)年6月8日記