ストンプ・ザ・ヤード(アメリカ映画・2006年) |
<ソニー・ピクチャーズ試写室>
2007年8月1日鑑賞
2007年8月2日記
黒人特有のリズム感の良さは折り紙付き。しかして、ストリート・ダンスとはひと味違う、格闘技にも似た集団によるストンプ・ダンスの迫力が、この映画の売り!ダンスバトルと1人の美女をめぐる恋のバトルの両者を制するのは果たしてダレ・・・?その勝敗は最初から明らかかもしれないが、この映画は結果ではなくその過程を十分味わい、楽しむことが大切・・・。
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監督:シルヴァン・ホワイト
DJ・ウィリアムズ(バトル・ダンサー)/コロンバス・ショート
エイプリル(DJの恋人)/ミーガン・グッド
デュロン(DJの兄)/クリス・ブラウン
リッチ・ブラウン/ニーヨ
グラント(<ガンマ>のリーダー)/ダリン・ヘンソン
シルベスター(<テータ>のリーダー)/ブライアン・ホワイト
ジャッキー(DJの叔母)/バレリー・ペティフォード
ネイト(DJの叔父)/ハリー・J・レニックス
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給・2006年・アメリカ映画・114分
<ストンプとは・・・?ステッピングとは・・・?>
この映画は、3月18日に観た『ステップ・アップ』(06年)や6月15日に観た『レッスン!』(06年)に続く今年3本目のダンス映画。私でも、ストリート・ダンスやダンスバトルという言葉はわかるものの、そもそもストンプ・ダンスやステッピングという言葉自体が私にはサッパリわからない。
プレスシートのイントロダクションによると、「“ストンプ”とは数世紀前のアフリカン・ブート・ダンスを起源とする舞踊で、ステッピングとも呼ばれている。正確なステップを踏みながら手足で音を立ててリズムを刻む、この伝統のダンスは現在も、主にアフリカ系のアメリカ人の大学の友愛会で受け継がれている」とのこと。
またチラシには、「ここで描かれる新鮮なステッピングとは、『グループ』としての団結や結束を表現するブラックカルチャーの中で育まれた伝統的な踊り」とのこと。まあ、いくら言葉で表現しても所詮わからないが、「集団性」に大きな意味があることはたしか。しかして、黒人特有の「あんな踊り」が大好きな人は必見!
<ダンスバトルの勝敗は何によって・・・?>
映画の冒頭は、ロサンゼルスにあるダンスクラブで展開されているダンスバトルのシーンが映し出される。ものすごい音響の会場には観客がいっぱいだし、フロアの上に置かれたバケツの中には賭け金がごっそりと入っているよう(?)だから、このバトルはホンモノのよう・・・?しかし、そもそもその勝敗がどんなルールで、どんな採点で決まるのか自体が私にはサッパリわからないから、とにかくすごいナアという印象だけ・・・?
そんな他人のシマに入り込んでバトルダンスを楽しんでいた若者DJ(コロンバス・ショート)とその兄デュロン(クリス・ブラウン)らのチームが、軽く出場して優勝してやろうと思ったのが不幸のはじまり。たしかに、DJらのチームは強く圧勝したが、その帰り道、ダンスバトルで敗れたチームの待ち伏せにあい、その中の1人の若者の発砲によってデュロンは死亡してしまうことに・・・。
「ここは他人のシマだ」「抑えろ」とデュロンは言っていたのに、俺が暴走したために、とDJは悔やんだが、既に遅かった。そんな中、DJは兄の夢だったジョージア州アトランタにあるトルース大学への進学を決意したが・・・。
<大学に入り、卒業することの意味は・・・?>
今や日本の大学は全員入学時代となり、定員割れをおこしている私学がたくさん出ている状態。したがって、昔は大卒といえばそれなりの価値があったが、今の日本ではそんなものは何のクソの役にも立たないもの・・・?
しかしアメリカでは、とりわけ黒人では、さらにトルース大学の「友愛会」のダンスチーム卒ともなれば、その肩書きだけで就職とその将来がほぼオーケーらしい・・・?DJはもともと大学に入るつもりなど全くなく、死んでしまった兄デュロンと両親の夢を実現させるために仕方なくトルース大学に入ったのだが、その入学については、兄の死亡に伴う事件を秘密にしておく必要があった。なぜなら、DJが前科者であることが明らかになれば、それがたとえ兄を守りたかったためであろうと、全くやる気のない弁護士のせいであろうと、それだけで入学は拒否されるわけだから・・・。
1人アトランタへ向かい、叔父のネイト(ハリー・J・レニックス)と叔母のジャッキー(バレリー・ペティフォード)の元に身を寄せたDJだったが、実はたちまち初日から逃げ出してしまうことに・・・。ネイトに発見され直ちに連れ戻されたDJだったが、果たしてDJは真面目に授業を受け、大学を卒業する気はあるの・・・?
<たちまち興味は美女に・・・?>
誰しも大学に入った時の楽しみは、どんなクラスに入るか、そこにはどんな面白い奴や美女がいるか、ということ・・・?それはDJも同じで、履修登録のため列をなして並んでいる時、偶然目に入った美人学生がエイプリル(ミーガン・グッド)。DJはすぐにエイプリルに向かって行動を開始したが、そこで遭遇したのが友愛会のダンスチーム「ガンマ」を率いるリーダーのグラント(ダリン・ヘンソン)。エイプリルはグラントの恋人らしく、グラントは露骨に「俺の女に近づくな!」とのサインを送ってきた。しかし、ダンスでは絶対誰にも負けないと思っているDJは、自分流のストリート・ダンスをもって「ガンマ」のグラントを打ち負かしてしまったから大変。
そこから生まれたのが、エイプリルをめぐるDJとグラントの確執。どこの大学でもよくある話だが、さてその展開はいかに・・・?
<あたかもシャーク団VSジェット団・・・?>
『ロミオとジュリエット』はモンタギュー家とキャピュレット家の争いだったが、それをニューヨークを舞台とした現代風ミュージカルに移しかえた『ウエスト・サイド物語』では、シャーク団とジェット団の争いだった。力の拮抗したライバルがいると面白いのは何でも同じ。大相撲でもやっと1人横綱の時代が終わり、東西に青と白の両雄がそろったと喜んだとたん、朝青龍の不祥事によって「2場所出場停止」という厳しい処分を受けることになったのは、実に残念。他方、政治の世界では、2007年7月29日の参議院選挙の結果、あれほど切望されていた二大政党制が、かなり変質した形ながら現実に近づくことに・・・?
全国大会で7年連続で優勝を続けているチームが朝青龍のようなガンマだったが、そのライバルとして虎視眈々と優勝を狙っていた友愛会のチームがテータ。ストンプ・ダンスの実力を見せつけたDJに対しては、ガンマとテータの両チームから勧誘がきたが、「一度テータに入れば永遠に仲間」という口説き文句を吐いたテータのチームリーダーのシルベスター(ブライアン・ホワイト)に、DJは惹かれていくことに・・・。
名選手がどのチームに入るかはどの世界でも注目の的だが、2007年7月の日経新聞「私の履歴書」に連載されていた長嶋茂雄の履歴を読んでみると、それは決して偶然ではなく、さまざまな結びつきやつながりの結果であることがよくわかる。さらに、DJのテータ入りを決定づけたのは、エイプリルが述べた「友愛会の歴史館を絶対に見るべきだ」との言葉。彼がその歴史館で見たものは、マーティン・ルーサー・キング牧師やマイケル・ジョーダンなど偉大な先人たちの写真の数々。これによって、遂にDJはテータの新人歓迎会の席の中に・・・。
<この学長は一体ナニ・・・?>
安倍首相が任命した大臣たちの相次ぐ不祥事(?)を見ていると、「大臣だからといって、一体何が偉いの?」と思ってしまうが、この映画でみせるトルース大学の学長の言葉ややり方は最悪で、「あんたは一体ナニ?」と思わざるをえないもの。
実はこの学長は、エイプリルの実の父親。したがって、彼にとっては、今学生生活を謳歌しているエイプリルは目の中に入れても痛くないような存在だが、同時に彼女がどんな男と結婚するかが重大関心事。そして、学長の基準によると、ガンマのリーダーで将来が嘱望されているグラントは結婚相手としてふさわしいが、貧乏人であるうえ、今回前科者であることが判明したDJは全然ふさわしくない人物。
そこで、グラントからの告げ口によって前科がバレて退学を言い渡されてしまったDJを学長がわざわざ呼び出してまで提示した条件は・・・?それは、娘を愛する盲目的でバカな父親としては一応許せるものかもしれないが、それを権力で支え、無理矢理実行させようとしたところがナンセンス!おっと、そう言っても何のことかわからないかもしれないが、カンのいいあなたなら予測はつくはず。そして、それ以上の詳しい展開は、あなた自身の目で・・・。
<最初もバトル、最後もバトル・・・>
ストンプ・ダンスとは集団でやるものだと最初に紹介したが、全国大会に向けたガンマとテータ両チームの練習ぶりを見ていると、その迫力に圧倒されていくはず。こりゃ、ダンスの枠を超えた、まさに格闘技・・・?
大会ではガンマもテータも順調に勝ち上がり、遂に両者の決勝戦を迎えることに・・・。この映画は最初もバトル(ダンス)だったが、ラストもバトル。すなわち、ガンマの演技とテータの演技に対して、審査員たちがつけた点数は何と同点。その結果、勝負をハッキリさせるため、遂に両者のダンスバトルが実現することになったわけだ。グラントは隠れて収録していたDJのダンスの振り付けを既にマスターしていたから、「このバトルはバッチリ!」と自信をもって臨んだが・・・?
さあ、日本の映画では絶対に観ることのできない、筋骨たくましく、運動能力抜群の黒人の若者たちによるダンスバトルをタップリと楽しもう。もちろん、その勝負の結果は、既にあなたが予測しているとおり・・・?そしてまた、DJとエイプリルとの恋の行方も、こんな映画ではきっとハッピーエンド・・・?
2007(平成19)年8月2日記