アフタースクール(日本映画・2007年) |
<GAGA試写室>
2008年3月28日鑑賞
2008年3月31日記
はじめて観た、二転三転、四転五転する内田けんじ監督・脚本作品の面白さは最高!特に味わいたいのは、大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人という3人の個性派俳優たちの競演(騙し合い?)と絶妙の演技力。『キサラギ』(07年)と同じように、賞レースに名乗りをあげること確実だ!原作モノに頼らず、こんなオリジナルな脚本を次々と映画化してもらいたいが・・・。
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監督・脚本:内田けんじ
神野良太郎(母校で働く中学教師)/大泉洋
北沢(探偵)/佐々木蔵之介
木村一樹(エリートサラリーマン、神野の中学時代からの親友)/堺雅人
美紀(中学時代のマドンナ)/常盤貴子
写真の女/田畑智子
大黒(梶山商事社長)/北見敏之
唐沢(梶山商事上層部社員)/奥田達士
片岡(昔からよく知るヤクザの組長)/伊武雅刀
2007年・日本映画・102分
配給/クロックワークス
<はじめて内田けんじ監督作品を>
1992年にサンフランシスコ州立大学芸術学科映画科に入学し、98年の卒業・帰国後、製作活動に入った内田けんじ監督は、劇場デビュー作となる『運命じゃない人』で第58回カンヌ国際映画祭・批評家週間にてフランス作家協会賞、最優秀ヤング批評家賞、最優秀ドイツ批評家賞、鉄道賞の4冠を獲得し、国内映画賞でも報知映画賞最優秀監督賞など8賞を受賞した若手有望監督。
そんな内田けんじ監督が監督・脚本した新作の宣伝文句は、「大人になった同級生と過ごす放課後(アフタースクール)には、予測不可能な展開が待っていた!」「コメディ?サスペンス?ラブストーリー?一筋縄ではいかない頭フル回転!驚きエンターテインメントムービー!」「騙されて、グッとくる!こんな映画観たことない!」というもの。
こんな宣伝文句を読み、これは何としても観なければと思ったが、その出来は想像以上・・・。
<3人の同級生(?)がいい味を!>
この映画の主人公は、母校で働く中学教師の神野良太郎。前半の彼は世間知らずでお人好しの教師そのものだが、後半はがぜん変身!
内田監督が最初にキャスティングを決めたのは、『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(08年)でも駐在さん役でいい味を出していた佐々木蔵之介。彼は、全く人間を信用せず、世間のウラばかりみて生きている探偵北沢のキャラを見事に演じているが、そんな彼とのコンビで絶妙の味を出す俳優を探していたらしい。そこで白羽の矢が立ったのが大泉洋。さあ、彼の主演男優賞にふさわしい演技をこの映画でタップリと!
もう1人の同級生は、梶山商事に勤めるエリートサラリーマンの木村一樹。一見正直者で二枚目の木村役を演ずるのは、現在NHK大河ドラマ『篤姫』で徳川家定(家祥)を演じている堺雅人。彼は中学時代のマドンナであった妻の美紀(常盤貴子)の出産が間近という状況下、神野がローンで買ったという高級車に乗って今日も出勤したが、さて、その行き先は・・・?
この映画は内田監督の脚本の面白さが第1のポイントだが、彼がキャスティングした大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人というひとクセもふたクセもある3人の俳優たちの演技力が第2のポイント。
<同窓会名簿の流出にご用心!>
私は07年4月に大阪大学法学部の同窓会である青雲会の副会長に就任した。副会長としての役割は各種会合でのあいさつなどいろいろあるが、青雲会の大切な仕事の1つは毎年の会員名簿づくり。探偵の北沢が中学校を訪れたのは木村を捜すためだが、そこで活用されたのが同窓会名簿。つまり、北沢は同窓会名簿を使い卒業生を装って中学校を訪れたわけだ。私も同窓会名簿の流出に用心しなければ・・・。
会話の中で北沢が14期の島崎と名乗ったおかげで引き合わされたのが同級生(?)の神野。神野は夏休みにもかかわらず部活動のために出勤していたのだが、うまく調子を合わせた神野は、「な~んとなく島崎のことを覚えている」と発言したから、以降2人の会話があれこれと弾み始め、その結果、なぜかその日神野は北沢の木村捜しの作業につき合うことに。そこで交わされる自称島崎と神野との珍問答には、試写室のあちこちから笑い声が・・・。
<最初のテーマは木村捜しから・・・>
探偵の北沢が木村捜しを始めたのはもちろん依頼者があってのことだが、その依頼者も何かワケあり気・・・?北沢(島崎?)が神野に頼んでそんな依頼者の尾行を始めたのはさすが目のつけどころがシャープ!
依頼者は木村が働く梶山商事の上層部社員唐沢(奥田達士)だったが、その背後には大黒社長(北見敏之)の存在もチラホラと。さらに驚くことに、彼らは北沢が負い目をもっているヤクザの組長片岡(伊武雅刀)ともつながっているらしい。あんな優良企業がヤクザとつながりを・・・?そりゃヤバイ。そして、そんな彼らが、なぜ今必死になって木村捜しをやっているの・・・?
<犯罪のカゲに女あり・・・?>
北沢(島崎?)がにわか仕立ての素人探偵神野を強引に使いながらさらに調査を続けていくと、片岡が自分自身の経営する高級クラブで働いていた女あゆみの行方を捜していたことがわかり、また、この高級クラブは梶山商事が頻繁に利用していたことが明らかになった。さらに、なぜか木村はあゆみが消えたその日にこの店にきていたというショッキングな情報が、クラブで働いていたという女からの聴き取りによって明らかに。
一体木村って何者・・・?ホントに真面目なエリートサラリーマン・・・?ひょっとして、「犯罪のカゲに女あり」の格言がモロに該当する展開に・・・?
<興味深い、北沢VS神野の人間論争第1ラウンド!>
ジキル博士とハイド氏ほどではないにしても人間は誰でも二面性があり、表の顔と裏の顔があるもの。したがって、神野が「木村は真面目なサラリーマンだ」。したがって「女絡みの高級クラブや片岡のようなヤクザと関係しているはずがない」と弁明し続けるのは、ちょっと一面的・・・?逆に私には、探偵稼業の中で人間の裏の部分やダーティな部分をイヤというほどみてきた北沢の「中学校の先生なんかに人間がわかってたまるか!」と吐くように言うセリフの方が説得力がある。
それにもかかわらず、神野は「あいつはそんな奴じゃない。真面目で人が良くて、中学の頃から変わっていない」と弁明したが、それに対して北沢から「変わってないって、なんでわかるんだ。お前は本当に友達のすべてを知ってるのか」と再反論されるとギャフン。このように北沢VS神野の人間論争第1ラウンドは圧倒的に北沢の勝ち。しかし、その後第2ラウンド、第3ラウンドでは・・・?
<書きたい!でも書けない!>
『ワイルドシングス』(98年)が最高に面白かったのは、話が二転三転、四転五転、七転八転したから(『シネマルーム1』3頁参照)。また、『キサラギ』(07年)がすばらしかったのも、アイドル如月ミキの死因をめぐって5人の男たちの怒涛の推理が予測不可能な展開をみせたため(『シネマルーム13』61頁参照)。
内田けんじ監督がそんな映画を目指したのどうかは知らないが、『アフタースクール』はここから物語が二転三転、四転五転していくからお立ち会い!
私としてはそれを徹底的にここで紹介し分析したいのだが、それは絶対にダメ!だって、プレスシートのストーリーでもほんのさわりしか紹介していないのだから。書きたい!でも書けない!このフラストレーションは大きいが、ここはじっと我慢しなければ・・・。
<2人の女優にも注目!>
この映画は大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人という3人の個性派男優の競演(駆け引き?騙し合い?)が最大のポイントだが、2人の女優にも注目!
その第1は、神野と木村の中学時代のマドンナで、今は木村の妻として出産が迫っている美紀を演ずる常盤貴子。産まれたばかりの赤ちゃんを抱いて、「私はこの子と一緒に過ごせるだけで幸せよ」と泣かせるセリフを吐いているが、エリートサラリーマンの妻としてはあまり似つかわしくないこのセリフを聞くと、何かウラがありそう・・・?
第2は、北沢が依頼者から渡された1枚の写真に鮮明に写っている女を演ずる田畑智子。これはきっとヤクザの片岡が捜しているクラブの女あゆみ・・・?木村は妻の出産に立ち会いもせず、この写真の女と親しげにマンションの中に消えたというから、そりゃ一体どういうこと・・・?
冒頭のキャスト紹介に氏名をきちんと書いてなかったり、「写真の女」と中途半端な(思わせぶりな?)表記しかしてないのは、決して手を抜いているからではなく、それ以上書けないため。こんな映画は、とにかくあなたに直接観てもらうしかない。観てソンをすることは絶対ないと断言できるから、是非映画館へ!
2008(平成20)年3月31日記