マンマ・ミーア!(アメリカ映画・2008年) |
<試写会・TOHOシネマズ梅田>
2008年10月24日鑑賞
2008年10月28日記
ABBAの数々のヒット曲に乗せて展開される楽しいミュージカル映画の主役は、何とメリル・ストリープ!他方、3人の父親候補者に招待状を送るという大胆な娘は、新進女優が!理屈は不要。母娘の愛情をしっとりと感じ取り、それを支える男たち女たちと一緒にノリノリになれば、それでオーケー。アメリカ発の世界的規模の金融危機が広がる中、こんな映画で不景気ムードを吹っ飛ばさなくっちゃ。
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監督:フィリダ・ロイド
ドナ(小さなホテルの経営者)/メリル・ストリープ
ソフィ(ドナの一人娘)/アマンダ・セイフライド
サム(建築家)/ピアース・ブロスナン
ハリー(銀行マン)/コリン・ファース
ビル(スウェーデン人、冒険家)/ステラン・スカルスガルド
スカイ(ソフィの結婚相手)/ドミニク・クーパー
ロージー(料理研究家)/ジュリー・ウォルターズ
ターニャ(整形の達人)/クリスティーン・バランスキー
2008年・アメリカ映画・108分
配給/東宝東和
<ミュージカル女優メリル・ストリープに注目!>
メリル・ストリープが『マンマ・ミーア!』ではじめてミュージカルに挑戦!メリル・ストリープ演ずるドナは、エーゲ海に浮ぶギリシャの美しいリゾート、カロカイリ島の小さなホテルを女手ひとつで経営しながら、一人娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)を今日まで育て上げてきたシングルマザー。いよいよ明日はそのソフィがスカイ(ドミニク・クーパー)と結婚する日だ。
ドナは父親はわからないと正直にソフィに説明しており、ソフィはそれを十分理解してくれているはず。したがって、明日の結婚式は「父親レス」。それを当然のこととしてドナは今日までひたすら娘の幸せを願い、明日の結婚式に向けて丹精込めた準備をしていたが、そんな中突然3人の父親候補が島を訪れてきたからビックリ。一体なぜ?こんな偶然ってあるの?そんな風に戸惑いかつ怒る母親の姿をさすが演技派女優メリル・ストリープが表情豊かに演じている。
他方、意外に(?)歌も上手。さらに、60歳近いおばさんながら、結構派手なアクションにも挑戦し、楽しいミュージカル『マンマ・ミーア!』を盛り上げている。まずは、そんなメリル・ストリープに注目!
<ソフィ役は誰が?>
このミュージカルを観る人は、多分既にそのストーリーを知っている人が多いはず。そんな人の興味の第1は、ソフィ役を誰が演じるのかということだ。その役を勝ち取ったのは、熾烈なオーディションを勝ち抜いたアマンダ・セイフライド。
ソフィ役に必要なのは、歌と演技はもちろんだが、それ以上に結婚直前の娘らしい繊細さと、3人の父親候補に手紙を送るという大胆な行動力が必要。身体全体でそれを表現する女優として、監督のフィリダ・ロイド、脚本家のキャサリン・ジョンソン、製作のジュディ・クレーマーという3人の女性たちが白羽の矢を立てたのがこのアマンダ・セイフライドだ。
映画冒頭のナンバーは、まずソフィの歌う『I Have A Dream』から。このオープニングによって、たちまちソフィの存在感とアピール力はバッチリ。さあ、そんなソフィが今ポストに投函した3通の手紙の持つ意味は?
<父親捜しが1つのテーマ>
『マンマ・ミーア!』のテーマの1つは、嫁いでいく娘の父親捜し。そりゃスカイとの結婚が決まったソフィにしてみれば、ヴァージン・ロードを父親にエスコートしてもらいたいと願うのは当然。そこでソフィが決断したのは、ほぼ同じように父親の可能性のある3人の男たちに対して結婚式の招待状を送ること。客観的に考えれば、これはかなりムチャクチャな手段で、20歳の女の子の浅知恵かもしれないが、そんな行動から生まれる物語が『マンマ・ミーア!』の基本なのだ。
そんな3人の父親候補者とは、建築家のサム(ピアース・ブロスナン)、銀行マンのハリー(コリン・ファース)、スウェーデン人冒険家のビル(ステラン・スカルスガルド)という全然タイプの違う3人の男たち。なぜ、3人もの父親候補者が?それは20年前、ドナがごくわずかの「時間差」で次々と3人の男たちと子供ができる「あの行為」をしてしまったため。そう聞くと、ドナはいかにも淫乱女と誤解されそうだが、それにはそれなりの理由と事情が・・・。医学的に考えてソフィの父親はこの3人の男の誰かには違いないのだが、さてソフィの父親は3人のうちの誰?
それは、DNA鑑定をすればすぐに確定するはず。そんなことを言うあなたは、このミュージカルを楽しむ資格なし。『マンマ・ミーア!』はそんな理屈ではなく、心と身体で楽しむミュージカルなのだ。
<ドナの2人の親友は?>
『マンマ・ミーア!』の面白いところは、かつてドナを中心に組んでいた「ドナ&ザ・ダイナモス」という3人のおばさんバンドが活躍するところ。ABBAの大ヒット曲『Dancing Queen』や『Mamma Mia!』など数々の名曲を歌うのが、このドナ&ザ・ダイナモスだ。そこで、ソフィの親友として一緒にこれらの歌を歌い踊る2人の女性を演じるのは誰?
その1人、独身主義の料理研究家ロージーを演ずるのはジュリー・ウォルターズ。そしてもう1人の離婚太りと整形の達人ターニャ役を演ずるのはクリスティーン・バランスキー。2人ともメリル・ストリープの年齢に合わせたようだから、多少おばさんバンドっぽい(?)が、それでもパワーは健在。そんな3人が歌い踊るABBAの『Dancing Queen』の迫力にはビックリ。
<会えばわかるはず、だったが・・・>
ソフィが3人の父親候補者に結婚式の招待状を出したのは、会えば、あるいは会って話をすればきっと誰が父親かわかると考えたためだが、さてそれは・・・?3人の男たちの登場に狼狽したドナは、ロージーとターニャの励ましを受けて一夜限りのドナ&ザ・ダイナモスを再結成したため、結婚式前夜はホテルをあげての大パーティーとなったが、残念ながら、そこから生まれきた成果はゼロ。もっとも、このパーティーの中でのソフィの精力的な聞き取り調査(?)によって、ビルの大叔母ソフィアの遺産をホテル建設の元手にしていることと、娘の名前がこのソフィアにちなんでいることが判明。そしてそれによって、父親の可能性がもっとも高いのがビルであることが判明。その結果、結婚式のエスコート役は一応ビルとなったが、それだってまだまだ流動的。サムとハリーも、その役をやることに大いに意欲を燃やしていた。
普通でも結婚式前夜の娘の気持は落ち着かないもの。したがって、こんな予想もしなかったややこしい状況となって、ソフィの頭の中が混乱したのは当然。遂にソフィはその場で倒れてしまったから大変だ。そんなソフィの気持を心配したドナは、翌朝何と結婚式の中止までアドバイスしたが・・・。
<事態の収拾には、やはり母親の愛が・・・>
事態が混乱すれば混乱するほど、言葉のやりとりも刺々しいものになってくるのは当然。したがって、それまでは十分理解し納得していたはずの「父親が誰かわからない」ことについても、ソフィが「私の子供には、父親が誰かわからないことで苦しませたくない!」と発言したため、事態は紛糾。するとドナだってつい「なぜ、私に相談もせず3人に招待状を出したの!」と文句を言いたくなるのは当然だ。
そんな母娘間の結婚式当日の言い争いは、さあどんな風に収拾を?それはきっと多くの人がご存知だろうからここには書かないが、事態収拾のポイントは、やはり母親の愛。ケンカから仲直りへ。ベテラン女優と新進女優がしっとりと見せる母娘の心の交流が、このミュージカル映画の見どころの1つだ。さあ、そんな温かい母娘間のやりとりの結果、エスコート役は一体誰が・・・?
<束縛から解放へ>
ソフィの結婚するお相手のスカイは、『マンマ・ミーア!』ではお飾り的存在。私にはそんな印象が強かったが、ラスト近くになってがぜん増してくるのがスカイの説得力ある発言の数々。ソフィのさまざまな才能を認めているスカイは、そもそもソフィが結婚して島の中に住み、将来的にホテルを引き継ぐという生き方自体に賛成していない。そしてそれは、ソフィの才能を見抜いたビルも同じだったようだ。つまり、ドナのソフィに対する愛情は尊いものだが、ひょっとしてそれはソフィの将来を束縛しているのかもしれないということだ。
他方、ソフィが結婚しても島に住むと言っているのは、たった1人の母親を残して自分だけが夫とどこかへ旅立つという選択肢は考えられないため。もしそうだとしたら、ソフィは自分で自分自身を束縛しているのでは・・・?さあそこで、こんな束縛からドナとソフィを解放するウルトラCは・・・?
それは、ドナが「何を今さら・・・」などと言わず、結婚すること。20年間ずっと娘のためだけを考えて生き続けてきたドナが、いきなり自分の幸せのために結婚すると決断するのは難しく到底ムリ。と私などは思ってしまうのだが、映画ではそれは簡単・・・?さあ、そんなエンディングに向けて、どんな音楽がどんな興奮を・・・?
2008(平成20)年10月28日記