ブラッド(アメリカ映画・2006年) |
<東宝試写室>
2007年8月16日鑑賞
2007年8月17日記
中国系アメリカ人として数々の映画に出演してきたルーシー・リューが、ヴァンパイア映画の新たなヒロインとして登場!そのテーマは「復讐」だから、あの『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』(03年)、『キル・ビル~KILL BILL~Vol.2』(04年)と対比して観れば、一層興味深いかも・・・?『アンダーワールド』シリーズとは大きく趣の異なる、女ヴァンパイアのキャラが定着すれば、シリーズ化も十分可能・・・?すると、その第2作は一体いつ・・・?
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監督・脚本:セバスチャン・グティエレス
セイディー・ブレイク(ジャーナリスト)/ルーシー・リュー
ローリンズ刑事(ヴァンパイアに娘を殺された父親)/マイケル・チクリス
ビショップ(ヴァンパイア集団のリーダー)/ジェームズ・ダーシー
イヴ(女ヴァンパイア)/カーラ・グギーノ
ジェニー(ヴァンパイア)/サミーラ・アームストロング
ロイド(ヴァンパイア)/ロバート・フォスター
ポー(東洋人)/マコ
バーテンダー/マリリン・マンソン
トリシア(ローリンズ刑事の娘)/マーゴ・ハーシュマン
アーチュロ(謎の男)/ジュリオ・オスカー・メチョソ
コレット(酒場の若い女)/キャメロン・リチャードソン
リベロ配給・2006年・アメリカ映画・98分
<ルーシー・リューの新シリーズ誕生・・・?>
プレスシートには「ルーシー・リューは、主人公セイディー役に飛びついた」と書いてある。そりゃそうだろう。ルーシー・リューは『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ(00~03年)、『バリスティック』(02年)、『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』(03年)等に出演し、ハリウッドでそれなりの存在感を示しているアジア系アメリカ人女優だが、これまで主役を張ったのは『バリスティック』(02年)(『シネマルーム3』298頁参照)くらい・・・?したがって彼女が、新たなヴァンパイアのヒロイン、セイディー役に惹かれたのは当然。
ヴァンパイア(吸血族)のヒロインとして一躍有名になったのは、『アンダーワールド』シリーズのケイト・ベッキンセール演ずるセリーン。私はその第1作は観ていないが、第2作の『アンダーワールド:エボリューション』(06年)を十分に楽しませていただいた(『シネマルーム10』82頁参照)。この『アンダーワールド』シリーズのヒロインを演じたケイト・ベッキンセールは、『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチや『トゥームレイダー』シリーズのアンジェリーナ・ジョリー、そして『エレクトラ』(05年)のジェニファー・ガーナーなどと同じように「美しき女戦士」というイメージが強く、またアメコミ的な色彩が強いものだったが、新たなシリーズとなりそうな(?)、ルーシー・リュー扮するヒロイン、セイディーは・・・?
<5番ホールからスタート・・・?>
ゴルフ場を貸し切った120名(4人1組で30組)のゴルフコンペの場合、順位はダブルペリア方式(新ペリア方式)によってつけられるが、スタート順はセミショットガン方式となる。30組もいるとアウトとインの2組に分かれて1番と10番から同時にスタートしても、各15組がスタートホールを終えるのに1時間以上かかることになる。そこで1番と10番以外に、5番と14番からも同時にスタートさせるというのがセミショットガン方式だ。これだと、30組が4つのホールから同時にスタートするから、1ホールあたり7~8組となるため、終了時間の違いが小さくなるというわけだ。なぜこんなことを書いたのかというと、この映画はまるで5番ホールからスタートしたようなものだから・・・?
<セイディーも悪い女・・・?>
映画の冒頭、酒場で中年おやじから誘いをかけられる若くかわいい女性コレット(キャメロン・リチャードソン)が登場する。一見素人っぽいが、実は彼女はカネで男を誘っていたからその実態は・・・?それはともかく、その隣にやってきたセイディーは、いきなりお札を並べながら「そんなおやじはやめときな。こちらの方がいいよ」と強引に割って入ったため、コレットは結局セイディーと共にある大きなお屋敷の中に。ところが、それが大きな罠だったから大変・・・。
コレットはさるぐつわをかまされ、逆さづりにされて檻の中に入れられた状態で、ヴァンパイアであるロイド(ロバート・フォスター)の犠牲になろうとする寸前に。なぜセイディーは、こんな素人女を騙すような悪い女に・・・?そう思って見ていると、それはセイディーがロイドに若い女(の血)を提供する代わりに、ロイドからある情報をもらうためらしい。すると、約束どおりロイドからその情報を聞き出したセイディーは、その場を立ち去るのが筋だが、必要な情報を聞き出せばもはやロイドは用済みとばかりに、セイディーは手に持っていたボウガンでロイドを殺害した後、「男を騙したりしてはダメよ」と教訓をたれながらコレットを釈放してやることに。
映画の冒頭に登場するこんなエピソードは、物語全体の一体どこに位置づけられるの・・・?そう思って考えてみると、これがつまり、セミショットガン方式の「5番スタート」というわけだ・・・。そこから、スクリーンは一転して数カ月前に遡っていくことに・・・。
<セイディーは実は敏腕記者・・・>
映画の冒頭に登場する悪女的な雰囲気のセイディーから一転して、数カ月前のセイディーは取材の第一線でイキイキと活躍している敏腕記者のセイディー。
彼女が取材した、若者の興味を引くカルト的な記事によって雑誌の表紙を飾ったことを聞いた彼女は大喜び。ところが、その取材で接触した若い娘トリシア(マーゴ・ハーシュマン)の電話番号がガセだったとして、いろいろと調べていた同僚のイーサンは、今あるホームページにたどり着いていた。そしてそこで、「道は血の中に・・・闇を進め・・・摂食は今夜始まる」という秘められた文面と、隠された透明の地図を見つけることに。
この不気味な文章は一体ナニ・・・?また、その地図上に示された屋敷は一体ナニ・・・?そして、イーサンからそれを聞かされたセイディーは、それに対してどんな行動を・・・?
<ヴァンパイアの犠牲となったトリシアは刑事の娘・・・>
他方、ロサンゼルスは犯罪のるつぼ・・・?そんなロサンゼルスのあるまちの裏通りで、セイディーが取材したトリシアがのどを掻っ切られた無惨な死体で発見された。このトリシアは、実は現場に駆けつけてきたローリンズ刑事(マイケル・チクリス)の娘だった。殺人事件発生と聞きその捜査のため現場に駆けつけた時、目の前の無惨な死体が自分の愛する娘だったことを知ったローリンズ刑事の心境はいかばかりだっただろうか・・・?
ちなみに、ヴァンパイア映画が大好きだと自認しているセバスチャン・グティエレス監督は、このトリシアが死体となって発見されるまでの出来事については、かなりリアルに描いてくれているので、その恐ろしさはスクリーン上で十分味わってもらいたいもの。
トリシアの死体が発見された現場で、セイディーとローリンズ刑事は初のご対面となったわけだが、映画の後半はこの2人が協力して、ヴァンパイア集団のボスであるビショップ(ジェームズ・ダーシー)と対決することになろうとは、私はもちろんあなたもきっと予想できないはず・・・?
<素人の探偵ごっこはヤバイ・・・?>
こうなると気になるのが、イーサンの言っていた文章と地図。そこで、セイディーが地図上に示された廃屋のような屋敷の中に入ってみると、その地下室には血染めのベッドが・・・。
そうなるとさらに気になるのが、なぜか連絡がとれなくなったイーサンのこと。そこで、彼のアパートを訪れてみるとカギはかかっていない。中に入ってみると、そこはもうメチャクチャに荒らされた後だった。部屋の中に入り、イーサンの名前を呼んでいたセイディーだったが、その時突然ドアが開き、1人の大きな男が入ってきたのでビックリ・・・。
こんな密室の中で、見知らぬ男と2人きりになったのではマズイと思ったセイディーは、とっさに「同じアパートの者ですが・・・」と言い訳したが、それが余計にまずかったよう・・・。「なぜバッグを持って入っているのだ」と追及された挙げ句、セイディーがバッグの中から催涙スプレーを取り出すより早く、男がセイディーの目に噴きかけた催涙スプレーによってセイディーは一気にダウン。
そして、イスに手を縛られた状態で目を覚ましたセイディーの前には、東洋人のポー(マコ)とビショップそしてセクシーな雰囲気を漂わせたイヴ(カーラ・グギーノ)が・・・。いくら敏腕記者といえども、やはり素人の探偵ごっこはヤバイ・・・?
<「復活」はイエス・キリストの専売特許・・・?>
イエス・キリストが十字架の上で磔にされたことは歴史上の事実だし、死んだはずのイエス・キリストが復活したことも歴史上の事実・・・?しかし、死者が復活するのは、何もイエス・キリストの専売特許ではなく、1度死んだはずのセイディーが復活してもおかしいはずはない・・・?
そんな理屈が通るのかどうかはわからないが、泣き叫ぶセイディーは肉体を弄ばれたうえ、ビショップたちによって首を掻っ切られ、その生き血を吸われて、トリシアと同じように打ち捨てられることに。そして、その死体は「ロサンゼルス検視所」の解剖室に。
復活劇が始まったのは、全裸で入れられていたスチール製のカンの中だが、この復活劇はちょっと安易すぎ・・・?なぜなら、突然目覚めたセイディーが、なぜ自分がそんなカンの中に密閉されて入っているのかよくわからないまま、足でカンを蹴っていると、なぜかそれだけでカンが開くことになったから。ひょっとして、そのカンは姉歯元一級建築士による耐震強度偽装マンションと同じように、強度に問題があったのかも・・・?
それはともかく、死者から復活したセイディーは、とりあえず患者服を身にまとい、病院から外に出て街をさまよい歩いたが、その中で自分の中に大きな異変が起きていることを悟らざるをえないことに。第1に目の前の鏡に自分の姿が映らない、第2に無性に太陽の光が眩しくて、サングラスが不可欠、そして第3に無性にお腹が減るところ、気がついてみるとホームレスの中年男の腕をかみ切ってその生き血をすすっている自分が・・・。こりゃ、定番のヴァンパイアのように口に牙は生えていないものの、今の私は人間ではなくヴァンパイアとして復活したのだと認識せざるをえないことに。こりゃ、たまらん・・・?
<死なない、死ねない、女ヴァンパイアの決心は・・・?>
人間としての死からヴァンパイアとしての復活へと、思いもかけない転身を遂げたことをセイディーが確信したのは、母親に電話をした時。母親は「セイディー、あなたなの?一体ナゼ・・・?」とビックリしたものの、妹は「姉さんは死んだはずよ」と取り合わない。そりゃ、誰だってタチの悪いイタズラ電話だと思ったのは当然・・・。
そんな自分に絶望したセイディーは、今ひっきりなしに車が走る幹線道路をまたぐ歩道橋の上。迷いに迷った挙げ句、遂に彼女は自ら歩道橋から転落していき、望みどおり(?)トラックの下敷きになったが、何と死なない、死ねないのがヴァンパイアらしい。謎の男アーチュロ(ジュリオ・オスカー・メチョソ)の介抱を受けたセイディーは、ヴァンパイアらしく驚異的な回復力を示したから、それにはセイディーもアーチュロもビックリ。
しかして、死なない、死ねない、女ヴァンパイアの決心は、自分を人間からヴァンパイアに変えてしまったビショップたちへの復讐。かくして、美しき女ヴァンパイアの先輩ヴァンパイアに対する復讐劇が始まることになったわけだが、そんなセイディーに対してアーチュロが与えた武器がなぜかボウガン。もっとも、ヴァンパイアは死なない、死ねないのに、こんな武器でホントに大丈夫・・・?
<復讐劇のサマをタップリと・・・>
この映画後半は、セイディーのヴァンパイアへの復讐劇が大展開されるから、ユア・サーマンが主演した『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』『キル・ビル~KILL BILL~Vol.2』(04年)と対比しながらその様子を楽しむのも一興。
ここで面白いのは、第1に、イヴへの復讐劇の中で、なぜセイディーが1度死んだにもかかわらず復活したのかについて、また第2に謎の男アーチュロが何者かについて、イヴが説明してくれること。第1の説明は、ヴァンパイア側の意思ではなく、結局セイディーの生きようとする力が強かったためらしい。つまり、イヴの言葉によると、普通は人間からヴァンパイアに変わるのに3日間はかかるらしいから、セイディーはかなりの特殊例・・・?第2の説明は、アーチュロはイヴたちの元リーダーだったが、ビショップによって追い出されたとのこと。なるほど、アーチュロがセイディーの復讐を応援したのは、セイディーのためだけではなく、自分の恨みも絡んでいたというわけだ・・・。
他方私によくわからないのは、新米のヴァンパイアであるセイディーがトラックに轢かれても死なないのに、なぜセイディーが放つボウガンの矢に射られたヴァンパイアたちは死んでいくのかということ。5番ホールスタートの話で書いたロイドもその1人だが、その他イヴもジェニー(サミーラ・アームストロング)も、なぜかわりと簡単にセイディーのボウガンによって死んでいくことに・・・?私の誤解や知識不足があるのかもしれないが、その点は正直今も納得できないところ・・・?
<ローリンズ刑事の執念にも注目>
シーンは少ないものの、セイディーのヴァンパイアへの復讐劇と同時平行的に描かれるのが、愛娘トリシアを殺されたローリンズ刑事の犯人に迫ろうとする執念。個人的感情をもって捜査されると困るから、当然ローリンズ刑事は捜査陣から外されていたが、彼は独自の立場で捜査陣以上の執念を燃やして、ビショップの本丸に近づきつつあった。
しかして、この映画のクライマックスは、『キル・ビル~KILL BILL~Vol.1』におけるブライドとビルとの対決と同じように、セイディー+ローリンズ刑事連合軍VSビショップとの対決。ローリンズ刑事はこのクライマックスシーンの中、ビショップから銃弾を浴びるものの、なぜか死んだはずの愛娘トリシアと再会することに・・・。しかし、いったん死んだはずのセイディーがヴァンパイアとして復活しているのであれば、ひょっとしてこのトリシアも・・・?
さあ、刑事であり、トリシアの父親であり、そして今はセイディーの盟友でもあるローリンズ刑事は、そのクライマックスにおいてどんな行動を・・・?
<ルーシー・リューのハードシーンもお楽しみに・・・>
この映画のプレスシートには、ルーシー・リューがはじめて主役に挑むこの映画で、「彼女はセイディーの繊細な心理面を表現しつつ、均整が取れた魅惑的なスレンダー・ボディをセクシーに躍動させ、過激なアクションや全裸逆さ吊りといった肉体の限界にも挑戦!!」と書いてある。もちろん、ビショップが待つ屋敷へ殴り込みをかけるまでにも、ルーシー・リューのかなりハードなシーンは見られたが、「全裸逆さ吊り」シーンはまだ拝めていないはず・・・?
すると、それはこれからのクライマックスシーンで必ず登場するはず。そうでなければ、このプレスシートは誇大記事になってしまうから・・・?しかしなぜ、殴り込みをかけた最後のシーンで、そんな全裸逆さ吊りシーンが登場するの・・・?、また、セイディーの復讐劇は、ビショップをやっつけることによって完成するの・・・?そして、ビショップへの復讐を完成させた後、セイディーは最終的に何を望んでいるの・・・?
そんなこんなの私の疑問、あなたの疑問は、クライマックスシーンで一挙に解決するはず・・・。したがって、ルーシー・リューの数々のハードシーンを楽しみながら、その結末はじっくりとあなた自身の目で・・・。そうすると、ホントのホントの最後に、ルーシー・リューを主役としたこの『ブラッド』を、『ブラッド』シリーズと最初に紹介した私の言葉の意味が、あなたにもわかるはず・・・?
2007(平成19)年8月17日記