ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝(アメリカ映画・2008年) |
<東宝東和試写室>
2008年7月30日鑑賞
2008年7月31日記
舞台をエジプトから中国に移し、始皇帝と兵馬俑を基調とした物語にしたのは、北京五輪目当て・・・?売りモノは前2作と同じく、CGを活用した一大スペクタクル!したがって、夏休みのお楽しみにはもってこい・・・?『インディ・ジョーンズ』は世代交代なく「パート4」を迎えたが、『ハムナプトラ3』はジュニアが登場し、パパを助けて大活躍。そんなオコーネルファミリーの変化にも注目を!
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監督:ロブ・コーエン
リック・オコーネル(フランス外国人部隊の元傭兵、エヴリンの夫)/ブレンダン・フレイザー
皇帝、シー・ホワンディ/李連杰(ジェット・リー)
エヴリン・オコーネル(考古学者兼作家、リックの妻)/マリア・ベロ
ジョナサン(エヴリンの兄)/ジョン・ハナ
ツイ・ユアン(呪術師の娘)/楊紫瓊(ミシェル・ヨー)
ミン・グオ(皇帝の将軍)/ラッセル・ウォン
マグワイア(リックの仲間)/リアム・カニンガム
アレックス・オコーネル(リックとエヴリンの息子)/ルーク・フォード
リン/イザベラ・リョン
ヤン将軍/アンソニー・ウォン
2008年・アメリカ映画・120分
配給/東宝東和
<舞台も監督も一新!>
『ハムナプトラ1』のサブタイトルが『失われた砂漠の都』、『ハムナプトラ2』のサブタイトルが『黄金のピラミッド』だったから、『ハムナプトラ』と言えばエジプト、エジプトと言えば『ハムナプトラ』だった。ところがパート3の舞台は、『呪われた皇帝の秘宝』というサブタイトルからわかるように、同じ古代文明でも、紀元前3000年のエジプトの古代、新王朝から約3000年歴史を進ませ、BC221年に成立した秦の始皇帝時代の中国に。これは2008年8月8日から始まる北京オリンピックに向けて中国へ世界的関心が集まることを期待したもの・・・?
また、監督も『ハムナプトラ』1、2のスティーヴン・ソマーズがプロデューサーに専念した結果、『ハムナプトラ3』では『トリプルX』(02年)や『ステルス』(05年)のロブ・コーエンに交代した。1999年7月4日に観た『ハムナプトラ』も、2001年7月29日に観た『ハムナプトラ2』も私は評論は書いていないが、星の数はいずれも1つとその評価は低かった。そこでさて、『ハムナプトラ3』の評価は・・・?
<オコーネルファミリーの変化は?>
『ハムナプトラ1』の主人公は、1923年のエジプトを舞台とした若き冒険家リック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー)だった。続く『ハムナプトラ2』は、それから10年後の1933年のエジプトが舞台。しかして、『ハムナプトラ3』では、冒頭に1946年のロンドンで、今は冒険の世界から引退し悠々自適の余生を楽しむオコーネル夫婦が登場する。もっとも、リックの妻である考古学者兼作家のエヴリンを演ずる女優は、レイチェル・ワイズからマリア・ベロに変わっているが、これは離婚によるものではないから念のため。
さらに、オコーネルファミリーの大きな変化は、『ハムナプトラ3』には、22歳の若きエリート、アレックス(ルーク・フォード)が準主役で登場すること。ハーバード大学に留学中の彼がなぜ皇帝陵の発掘に精を出しているの・・・?また、なぜハーバード大学にいるはずのアレックスとロンドンにいるはずのオコーネル夫妻が上海のナイトクラブで出会うの・・・?そこらあたりは、あなた自身の目で・・・。また、『ハムナプトラ』1、2に登場していたお調子者のエヴリンの兄ジョナサンは同じジョン・ハナが演じている。
こんなオコーネルファミリーの変化に注意!
<中国人スターたちは? その1>
エジプトを舞台とした『ハムナプトラ』1、2では、エジプト側(?)の登場人物たちもハリウッド俳優で固めることができたが、舞台を中国に移すと、中国人俳優の出演が不可欠。そこで、注目されるのがその顔ぶれだが、李連杰(ジェット・リー)の出演はロブ・コーエンが監督を引き受けるについての絶対条件だったらしい。したがって、ジェット・リーの他、楊紫瓊(ミシェル・ヨー)が出演できたのは、ロブ・コーエン監督にとって期待以上の満足。
もっとも、私が7月26日に観た『ドラゴン・キングダム』(08年)ではじめてジャッキー・チェンと共演したジェット・リーは、彼の本芸である見事なカンフーを見せてくれたが、『ハムナプトラ3』での彼の役は自然界を操る魔力を持った秦の始皇帝役。したがって、出番は多いものの、凛々しい(?)始皇帝役から無惨な姿に化けてしまう呪われた皇帝役まで、さらに3つの頭を持つドラゴンへの変身をはじめとするさまざまなクリーチャーへの変身まで変幻自在にさまざまな役柄を演じなければならないから大変。他方、ミシェル・ヨーも『レジェンド 三蔵法師の秘宝』(02年)や『シルバーホーク』(04年)のように主役として自由にそのアクション能力を発揮できるわけではないから、少し欲求不満・・・?
<中国人スターたちは? その2>
この2人に対して、『ハムナプトラ3』で注目すべき若手中国人女優が、リン役を演ずるイザベラ・リョン。1988年にマカオに生まれた彼女は、香港で最も人気のある女性シンガー兼女優の1人で、新人賞などを受賞しているとのことだが、ハリウッド映画出演はこれがはじめて。さあそんな彼女は、章子怡(チャン・ツィイー)、徐静蕾(シュー・ジンレイ)、周迅(ジョウ・シュン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)という「中国四大女優」の後を追う存在となれるだろうか・・・?最近少しずつ中国の新人美人女優に詳しくなっている私としては、今回はじめて観たイザベラ・リョンが一発屋で終わらないことを期待したいが・・・。
『ハムナプトラ3』にはもう1人『インファナル・アフェア』シリーズ等で有名な香港の大スター、アンソニー・ウォンが、映画の後半ヤン将軍役で登場する。ヤン将軍は中国を世界の最強国にするべく、皇帝復活をたくらみ、私設軍隊を率いて皇帝に仕えるという役だが、こんな中途半端な悪役は、アンソニー・ウォンにとってかなり欲求不満だったのでは・・・?
<呪いの始皇帝と呪いの兵馬俑に興味津々>
私が兵馬俑を見学したのは、2001年8月9日~14日の西安・敦煌旅行によるもの。それによって、大いなるカルチャーショックを受けた私は、以降中国や中国映画への興味と関心が広がっていくことに。
そんな私だから、エジプトから中国へ舞台を移した『ハムナプトラ3』の冒頭で紹介される、始皇帝の不老不死の薬にまつわる、呪術師の娘ツイ・ユアン(ミシェル・ヨー)と皇帝の信頼するミン・グオ将軍(ラッセル・ウォン)との物語に興味津々。さらに、ハーバード大学に留学しているはずのリックとエヴリンの息子アレックスが、2000年前の皇帝陵を発掘している様子にも興味津々。
アレックスが発掘した皇帝のミイラは上海博物館に収められていたが、ひょっとして何らかの力によってこんなミイラが復活したら・・・?そして、西安の地に眠る皇帝の忠実な部下である兵馬俑の兵士たちが生き返ったら・・・?ロブ・コーエン監督と共に(?)、中国好きの私はそんな想像で楽しみいっぱい・・・。
<新たなクリーチャーは過剰サービス?>
『ハムナプトラ1』には墓所に潜む肉食の残忍なスカラベが登場し、『ハムナプトラ2』には大巨人スコーピオン・キングが登場したが、『ハムナプトラ3』最大の見どころは、始皇帝の命令によって甦った兵馬俑の兵士たちと、ツイ・ユアンによって呪いを解かれたミン・グオ率いる万里の長城建設のため生き埋めにされた奴隷軍たちとの激突。
したがって、私はそれで十分『ハムナプトラ』特有のテイストを満喫できるのだが、『ハムナプトラ3』はさらにヒマラヤ山脈の頂上で展開される大バトルの中で起きた爆発によって目覚めた、チベットの山奥に生息しているイエティ(巨大な雪男)を登場させたり、皇帝が3つの頭を持った龍に変身するなど新たにユニークなクリーチャーを登場させている。これは、夏休みにわざわざ『ハムナプトラ3』を選んで観に来てくれた家族へのサービス(?)だろうが、ポン・ジュノ監督の『グエムル 漢江の怪物』(06年)のように、それをメインにして観客を呼ぶクリーチャーならともかく、始皇帝と兵馬俑の兵士そして反皇帝軍で十分『ハムナプトラ』のテイストを味わっている私の目には、過剰サービス・・・?
<3つの見どころを心ゆくまで・・・>
『ハムナプトラ』1、2の合計で興行収益は10億ドル(1000億円)を突破したらしいが、それは『インディ・ジョーンズ』シリーズとよく似た(?)荒唐無稽な物語と、技術の粋を尽くした華々しいCG撮影のおかげ・・・。したがって、『ハムナプトラ3』がその「良き伝統」を継承したのは当然。
リックとエヴリンとのロマンスは横に置き、『ハムナプトラ3』のチェイスとバトルにおける3つの見どころは、①上海の町中を爆走する奇想天外なチェイス・シーン、②ヒマラヤ山脈の断崖絶壁で繰り広げられるドハデなバトル・シーン、③兵馬俑から変身した数万の皇帝軍と亡霊の姿から蘇った反皇帝軍が、万里の長城でぶつかりあう超スペクタクルな合戦シーン。
圧巻は、クライマックスにおける皇帝軍と反皇帝軍との激突だが、『ロード・オブ・ザ・リングー王の帰還ー』(03年)(『シネマルーム4』44頁参照)におけるベレンノール野でのローハン軍とサウロン軍との激突と対比しながら、そのド派手な戦いぶりを心ゆくまで楽しもう。
2008(平成20)年7月31日記