LAW DE SHOW [44] 『12人の怒れる男』 |
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新聞記事 大阪日日新聞2008年9月掲載分
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「あの名作」以上に「この名作」必見!
ハリウッド映画至宝の陪審ドラマ『十二人の怒れる男』(1957年)が今ロシアでリメーク。そう聞くと法曹関係者は驚くはず。だって、ロシアは陪審制? 刑法・刑事訴訟法は? 映画ファンはそんな理屈は抜きに、陪審員の息詰まる評議に注目したい。
米版では、第一級殺人容疑の少年に「全員一致で有罪の評決を下し早く家路に」との思惑に反してヘンリー・フォンダ扮する陪審員8号が無罪に挙手。そこから暑い季節の中、熱い議論が始まったが、チェチェン人の少年がロシア人の養父を殺害したという事件を評議する露版は?
争点は①「殺してやる」と叫んだ少年の言葉の信憑性は? ②被害者が倒れる姿を「目撃した」という証人の証言の信憑性は? ③ナイフの扱い方は不自然か?─など米版とほぼ同じだから、評議の流れもほぼ同じ。
大きく異なるのは、露版では少年を裁くについて陪審員が一人一人自分の人生と向き合わざるをえなくなること。そのため90分の米版に対し露版は160分の長尺に。人種偏見男、ユダヤ人、旅芸人、医師、TV会社役員、建築家等々の陪審員が激動の現代ロシアの中で生きてきた道は壮絶。円熱した俳優たちが独白するそれぞれの人生の重みが有罪無罪の評決の分岐点となっていくサマは圧巻。
建築家の陪審員11号が語る陰謀説の仮説も説得力十分だ。またミハルコフ監督自ら演ずる存在感タップリの陪審員長が最後まで有罪に固執したのは、ロシア特有の政治情勢に呼応したもので実に興味深い。白熱する彼らの議論は絶品で、これぞ日本人も必見!
来年5月から実施される裁判員裁判の雲行きが怪しい今、国の総力を挙げた米露両作品の上映会と勉強会が不可欠では?
通常版の評論もぜひどうぞ!! ⇒ 『12人の怒れる男』