TAXi④(フランス映画・2007年) |
<敷島シネポップ>
2007年8月26日鑑賞
2007年8月30日記
ダニエルが運転するTAXiプジョー407の性能はさらに進化したらしいが、マルセイユ警察の体たらくは相変わらず・・・?自らの手で凶悪犯を釈放してしまったミスを取り戻すため、ドジな刑事エミリアンはいかなる決断を・・・?結論ミエミエの単純なストーリーも、たまにはいいもの。夏バテを取り戻すためにも、90分間しっかり笑ってみては・・・?
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監督:ジェラール・クラヴジック
ダニエル(タクシー運転手)/サミー・ナセリ
エミリアン(刑事)/フレデリック・ディーファンタル
ジベール署長/ベルナール・ファルシー
ペトラ(エミリアンの妻、刑事)/エマ・シューベルイ=ヴィークルンド
アラン/エドュアルド・モントート
将軍/ジャン=クリストフ・ブーヴェ
ベルギー人(凶悪犯)/ジャン=リュック・シャール
アスミック・エース配給・2007年・フランス映画・91分
<3年ぶりの、本流『TAXi④』の面白さは・・・?>
リュック・ベッソン監督は、『アンジェラ』(05年)が監督としての10本目だったが、プロデュース作品も多く、『TAXi』シリーズはその代表。
ただし2004年の『TAXi NY』は、リュック・ベッソン監督がプロデュースしたものだが、それまでの『TAXi①②③』とは俳優も舞台も全く異なるアメリカ映画。この映画は、『シカゴ』(02年)で、アカデミー助演女優賞にノミネートされた黒人女優クイーン・ラティファがタクシードライバーとして主演したものでバカ面白いものだった(『シネマルーム6』230頁参照)。
それから3年後の今、
①スピード狂のタクシー運転手、ダニエル(サミー・ナセリ)
②いつもどこかイケてない刑事、エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)
③エミリアンの妻で美人の切れ者刑事、ペトラ(エマ・シューベルイ=ヴィークルンド)
④ちょっと間抜けな署長ジベール署長(ベルナール・ファルシー)
の4人が登場する『TAXi④』の大公開だが、さて、本流『TAXi』シリーズの面白さは・・・?
<「つかみ」はスタジアムまでの8分間・・・>
落語でも講義でも講演でも、最初に観客の気持をぐっと惹きつけるいわゆる「つかみ」が大切だが、それは映画も同じ。それを熟知しているリュック・ベッソンとジェラール・クラヴジック監督がこの映画で用意した「つかみ」は、電撃移籍した超VIPサッカー選手ジブリル・シセを試合開始まであと8分の間にスタジアムに運び込むこと。もちろん、その運転はダニエル。そして彼の純白のTAXiプジョー407を手配したのは、ちょっと間抜けな警官エミリアン。後部座席で着替えを済ませたジブリル・シセは、胸のすくようなダニエルの運転のおかげで、無事試合開始前にスタジアムのピッチの上に立つことに。
<9年の歳月は・・・?>
第1作目の『TAXi』が公開されたのは1998年だから、早いものでそれから既に9年。若かったダニエルもエミリアンも今や息子をもつ立場に。男女同権で、子育ては夫婦共同の義務とされているフランスでは、父親も子供の世話のためにかなりの時間を割かなければならないことは、ダニエルとエミリアンの姿を見ているとよくわかる。今日は子供たちのサッカーの試合にダニエルとエミリアンもつき合っていたが、2人とも結構それを楽しんでいる様子だから、それを続けることができればなにより。しかし・・・?
<凶悪犯はあのレクター博士と同じ・・・?>
少しずつ力を低下させているアメリカに対して、逆に近時、力をつけてきているのが、念願の統一通貨ユーロを実現し、加盟国も順次増えているEU(欧州連合)。しかし、そんな風に経済共同体が拡大すれば、それに伴って犯罪者が広域化していくのは必然的・・・?
それはともかく、今マルセイユ警察に舞い込んできた重大な任務は、ヨーロッパ最大の凶悪犯を護送するという任務。「ベルギーの怪物」と呼ばれる凶悪犯(ジャン=リュック・シャール)の犯罪歴はアル・カポネ以上で、何と武装強盗53件、殺人への関与122件というものすごさだ。
飛行機から降ろされ、マルセイユ警察に運ばれてきたそんな凶悪犯は、檻の中に入ったままだが、その檻を覆っているカバーを取り外してみると、そこには真っ赤な拘束具に全身を包まれ、手足を鎖に繋がれたロボットのような凶悪犯の姿が。こりゃまるで、あの『羊たちの沈黙』(90年)のレクター博士と同じだったが・・・?
<マルセイユ警察はドジが売り・・・?>
フランス映画である『TAXi』シリーズの売りは何よりもスピード感だが、それはさらに進化したというプジョー407の運転に限定したことで、ストーリー全体の売りはフランス映画らしいユーモア。もっとハッキリ言えば、マルセイユ警察のジベール署長(ベルナール・ファルシー)のおとぼけぶりと、エミリアン刑事のおとぼけぶり。これが現実であれば大変だが、映画では実にそれが面白いことがシリーズが続く最大の理由・・・。
『TAXi④』でも、ジベール署長のおとぼけとドジは至るところに登場し、笑いを誘っている。しかし、自らの手で凶悪犯の拘束具を脱がせたうえ、凶悪犯の巧みな騙しのテクニックに乗って彼を釈放してしまったエミリアンの失態は、お笑いではすまないのは当然。凶悪犯のアジトはモナコ。そんな情報を得たエミリアンは、ダニエルのプジョー407に乗ってマルセイユ警察を飛び出し、太陽の国モナコに向かったが・・・。
<凶悪犯は『オーシャンズ』以上の知恵者・・・?>
凶悪犯一味が狙うのは、モナコにある“ベルギー王立銀行”。貸し金庫の中身を根こそぎ奪うという壮大な計画だ。そして、凶悪犯であるベルギー人の周到な計画性と変装のテクニックを見ると、そのレベルは『オーシャンズ』以上・・・?
もっとも、一味の1人として大活躍している大女は、実はエミリアンの妻であり切れ者刑事のペトラ。彼女は、金庫破りの天才と偽って一味に潜入している、最近はやりの(?)潜入捜査官。金庫破りの協力をしつつ、あるタイミングで一味を一網打尽にしようという企みだが、さて・・・?
もちろん、ペトラには追跡班が尾行し連絡を密にしているのだが、犯行成功後、ペトラにホレた凶悪犯が彼女に求婚するというハプニングが発生したため、事態は大混乱・・・。まあ、こんなフランス的なおとぼけのユーモアのセンスは、いかにもアメリカ的な『オーシャンズ』以上・・・?
<リュック・ベッソンは大女が大好きだが・・・>
『TAXi』シリーズは、リュック・ベッソンの監督作ではなくプロデュース作品だが、エミリアン刑事の妻ペトラ役を演ずるエマ・シューベルイ=ヴィークルンドはシリーズの常連。間抜けでドジな夫に比べて、切れ者でセクシーそのうえ腕っぷしも強い大女というのがペトラのキャラだが、私が思うにペトラがそんなキャラになったのは、リュック・ベッソンがそんな大女が大好きなせい・・・?
そんな私の想像を確信とさせたのは、リュック・ベッソンの監督10作目となる『アンジェラ』を観た時。ホンモノのスーパーモデルというリー・ラスムッセンをヒロインに起用し、現実離れした内容のこの映画は、あまり大したものではなかった(『シネマルーム11』324頁参照)うえ、こんな大女は私には全然魅力なし。すると、『TAXi』におけるペトラも・・・?
<最後の勝利は誰の力で・・・?>
こんなお笑いを売りとした映画は、深刻な結末になることはありえず、ハッピーエンドに決まっている。つまり、ドジなマルセイユ警察であっても、最後は凶悪犯をやっつけ、貸し金庫から盗まれたものをすべて取り戻すことになるはず。
したがって、そこで興味の的は、誰のどんな活躍によってそれが実現するのか、ということになる。もちろん、そんな最後の舞台でもジベール署長やエミリアン刑事はきっとドジを踏み、役に立たないはず・・・。すると、そこで活躍するのは、TAXiドライバー、ダニエルの知恵とペトラのパワー・・・?
2007(平成19)年8月30日記