インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(アメリカ映画・2008年) |
<試写会・TOHOシネマズ梅田>
2008年5月29日鑑賞
2008年5月31日記
インディ・ジョーンズが19年ぶりに復活!4作目のお宝は、クリスタル・スカル(水晶のドクロ)だが、その価値は・・・?効用は・・・?ケイト・ブランシェットがソ連の工作員として登場するが、1957年当時の「東西冷戦」構造って、今ドキの若者にわかる・・・?また、3作合計約12億ドルの興行収入をあげたドル箱シリーズの爆発力は、アメリカの国力が低下した今でもなお健在・・・?
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監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作総指揮:ジョージ・ルーカス、キャスリーン・ケネディ
脚本:デヴィッド・コープ
原案・ストーリー:ジョージ・ルーカス
インディアナ・ジョーンズ(考古学者)/ハリソン・フォード
イリーナ・スパルコ(ソ連工作員のチーフ)/ケイト・ブランシェット
マリオン・レイヴンウッド(冒険家の娘)/カレン・アレン
ジョージ・“マック”・ミケーレ(インディの相棒)/レイ・ウィンストン
オックスリー教授/ジョン・ハート
チャールズ・スタンフォース(大学の学部長)/ジム・ブロードベント
マット・ウイリアムズ(反抗的な若者)/シャイア・ラブーフ
2008年・アメリカ映画・122分
配給/パラマウント ピクチャーズ ジャパン
<あれも1位!これも1位!日本では?最終的には?>
ハリソン・フォード主演の『インディ・ジョーンズ』シリーズは、①『レイダース 失われたアーク<聖櫃>』(81年)、②『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84年)、③『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(89年)に続く4作目だが、3作目までの興行収入は、全世界で①3億8400万ドル、②3億3300万ドル、③4億7400万ドルとすごいもの。そして、5月22日から全米で公開された19年ぶりの新作の興行収入は、あれも1位!これも1位!とすごい数字をあげているらしい。
ちなみに、私が映画検定受験のために『映画検定 公式テキストブック』を勉強して得た知識では、全世界で最高の興行収入をあげた映画は『タイタニック』(97年)の18億4500万ドルで、全世界での興行収入が10億ドルを超えた最初の映画とのこと(306頁参照)。『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』の日本での公開は6月21日からだが、最近はやりの「先行上映」も含めて「必ず稼げる大作」にマスコミの話題が集中するから、『インディ・ジョーンズ』シリーズ4作目の日本での興行収入の期待は大!しかして、最終的な全世界での興行収入は・・・?
<最高の映画収入をあげた俳優は・・・?>
同じく『映画検定 公式テキストブック』306頁によれば、最高の映画収入をあげた俳優は、女優ではジュリア・ロバーツだが、男優ではハリソン・フォード。2005年12月までにハリソン・フォードが主演した27本の映画は33億6966万2963ドルの興行収入をあげているが、そのうち『インディ・ジョーンズ』シリーズの3本で合計約12億ドルを稼いでいることになるから、彼にとっても『インディ・ジョーンズ』シリーズはまさにドル箱!
<やはりハリソン・フォードの方が上・・・?>
天才歴史学者兼スゴ腕トレジャー・ハンターであるベン・ゲイツが全世界を股にかけて活躍する映画がニコラス・ケイジ主演の『ナショナル・トレジャー』(04年)と『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』(03年)。1964年生まれのニコラス・ケイジは俳優としての幅が広く、娯楽作からシリアスものそしてアクションものまで何でもこなす名優だが、1942年生まれの大先輩ハリソン・フォードには、前述の映画収入トータルで到底及ばないはず。したがって、やはり俳優としてはハリソン・フォードの方がニコラス・ケイジより上。
他方、『ナショナル・トレジャー』シリーズはまだ計2作だが、1981年から2008年までの27年間に4作もつくられた『インディ・ジョーンズ』シリーズにおける、ハリソン・フォード扮する考古学者インディ・ジョーンズの知識の量は生半可ではない。したがって、今回のマスコミ先行試写に向けては、「INDIANA JONES Collectors Book(MEDIA KIT)」が配布されたが、そこに見る、考古学者兼冒険家のインディ・ジョーンズが訪れた世界各国とその中で発見された秘宝の数々、崇拝物の数々はおびただしい量。したがって、考古学者(歴史学者)としての知識量と冒険量においてもやはり、インディ・ジョーンズの方がベン・ゲイツより上・・・?
<今回のキャスティングの妙は?>
「シリーズもの」では1作ごとのレギュラー陣とゲスト陣のバランスが大切。単純で画一的なパターンを売りモノにした(?)『寅さん』シリーズは、不動の舞台、不動のレギュラー陣だったから、そのポイントは1作ごとのゲストである「マドンナ」。これに対して『007』シリーズは、舞台も政治状況も敵役も変わるから、レギュラー陣はごくわずか。しかし、ストーリーの組立ては不動だから、ここでもポイントは1作ごとの「ボンドガール」。そんな観点で見ると、さて『インディ・ジョーンズ』4作目は・・・?
『インディ・ジョーンズ』にはレギュラー陣はおらず、インディ・ジョーンズのキャラ以外は1作ごとにオリジナルに俳優陣が入れ替わっている。そんな中、唯1人の復帰組が、1作目の『レイダース 失われたアーク』で激しい気性の冒険家の娘マリオン・レイヴンウッドを演じたカレン・アレン。全然家にいない冒険家インディ・ジョーンズに愛想を尽かして離婚した彼女も、インディ・ジョーンズと同じだけ年をとったはずだが、この4作目では一体どんな役割を・・・?ちなみに、冒険の旅を共にする中でマリオンとインディとの恋仲復活の可能性は・・・?
<注目の「ゲスト」と「新人」は?>
4作目注目の「ゲスト」は、2007年度のアカデミー賞で、主演女優賞(『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(07年))と助演女優賞(『アイム・ノット・ゼア』(07年))に同時ノミネートされた、名女優ケイト・ブランシェット。彼女はソ連の工作員のチーフであるイリーナ・スパルコ役で登場するが、インディ・ジョーンズの敵役としてのケイト・ブランシェットの存在感は・・・?
他方、『トランスフォーマー』(07年)のサム・ウイットウィッキー役に抜擢されて一躍全世界の注目を集め、『ディスタービア』(07年)で私も注目した若手NO1俳優がシャイア・ラブーフ。そんな「新人」をインディ・ジョーンズに反抗的な若者マット・ウイリアムズ役として登場させ、冒険の旅の相棒(助手?)とさせたのは、さすが目のつけどころがシャープ!当初はリーゼントの髪をなでつけるだけの軟弱な若者に見えた(?)彼は、映画全編にわたって華々しい活躍を見せるが、終盤に明かされる彼の出生の秘密にも注目を!
<「二足のわらじ」がインディ・ジョーンズ人気の源泉・・・?>
考古学者といえば普通、研究室の中に閉じこもって青白い顔をしながら、カビの生えたような本を読んでいる軟弱な奴・・・?あるいは、発掘の現場で何日もハケを持ったままへたり込んで作業を続けているヘンな奴・・・?他方、有名な冒険家としては、日本にも亡植村直己や三浦雄一郎あるいは「太平洋ひとりぼっち」の堀江謙一たちがいるが、彼らはさまざまな分野の冒険にチャレンジし、それを達成することに満足しているだけで、学問上何らかの貢献をしているわけではない。
その点、インディ・ジョーンズは考古学者でありながら、教室を飛び出し、全世界を股にかけてロマン溢れる旅を続ける中、肉弾をぶつける大冒険を展開し、目標を達成していくのだからすごい。まさに考古学者と冒険家という二足のわらじをはき、両者とも見事にこなしているわけだ。『インディ・ジョーンズ』が大ヒットしたのは、そんな考古学者兼冒険家という二足のわらじをはくインディ・ジョーンズの魅力のため・・・?
これに対して、『007』シリーズのジェームズ・ボンドはスパイとしては有能だが、女にはてんで弱いという長所と短所のアンバランスさが人間的な魅力(?)だが、インディ・ジョーンズは知識量と行動力の両方が魅力だから、企画さえバッチリ準備できれば何作つくっても大ヒット・・・?ちなみに日本では、早稲田大学客員教授の吉村作治がインディ・ジョーンズに近い、考古学者と冒険家の二足のわらじをはいているヒーロー・・・?
<今ドキの若者に「米ソ冷戦」がわかるかナ・・・?>
『インディ・ジョーンズ』シリーズは、1作目が1936年、2作目が1935年、3作目が1938年といずれも第2次世界大戦直前の時代設定だった。4作目は3作目の1938年から19年後の1957年だから、インディ・ジョーンズも19歳だけ年をとったことになる。その年にして、4作目でインディ・ジョーンズが演ずる冒険活劇アクションはご立派!
それはともかく、1957年といえば、今は消滅してしまったソ連邦(荒っぽく言えば、メドベージェフ大統領とプーチン首相の二頭政治が始まったロシアの前身?)が「アメリカの敵」として存在し、軍拡競争をくり広げ、今にも核戦争・第3次世界大戦が始まりそうだった時代・・・?2008年8月8日に北京オリンピックを開催するほどの大国となった中国は、まだまだ成立したばかりの貧しい後進国だった、今から51年前の時代だ。
4作目の注目「ゲスト」は、ケイト・ブランシェット演ずるイリーナだが、彼女たちソ連の工作員がアメリカのサウスウエスト砂漠にある秘密の研究所に潜入したのはなぜ・・・?インディとその相棒マック(レイ・ウィンストン)は、彼女たちから何を要求されたの・・・?その魔の手を逃れて大学に戻ってきたインディに迫ってくる圧力は・・・?そんな風に物語が展開していくのだが、その前提として、「米ソ対立」「東西冷戦」という当時の政治情勢を理解する必要がある。さて、今ドキの若者たちにそれがわかるかナ・・・?
<4作目のお宝は・・・?>
『インディ・ジョーンズ』シリーズは考古学者インディ・ジョーンズによる冒険の旅をテーマとしているだけに、何かと曰く因縁のついた(考古学上の貴重なストーリーに裏づけられた)秘宝(お宝)が毎回登場するのが大きな特徴。契約の箱、聖杯、サンカラ・ストーン、ヌハチの遺骨、ラーの杖の頭部、コロナードの十字架、黄金の像らがそれだが、『インディ・ジョーンズ』ファンはこれらの意義やその果たした役割を十分ご承知のはず・・・。
4作目に登場するお宝は、美しいような気味の悪いようなアケトーのクリスタル・スカル(水晶のドクロ)。その曰く因縁とその発見の考古学的な価値については、映画の中でしっかり勉強してもらいたい。4作目の冒険の旅は、インディに対して反抗的な若者マットが持ち込んだ計画にインディが乗ったことによって始まることに・・・。
秘宝クリスタル・スカルが隠されているのは、ペルーの地の果てにあるという「黄金の都」だが、それを目指すのは「インディ・ジョーンズ様ご一行」だけではなく、あのソ連工作員たちも同じだったから大変!さあ、秘宝クリスタル・スカルを求めるインディたちの冒険の旅はいかなる展開に・・・?
<ハリウッド大作なら、荒唐無稽な物語でも!>
『インディ・ジョーンズ』シリーズの脚本(脚色)の担当者は毎回替わっているが、全4作を通じて監督はスティーヴン・スピルバーグだし、原案はジョージ・ルーカスの盟友コンビ。私は『トランスフォーマー』を残念ながら見逃したし、『宇宙戦争』(05年)は「それなりに十分な娯楽性を満たす映画であることは認めよう。しかし、所詮それだけ・・・?」という評価で星3つ(『シネマルーム8』114頁参照)。また、ジョージ・ルーカス監督の『スターウォーズ エピソード3 シスの復讐』(05年)も星4つだが、「・・・も悪くはなく十分に楽しめるものだが、そんなに大騒ぎするほどのもの・・・?」という評価(『シネマルーム8』121頁参照)。まあ、還暦が近い年になれば、この手の映画も悪くはないからまあ観ておこうという程度で、すごく感動するものではないということだ。
しかして、『インディ・ジョーンズ』4作目も、『ナショナル・トレジャー』と同じような荒唐無稽な物語・・・?しかし、そんな荒唐無稽な物語を考え出し、金に糸目をつけずこれだけ大規模な映像にまとめあげたのはさすがハリウッド!つまり、いくら荒唐無稽な物語であっても、全世界から興行収入をあげることができるハリウッド大作ならオーケーというわけだ。現状がそんななら、そんな現状に合わせて、私も荒唐無稽な物語をせいぜい楽しまなくっちゃ・・・?
2008(平成20)年5月31日記